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QUESTION 質問No.55

品質保証部門の要求

設計・開発 |投稿日時:
中堅電機メーカーに新卒で入社して7年目の設計電気技術者です。
毎年新製品といっても、従来製品に機能を追加し、特性を向上させた、いわば改良品を企画、設計しています。
当社の品質保証規定により、向上した特性以外の仕様、特性は従来モデルより下がることは一切許されないため、思い切った革新的な製品実現の障壁になっているように感じています。

従来の基準の根拠を品質保証部に聞いても、「前からこうなっている」というばかりで、どうしてその数値になったのか明確な回答をもらえることは稀です。
たとえば2000回連続電源オンオフ試験などがそれに相当します。誰もそんな使い方はしません。

市場でのトラブルが起こるたびにだんだん厳しくなって、緩むことはほとんどありません。

このような品質保証部の要求に対抗して、適切な特性基準を設定したり、挑戦的な製品を低コストで企画、設計する良い方法がありましたら、ご指導ください。

[これは運営者が考えた架空の(しかしありがちな)質問です]

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ANSWER
回答No1 | 投稿日時:

トラブルが発生したら対策するという典型的なもぐらたたきの開発体制となっていますね。
トラブルの起こるたびに、テスト項目を増やしたり、厳しくしたり、これでは永久にトラブルがなくなることはありません。また、テストで不具合が発生すると、そのフィードバックのために設計のやり直しが生じ、またその部分が改良されたとしても、それ以外の部分で二次障害が発生するなど、開発期間も相当長く掛かっていると考えられます。

従って、「挑戦的な製品を低コストで企画、設計」するには、設計体制、仕組みの抜本的な見直しが急務であると考えられます。

1.信頼性設計手法の導入
もともと従来製品に信頼性設計が考慮されているのなら、改良部分のみ、信頼性評価を行えば済むことです。もし、信頼性を考慮した設計がなされていないならば、直ちに信頼性設計評価(設計FMEA等)を実施して、故障が起きないような設計、または、故障が発生した場合にも、常に安全側にその機能が作用する「フェイルセーフ設計」を行っておく必要があります。

市場で故障が起きる原因は、製造工程で起こるばらつきの他に、使用環境の変動、劣化摩耗により機能特性が変化するからです。そこで、品質特性のばらつきが少ない製品を、開発・設計及び工程設計段階で作りこむための工学的、統計的手法である品質工学(タグチメソッド)を導入することが最も有効な手段です。

顧客の満足度を高める画期的な製品を作るためには、それを作る新しい技術か必要であり、製品を構成する各要素技術を開発する必要があります。タグチメソッドのメリットは、高価な部品を使うことなく、故障せずに安定した機能特性を持った要素技術の開発が可能となることです。それらの要素技術を組み合わせることによって、思い切った革新的な製品設計も可能になってくるものと期待されます。

2.設計ノウハウシステムの構築
新しい製品を開発する場合でも、ほとんどは過去の類似製品や同シリーズ製品から設計データなどを流用した「流用設計」が行われています。そこで、過去の設計データの流用を行う際、成功プロセスを蓄積し、必要な時に参照できるシステムを構築しておくことが重要となります。各設計プロセスに必要とされる設計データ、ノウハウ、関連ドキュメントなど、有益な情報の流用が可能となることで、いままで技術者個人に依存したノウハウが共有でき、またデザインレビューの効率的、効果的実施にもつながり、設計品質の向上、設計期間の大幅な短縮が期待できます。

さらに、その「流用設計」を行う過程で多くの新しいノウハウが蓄積され、それを管理することによって、常に自動的に最新ノウハウの活用することが可能となります。一人の優秀な技術者を育てるのには、相当の期間と費用がかかる事を考えれば、ノウハウシステム構築の重要性は自明であると考えます。

3.信頼性評価基準の見直し
2000回連続電源オンオフ試験など根拠の不明確な基準は見直しが必要です。
品質保証部門は、製品の使用者の立場で使用上の安全性や環境面への影響度、製造工程における労働安全の観点を主体に、評価基準とその評価手順を確立すべきです。

また、設計部門のFMEA解析で得られた解析結果を勘案して、環境試験、寿命試験、安全性試験などの各種試験を実施し検証します。さらに、試験中に発生した故障を分析してそのメカニズムを明らかにし、製品の信頼性の向上に努めます。