
XPSの基礎と測定・解析のポイントおよび最新動向
~誤った結論を出さないために、有益な情報を得るために、理解すべき基礎と要点~
XPSの原理・特徴といった基礎から、観察対象・観察の課題、測定・データ解析の実際、データ解析で重要な始状態/終状態/装置応答関数の知見、適切な装置性能を引き出すための装置の知識、最先端XPSの分類と特徴、実用的な硬X線光電子分光法や準大気圧光電子分光法などについて、理解が深まるようにそれぞれを関連づけて分かりやすく解説します。
セミナー趣旨
これに対して本セミナーでは、光電子スペクトルが光電子放出の始状態/終状態、そして装置応答関数の情報を含むことを説明し、それらの基礎を十分に理解し、適切なデータ処理をすることで、有益な情報を引き出せることを強調する。例えば非対称形状の光電子スペクトルは帯電効果、金属特有の赤外発散、化学シフト成分の存在など多くの可能性があり、XPSの基礎を十分に理解していないと誤った結論を出してしまう可能性がある。本セミナーでは、XPSに必要最小限の基礎的理解が得られるように企画されている。
本セミナーは(1)XPSの原理と特徴、(2)XPSの観察対象、(3)XPS測定とデータ解析、(4)XPS測定装置、(5)XPSの最近動向から構成される。
第1章ではXPSの概要を把握するために必要な基礎的事項にとどめ、他の章で実例と関連付けて基礎を説明する。第2章ではXPSで何が観察できるかついて、基礎科学だけでなく実用分野でも広範囲に広がっていることを述べ、課題として試料表面清浄化・帯電効果・X線誘起損傷について紹介する。第3章ではいくつかの試料についてXPS測定とデータ解析の実際を説明する。データ解析では始状態/終状態/装置応答関数の知見が重要であることを述べる。第4章ではXPS装置について説明し、ブラックボックスとならずに適切に装置性能を引き出してXPS測定できる指針を示す。XPS装置の高度化・高機能化・高精度がもたらすXPSの最新動向を第5章で説明する。とりわけ実用分野で多用される硬X線光電子分光法と準大気圧X線光電子分光法について詳しく紹介する。最後にXPSと競合するオージェ電子分光法、X線発光分光法について長所・短所を述べ、XPS関連論文数の年次推移を参照して本セミナーをまとめる。
受講対象・レベル
学部4年生、大学院修士課程、会社での新たに担当する方、経験者でXPSの理解を整理したい方に有用である。
物理化学及び固体物理の初歩的知識は必要。例えば、内殻準位、結合エネルギー、電子親和力、金属結合、共有結合、イオン結合、価電子帯、バンドギャップ、フェルミ準位、電界の中での電子の運動、非弾性散乱、p型半導体/n-型半導体など。
参考書籍:高桑雄二編著、X線光電子分光法(講談社, 2018)
習得できる知識
XPSの基礎、実験装置、応用、最前線について個別に取り上げるのではなく、互いに関連づけて説明することで理解を深められる。例えば、HAXPESでイオン化断面積やX線源を再度取り上げ、実用的観点から述べる。データ解析でもバックグラウンド処理やピーク分離解析について詳しく述べ、得られる情報の信頼性、多様性、精度を高められることを説明する。いずれにしてもXPSスペクトルからどのような情報が得られるかを、始状態/終状態/装置応答関数のいずれの寄与であるかを明確に識別して考察することが重要不可欠なことを強調する。
セミナープログラム
1.XPSの原理と特徴
1.1 光電子放出の3ステップモデル:光励起、固体内の移動、表面からの脱出
1.2 光電子スペクトルに含まれる情報:始状態 + 終状態 + 装置応答関数 ⇨ 観測データ
1.3 結合エネルギー:エネルギー保存則、エネルギー較正(Ek → EB変換) ⇨ 定性分析
1.4 光イオン化断面積:光エネルギー、原子番号、軌道対称性に依存 ⇨ 定量分析
1.5 平均自由行程:非弾性散乱による減衰(膜厚測定)、弾性散乱による干渉(構造解析)
2.XPSの観察対象
2.1 分類:真空/固相(表面)、気相/固相、液相/固相、固相/固相の界面観察
2.2 課題:試料表面清浄化、帯電補償、X線誘起損傷
3.XPS測定とデータ解析
3.1 窒素ドープDLC膜:XPS測定の初歩的注意、バックグラウンド処理、窒素含有量の定量解析
3.2 Si酸化:ピーク分離解析、SiO2膜厚評価、酸化状態解析
3.3 Ti酸化:固溶酸素, Ti2O, TiO, Ti2O3, Ti3O5 , TinO2n-1 (n = 4, 5, ・・・, 10), TiO2、簡単な終状態
3.4 Ni酸化:NiOのみ、複雑な終状態
4.XPS測定装置
4.1 電子エネルギー分析器:エネルギー分解能、1:1凸レンズ(イメージング)、入射レンズ
4.2 検出器:チャネルトロン、マイクロチャネルプレート、蛍光スクリーン、CCD、裏面CMOS
4.3 光源:X線管、分光器、高輝度放射光
5.XPSの最近動向
5.1 最先端XPSの分類と特徴:エネルギー分解などの極限化、顕微観察、測定条件の拡張
5.2 硬X線光電子分光法(HAXPES):実験装置(Ag Lα, Cr Kα, Ga Kα)、測定例、課題
5.3 準大気圧X線光電子分光法(APXPS):実験装置(SPECS社、SCIENTA社)、測定例、課題
5.4 オージェ電子分光法(AES)、X線発光分光法(XES)との競合:局所分析、マッピング
□質疑応答□
セミナー講師
1982年3月 東北大学大学院理学研究科物理学専攻・単位修得退学
1982年4月 東北大学電気通信研究所・助手
1993年4月 東北大学科学計測研究所・助教授
2010年4月 東北大学多元物質科学研究所・教授
2020年3月 東北大学・定年退職(名誉教授)
2020年4月 東北大学マイクロシステム融合研究開発センター・教授
2020年4月 日本原子力研究開発機構物質科学研究センター・客員研究員
現在に至る。
研究テーマ:固体表面動的過程のリアルタイム表面計測に基づく機能性材料の創製と表面ナノプロセスの開発に従事
2020年4月より東北大学産学連携先端材料研究開発センターにて高桑プロジェクト(食品並びに二次電池関連微粉体製造)を推進。
高桑研究室(2020年3月まで):https://takakuwa-lab.ogawalabo.com
高桑グループ(2020年4月以降):https://masc.tohoku.ac.jp
セミナー受講料
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