金型メーカーマシニング加工工程の業務診断事例(その1)

 今回は「マシニング加工」における診断項目を紹介します。

◆ マシニング加工工程の診断内容

1、適材適所の工具選定がされているか、最新の工具を使えているか

 金型のマシニング加工は幅広く、2D・3D加工問わず、荒取りから仕上げ加工があり、また金型意匠面だけでなく構造部のプレート部品など加工内容は多岐に渡ります。それらの加工において適材適所で工具選定ができているかを診断します。

 例えば、金型意匠面の3D加工の荒取り加工においては、高送りや肩削りカッターなど多くの種類のスローアウェイ工具が市販されていますが加工を診断させていただくと、垂直壁に適した工具、また傾斜面に適した工具など、それら工具の長所短所を把握したうえで使用しているとはいえない状況をよく見掛けます。

 また工具の長所を把握したうえで、さらなる生産性向上を図るための最新工具の導入がなされているかという視点も重要で、無料診断ではこうした取り組みが行われているかを確認させていただいています。

2. 精度に応じた作業手順がとれ、精度の不要な部品に過度な手間をかけていないか

 この項目を加えている理由は、CAMとマシニング作業の分業化などが原因により、部品ごとの必要精度に応じた、加工工程・段取り手順の使い分けができていない現場をよく見掛けるためです。

 また多くの金型メーカーを診断する中で、ある共通した現象も確認しています。

 プレスやプラスチック、ダイカスト金型など種類を問わずどの金型も2D加工、つまりプレート部品などの穴あけ加工やポケット加工など、3D加工以外の構造部の切削加工が多く存在します。しかしながら3D加工を主な用途として行うマシニングセンターには対話ソフトが付属されていない場合があります。

 加工現場ではそういった2D加工も同じマシニングセンターで加工しなければならない場合がありますが、対話ソフトのない機械では、ジョグ送りを使った手動加工もしくは、Gコードプログラムを手編集して対応するしかないのです。

 または加工条件や座標位置を入力するだけで済むような、Gコードによるマクロプログラムを作って対応する方法も考えられます。

 しかし、そういったスキルを持った機械オペレーターがいない加工現場では、たった2、3か所のキリ穴をあけるようなプレート加工においても、別のCAMオペレーターにより、加工プログラムと段取り図、条件表、工具一覧表などを作って提供してもらい、それを使ってマシニング加工を行う分業体制をとっているのです。

 また、複雑ではなく単純な軌跡のエンドミル加工についても同様の手順をとっており、正面切削や段差の肩削りなど、一本線で済むような軌跡の加工でも、CAMでプログラムを提供してもらい加工している場合があります。

 このような加工であれば、手動送りやジョグ送りを使った加工でも充分であり、またきれいな仕上がり面が必要ない加工であれば、ラフィングエンドミルを使えば...

何回もスライスせずに一回の切り込みで済むこともあります。

 したがって、簡単な加工にまでCAMデータを提供するプロセスは、ムダな間接コストがかかっているといわざるを得ません。特に設計に工数をかけて詳細な部品図を作成し、それを現場に渡しているにもかかわらず、別途CAMでデータを作成しているという金型メーカーについては、特にムダがあると感じます。こうして余剰にかかった間接工数は、金型ごとの原価に現れます。無料診断においては、こうした余剰なコストが発生していないかも確認します。

 次回に続きます。

 この文書は、『日刊工業新聞社発行 月刊「型技術」掲載』の記事を筆者により改変したものです。

◆関連解説『生産マネジメントとは』

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