物流の付加価値、物流の実力とは

 

 物流作業を見ながら、その中の「付加価値作業は何か」について考えてみましょう。付加価値作業とは端的に言えば、お客様がお金を払ってもよいと感じる作業のことを指します。

 つまり、それ以外の作業が「付加価値作業以外」ということになるのです。この訓練は大変有意義だといえるでしょう。なぜなら、こういった見方をすることで自社のムダ、つまり付加価値作業以外の作業を簡単に見つけることができるようになるからです。

 じっくりと時間をかけながらチェックする検査作業、工場内での長距離横持ち運搬、製品の詰め替え作業などは少なくとも付加価値作業とは言えません。こういった判断ができるようになるだけで物流マンは大いに成長したことになるでしょう。

 物流が生産と同じラインに立てたとしたら、そこからは物流のステータスを向上するために、そして会社をよくするために貢献していかなければなりません。工場の物流は実は「付加価値のある物流」を実行できる立場にあります。その付加価値のある物流について確認していきましょう。

 ここでいうところの付加価値とは「生産管理」のことを指します。物流が生産管理?と疑問に思うかもしれませんが、間違いありません。物流がやるべきことは生産管理なのです。物流はものを運ぶことが仕事であり目的であると思われている方が大半かと思います。もちろん全くこの考え方が間違っているわけではありません。工場の中の物流は生産工程に部品や完成品を入れる出荷用の容器を運びます。この作業のことを供給と呼びます。

 しかしこれはあくまでも手段であって目的ではありません。では物流の目的とは何でしょうか。それは部品や容器を運ぶことを通して生産統制を行うことです。生産現場では本来であれば生産計画通りのものづくりを行います。この生産計画とは決められた時間内で、決められた数の生産を行うことです。実際にはこの計画に対して実際には「遅れ進み」が発生しています。場合によっては計画を無視して、勝手に生産順番や生産量を変更したりするケースも見受けられます。

 

1. 物流の付加価値: 物流作業だけ強調しない

 普段はほとんど意識されていませんが、物流の付加価値というものを相手に伝えることは物流の地位向上のためにも必要なことではないでしょうか。例えば物流は空間的なギャップを埋めるために存在するものです。大阪で生産された製品を仙台で販売するといったように空間的ギャップを埋めるのです。このように改めて考えてみると物流の重要性というものが理解できるのではないでしょうか。

 最近益々と成長を続ける通信販売ですが、企業間の差は物流でついていることは歴然としています。当日配送や翌日配送といった顧客に対するリードタイムは出荷や配送にかかる時間など物流レベルに左右されるのです。

 さらに注文した時に手に入るように在庫管理も大きな要因です。これも物流の実力の内です。商品力ではどこの会社も大差ありませんが物流では大きな差が出るのです。

 これほどまで重要な物流ですが世間ではそれほど評価されていません。物流はいつの時代でも縁の下の力持ち的な存在なのです。それはなぜでしょうか。

 その大きな要因は物流側にあると考えられます。物流は物流作業そのものを顧客に訴え掛けて仕事を取ろうとしています。輸送ネットワークや倉庫の位置、広さ、作業に対する価格などばかりをアピールしていますので、その点では大きな差がみられないでしょう。

 確かに商品のPRも必要です。それ抜きに顧客は納得しないことも確かです。しかしそれだけでは大きな差はみられず、結果的に「価格で決めよう」ということにつながってしまうのです。そこでもっと強調しなければならないものがあります。物流の結果何が得られるか、つまり物流の効用です。

 物流の効用を強調することでその会社に魅力を感じるという顧客も出てくることでしょう。

 

2. 物流の付加価値: コモディティ商品化は避けよう

 荷主から見て物流商品に大きな差はないと思われているとしたら、その物流商品はコモディティ化してしまっているといえるでしょう。物流商品のコモディティ化だけは避けたいものです。もちろん、低付加価値商品でも顧客から求められれば対応しなければなりません。しかしこうなってしまうと残念ながら荷主から見れば「一番安い物流会社に発注しよう」ということになるのです。

 コモディティ化された物流商品には次のようなものが挙げられます。

 

 これを荷主に思わず買いたいと思わせる仕掛けが必要です。それが物流の効用なのです。たとえば先ほどの例を「買いたい商品」に変えるためには次のようなことを考える必要があります。


 いかがでしょうか。こうなってくると荷主に一定の便益をもたらしますので喜んでもらえるだけではなく、それ相応の対価を得ることも可能となるのです。このように顧客に明らかな効用をもたらす商品が収益性の良い商品になります。顧客にとってもぜひ買いたいと思える商品になることでしょう。

 次のような付加価値をつけるだけで顧客にとっての効用が付き、コモディティ化が避けられます。

 

3. 物流の付加価値:  消費者の夢をかなえる物流商品

 最近の通信販売では物流にコストをかけてリードタイムを短縮し、顧客サービスを高めることで売り上げを伸ばしている会社があります。物流はコストとして見られがちです。しかし「物流はムダでありそれをそぎ落としていこうというアクションではなく、むしろ物流にコストをかけ、他で効率化を図った方が会社としてメリットがある」こともあるのです。物流コストを下げるだけ...

が物流改善ではありません。

 こういった背景にはこの手法をとった方が会社収益上メリットがあるという判断があったのでしょう。同じような事例はいくつもあるはずです。

 「あなたが好きな場所で、好きな時間に受け取ることができます!」というようなサービスを考えたら多くの消費者は肯定的に受け止め、そのサービスを使ってみたいと考えるでしょう。要は物流としてはこういった販売促進に貢献できる商品をいかに低コストで提供できるか、ということが課題となるのでしょう。

 何も消費者の大多数が「配送料無料」でなければだめだと思っているわけではありません。配送料が適正であればその分を負担しても良いと考えているのです。通信販売利用者は「即日配送」や「翌日配送」以上に「受け取りたい時」に届けて欲しいと考えています。

 こういった顧客の真のニーズを把握することでコストのかかる過剰なサービスを回避することができるでしょう。

 物流は工夫次第で消費者の夢を膨らますことができます。消費者の夢とは「物流によってもたらされる」効用なのです。その一例が「好きな時に手に入る」ということなのです。その物流サービスで顧客が喜ぶのかどうか、逆に言えば喜ばれるためにどのような物流を行ったら良いのか、ということを常に考えていきましょう。

 繰り返しになりますが、物流商品のコモディティ商品化だけは避けましょう。付加価値を生んで収益につながる商品を提供していくのです。

 

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