作業要素の進捗分析3 プロジェクト管理の仕組み (その20)

 前回のその19:作業要素の進捗分析2に続いて解説します。
 
 一つひとつの作業要素の完了判断は、明確になっている必要があります。改めて作業要素の定義とその条件を図52に整理しておきます。開発スケジュールにあらわれている開発要素がここに示すような条件を満たしていれば、作業要素の状態は、完了したのかしていないのかだけの判断になり、終了予定日までに完了していなければ遅れているということになります。
 
図52. 作業要素の条件
 
 この条件に合っていないこと、たとえば、ひとつの作業要素の期間が3~4週間にもなっていることや、25%, 50%, 75%のように作業途中の進捗率を主観で入力すること、また、担当者が作業完了といえば完了と判断することなどは、すべて作業要素としては適切ではないということです。以上のようなことに注意して作業要素を定義すると、作業要素の個数は数百から数千になることが普通です。したがって、手作業で集計するのは現実的ではありません。MS Projectなどのツールを使えば、作業要素(タスク)にWBSやアクティビティといった属性を持たせることや、完了したタスクの個数や遅れているタスクの個数などをカウントすることは容易になります。それでは、最後に作業要素メトリクスを使った進捗分析の例を紹介しましょう。
 
図53. 作業要素メトリクスの表示例
 
 図53はある通信関連の製品開発プロジェクトでの作業要素メトリクスをグラフ化したものです。ここで示しているのはプロジェクト全体ではなく、通信のデジタル処理を行っているWBSで、この単位でも大きな開発作業になっています。横軸は週で、棒グラフは週ごとの作業要素(タスク)の数を示しており、図53では 2008/12/15 の現時点で、作業完了しているもの(完了)、遅れているもの(遅れている)、まだ開始予定になっていないもの(今後のタスク)に分けて色分けしています。このグラフを見ると次のようなことがわかります。
 
 2008年11月,12月が開発作業のピークで、2009年以降は徐々に作業が減っていく。現時点(2008/12/15週)では 作業することになっている開発要素の 90% 以上に遅れを生じている。遅れを生じている開発要素には1ヶ月以上前の 2008/11/3 に開始しているものもあり、この時点から遅れている開発要素は徐々に増えている。遅れを生じている開発要素は1ヶ月先の 2009/1/12 まで作業が続くものがあり、現在の遅れは1ヶ月先の予定にまで影響がある。イナズマ線などを使った場合と違い、単純に遅れている作業を特定するだけではなく、現在の進捗と今後の予定に関して多くのことを把握できることがわかると思います。
 
 今回は開発要素メトリクスについて解説しました。開発要...
素のもとになっていることは、基本的に開発スケジュールとして記述している内容ですが、基本メトリクスセットのひとつとして運用方法を整備することで、開発作業全体の規模と現在の遅れ作業の規模を把握できるだけでなく、遅れを生じている開発作業がどのくらい前からのものなのか、また、遅れはこれから先いつまで影響するのか、ということもその規模と合わせて把握できることをわかっていただけたのではないかと思います。
 
 次回は、基本メトリクスセットの工数について解説します。
 
 
◆関連解説『技術マネジメントとは』

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