手作業を機械化するときのポイント 中国企業の壁(その9)

1. 手作業を機械化するときのポイント

 
 現在指導している中国企業の製品はユニットもので、お客様のところで組立をして使用します。この企業のユニット製品のセールスポイントのひとつは、お客様での組立工数を可能な限り少なくするために、中国工場でプリアッセンブリ―を行って出荷していることです。
 
 プリアッセンブリ―は大きく分けて2つあります。1つは、製品をほぼ組立ててしまい、お客さんの方では、組立角度を調整するだけで済むようにしているもの。もう1つは、組立に使うボルトやナットを部品に仮組みしておくというものです。それによって、お客さんがボルトやナットを組み込む手間を省くとともに紛失を防ぎます。
 
 こうしたお客様の「面倒くさい」を工場側でやっておくことで、付加価値を高めているのです。実際に部品にボルト・ナットの組み込みは、作業者が手で回してやるという面倒な作業です。この工場の方針として、生産量が多いものは機械による自動化を進めるというのがあり、それに対する投資を積極的に行っています。部品へのタップ加工は自動化が完了しているものもあります。
 
 前述した部品にボルト・ナットを組み込む作業も自動化を検討しており、試作機が入っています。ところが組み込む部分は自動化されていますが、部品の供給は自動化されていないため人が供給しなくてはなりません。これでは、機械1台に作業者1人が張り付くことになり、機械化した意味がありません。部品の供給部分も自動化した全自動機にする必要がありますが、もう少し時間がかかると思われます。
 
 一方で、作業者が組み込む作業の半自動化の検討も進めていました。これは部分的に導入しており、手作業に比べると速いし作業者の負担も減っています。現時点で手作業に比べ50%以上の効率アップが確認できていますが、更に突き詰めてどこまで効率を上げることができるか検討しています。
 
 自動化機械の出来によっては、半自動を進めた方がよい可能性もあります。並行して進めて、よい方を選択すればいいので、とても楽しみです。作業を機械化、自動化するときに注意することは、機械化する前に作業のムダを取り除いておくことです。それをやらないと作業のムダも一緒に機械化してしまいます。
 
 
 

2. 穴加工の位置ずれ・抜取検査で保証できない

 ある中国企業のプレス工程では、穴あけ加工を多くやっています。作業者がワークを金型にセットし、両手でスイッチを押すとガタンとパンチが下りてきてワークに所定の穴があきます。普通のプレスでの穴あけ加工です。この工場では、作業者は1時間に1回5個自主検査を行っています。また、品管部の検査員が工程を巡回し2時間に1回10個検査する決まりになっていますが、実際は検査頻度を上げて1時間ごとに検査をしています。
 
 この巡回検査では、たまに穴位置寸法不良が発見されます。面白いもので、作業者の自主検査で同じ不良が発見されることはまずありません。
 
 穴位置寸法不良が出る原因は、セットされたワークの位置がずれていた、正しい位置にセットされていなかったことによります。この製品のプレス加工では、作業者がワークを金型に載せ奥の壁に突き当てることで正しい位置になるようにしています。
 
 つまりワークの位置決めは作業者の作業に頼っているのです。しかし、数量をやっていく中では、正しくセットした、突き当てたつもりでも、そのようになっていないことが起きます。ですから、工程巡回検査で不良品が発見される訳です。
 
 このような構造の金型で加工し...
ている製品を1時間に1回の自主検査や2時間に1回の工程巡回検査で品質保証するのは無理です。なぜならこの不良はいつ発生するかわからないからです。自主検査や巡回検査の結果がOKだったからと言って、その途中に生産したものがOKであるとは言えないのです。検査で品質保証するためには、全数検査をするしかないのです。
 
 このことを中国企業の工場責任者に話したのですが、先方が示した対応策は、作業者に確実にワークを押し付けるよう現場管理者が徹底するというものでした。さて中国企業では、巡回検査員という仕組みを取っている工場が多くあります。日本の工場では作業者の自主検査が行われていれば、このような巡回検査員は置いていません。なぜ工程巡回検査員を置くのでしょうか。それは作業者の自主検査の信頼性が低いからです。はっきり言うと、作業者の自主検査が信頼できないからなのです。
 

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