顧客に喜ばれる倉庫業とは

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1. 単純な在庫保管業務

 皆さんは倉庫というとどのようなイメージを思い浮かべますでしょうか。
 
・ 暗い建屋の中に荷物が積み上げられている様子  
・ シーンと静まり返った庫内で黙々と作業が行われている様子  
・ 多くの作業者が活気にあふれピッキング作業を行っている様子  
 
 SCM倉庫に対するイメージは人それぞれです。ただし倉庫を借りる側、つまり荷主の立場に立つとどちらかというとネガティブな印象ではないでしょうか。それは「倉庫=在庫保管」というイメージがあるからでしょう。「在庫」は「罪固」と揶揄されて表現されることがあります。つまりユーザーにとって在庫とはどちらかというと持ちたくないものだからなのです。このようなイメージがありますから、倉庫を生業とする倉庫業者では顧客集めに苦労することがあるかもしれません。もちろん、最近の大型倉庫を活用することで今まで複数場所管理していた荷を集約し、物流業務の効率化を図ろうというユーザーにとっては大型倉庫はありがたい存在かもしれません。しかし、多くの会社ではそこまで大規模な物流施設を活用しながら物流業務を行っているわけではありません。そこで倉庫業者がユーザーのところに営業活動に行ったとしても、あまり歓迎されないかもしれません。その理由は多くのユーザーが在庫保管のために外払いすることに消極的だからです。 
 
 特に会社の外の倉庫(通称外部倉庫)に在庫を保管すると、在庫が見えなくなる、といわれ、敬遠されることがあります。では、顧客に喜ばれる倉庫業とはどのようなものになるでしょうか。まず「単純な在庫保管業務」を行うだけではないことを強調すべきでしょう。では、そのような業務の例として、世の中で保管業務だけではなくプラスアルファの「付加価値業務」を行っている倉庫業を見てみましょう。たとえば通信販売業務を代行している倉庫などはいかがでしょうか。通信販売業務を請け負っているわけですから、単純に商品保管を行っているだけではありません。ここにプラスアルファの「付加価値業務」が存在します。
 

2. 通信販売業務の代行

 通信販売業務を請け負っている倉庫会社では顧客のニーズを満足させるためにさまざまな業務を行っています。その中で一般的な物流業務としては以下のような業務を行っています。
 
・ 在庫保管
・ 受注管理業務
・ 入出庫作業(ピッキング作業含む)
・ 出荷梱包(梱包資材管理含む)
・ 配送業者管理
 
 このあたりは普通の物流業務です。どこの物流会社でもできる、それほど難しくはない仕事でしょう。これは「通信販売物流」と呼ばれる領域です。しかし、ここに併せてプラスアルファの「付加価値業務」を提供している倉庫会社があります。その付加価値業務とは以下のような業務です。
 
・ 商品発注を含めた在庫コントロール業務
・ ホームページに載せる商品の撮影
・ プレゼント用ラッピング
・ 商品のキャッチコピー作成
・ 顧客のホームページ管理
 
 さらに発展形の業務として扱う商品の企画業務やマーケティング業務などが存在します。これらプラスアルファの「付加価値業務」を実施している会社は強いと思います。なぜなら他社がやらないため、その会社に集中して顧客が発注することになるからです。当然の理屈ですが、「当たり前の仕事」だけをやっていれば顧客も喜びませんし、高価格で受注することもあり得ません。そこで、本当に顧客が求めている、あるいは煩わしいと思っていることを代行してあげられれば喜ばれる上に高価格での受注も可能です。ですからもし収益性のある倉庫業を目指すのであれば、このような「顧客に喜ばれる仕事」をしていかなければなりません。一気に上記事例のような仕事に取り組まなくても、顧客がやって欲しいと思っていることはいくらでもあります。それは単純な保管業務や入出庫業務ではなく、ちょっとしたプラスアルファの業務なのです。それに気づくことが収益性向上の入り口です。
 

3. 保管・入出庫の「延長線上」にある業務

 単純な保管業務や入出庫業務ではなく、ちょっとしたプラスアルファの業務があれば顧客を振り向かせることは可能です。ちょっとしたプラスアルファですから、通信販売業務のようなレベルにいかずとも、ちょっとした努力と工夫さえすれば対応はできるはずです。では具体的にそのような業務について考えていきましょう。まず「梱包」です。これにはすでに対応されている会社も多いと思います。単純な荷姿転換に始まり、やや高度な輸出用梱包など、顧客の現場とノウハウではできない領域に手をつけて行くとよいでしょう。段ボールや木材などは自己調達し、顧客には製品を梱包した状態で引き渡します。この業務は比較的優しい部類に入るでしょうからぜひ開始していただきたいと思います。次に「製品検査」です。顧客の製品を預かるとともに「検査」を請け負います。原則として検査業務は直接的に付加価値を生むものではありません。本来であれば製造工程で正しい品質を「つくりこむ」ことが望ましい姿です。しかし海外で生産したものや一部内職工程などで生産したものについては品質が完璧で...
 

1. 単純な在庫保管業務

 皆さんは倉庫というとどのようなイメージを思い浮かべますでしょうか。
 
・ 暗い建屋の中に荷物が積み上げられている様子  
・ シーンと静まり返った庫内で黙々と作業が行われている様子  
・ 多くの作業者が活気にあふれピッキング作業を行っている様子  
 
 SCM倉庫に対するイメージは人それぞれです。ただし倉庫を借りる側、つまり荷主の立場に立つとどちらかというとネガティブな印象ではないでしょうか。それは「倉庫=在庫保管」というイメージがあるからでしょう。「在庫」は「罪固」と揶揄されて表現されることがあります。つまりユーザーにとって在庫とはどちらかというと持ちたくないものだからなのです。このようなイメージがありますから、倉庫を生業とする倉庫業者では顧客集めに苦労することがあるかもしれません。もちろん、最近の大型倉庫を活用することで今まで複数場所管理していた荷を集約し、物流業務の効率化を図ろうというユーザーにとっては大型倉庫はありがたい存在かもしれません。しかし、多くの会社ではそこまで大規模な物流施設を活用しながら物流業務を行っているわけではありません。そこで倉庫業者がユーザーのところに営業活動に行ったとしても、あまり歓迎されないかもしれません。その理由は多くのユーザーが在庫保管のために外払いすることに消極的だからです。 
 
 特に会社の外の倉庫(通称外部倉庫)に在庫を保管すると、在庫が見えなくなる、といわれ、敬遠されることがあります。では、顧客に喜ばれる倉庫業とはどのようなものになるでしょうか。まず「単純な在庫保管業務」を行うだけではないことを強調すべきでしょう。では、そのような業務の例として、世の中で保管業務だけではなくプラスアルファの「付加価値業務」を行っている倉庫業を見てみましょう。たとえば通信販売業務を代行している倉庫などはいかがでしょうか。通信販売業務を請け負っているわけですから、単純に商品保管を行っているだけではありません。ここにプラスアルファの「付加価値業務」が存在します。
 

2. 通信販売業務の代行

 通信販売業務を請け負っている倉庫会社では顧客のニーズを満足させるためにさまざまな業務を行っています。その中で一般的な物流業務としては以下のような業務を行っています。
 
・ 在庫保管
・ 受注管理業務
・ 入出庫作業(ピッキング作業含む)
・ 出荷梱包(梱包資材管理含む)
・ 配送業者管理
 
 このあたりは普通の物流業務です。どこの物流会社でもできる、それほど難しくはない仕事でしょう。これは「通信販売物流」と呼ばれる領域です。しかし、ここに併せてプラスアルファの「付加価値業務」を提供している倉庫会社があります。その付加価値業務とは以下のような業務です。
 
・ 商品発注を含めた在庫コントロール業務
・ ホームページに載せる商品の撮影
・ プレゼント用ラッピング
・ 商品のキャッチコピー作成
・ 顧客のホームページ管理
 
 さらに発展形の業務として扱う商品の企画業務やマーケティング業務などが存在します。これらプラスアルファの「付加価値業務」を実施している会社は強いと思います。なぜなら他社がやらないため、その会社に集中して顧客が発注することになるからです。当然の理屈ですが、「当たり前の仕事」だけをやっていれば顧客も喜びませんし、高価格で受注することもあり得ません。そこで、本当に顧客が求めている、あるいは煩わしいと思っていることを代行してあげられれば喜ばれる上に高価格での受注も可能です。ですからもし収益性のある倉庫業を目指すのであれば、このような「顧客に喜ばれる仕事」をしていかなければなりません。一気に上記事例のような仕事に取り組まなくても、顧客がやって欲しいと思っていることはいくらでもあります。それは単純な保管業務や入出庫業務ではなく、ちょっとしたプラスアルファの業務なのです。それに気づくことが収益性向上の入り口です。
 

3. 保管・入出庫の「延長線上」にある業務

 単純な保管業務や入出庫業務ではなく、ちょっとしたプラスアルファの業務があれば顧客を振り向かせることは可能です。ちょっとしたプラスアルファですから、通信販売業務のようなレベルにいかずとも、ちょっとした努力と工夫さえすれば対応はできるはずです。では具体的にそのような業務について考えていきましょう。まず「梱包」です。これにはすでに対応されている会社も多いと思います。単純な荷姿転換に始まり、やや高度な輸出用梱包など、顧客の現場とノウハウではできない領域に手をつけて行くとよいでしょう。段ボールや木材などは自己調達し、顧客には製品を梱包した状態で引き渡します。この業務は比較的優しい部類に入るでしょうからぜひ開始していただきたいと思います。次に「製品検査」です。顧客の製品を預かるとともに「検査」を請け負います。原則として検査業務は直接的に付加価値を生むものではありません。本来であれば製造工程で正しい品質を「つくりこむ」ことが望ましい姿です。しかし海外で生産したものや一部内職工程などで生産したものについては品質が完璧でないことがあり得ます。これを補完する形で検査を行っている会社が多いのですが、いったん保管したのち出荷前に検査をすることもあり、倉庫業務に適している仕事だと考えられます。
 
 顧客が必ず品質基準や検査規格を持っていますので、それに沿った仕事を行えば問題ありません。たしかに一部の物流倉庫で検査業務を行っている様子は見かけたことがあります。ぜひ顧客に検査業務を請け負える旨提案してみてはいかがでしょうか。検査業務ができれば次のステップは「製品補修」業務でしょう。ここまで来るとややハードルが上がりますので、どこの倉庫でもやっているわけではありません。だからこそ多少の技能を身につけたうえで、製品補修に取り組むことをお勧めしたいと思います。製品補修といいましても難しいもの、容易なもの、素人でもできる程度のものなど様々です。まずは身の丈に合ったものからスタートし、徐々にレベルを上げていったらいかがでしょうか。このように顧客に喜ばれる倉庫業務は従来の保管・入出庫の「延長線上」に存在します。最初は簡単ではあるものの顧客が煩わしいと思っている業務にチャレンジしましょう。あの会社は一味違う倉庫業務を行っているという評判ができれば、きっと収益性のよい倉庫に近づくことができるでしょう。
  

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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