「APQP」とは

 

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 1. APQP とは?

APQPとはAdvanced Product Quality Planningの略で、日本語では「先行製品品質計画」と呼ばれています。
これはISO/TS 16949(ISO 9001をベースとした自動車産業向け品質マネジメントシステム規格)を構築、運用するために必須な中心となる手法の一つです。
そして、自動車の品質マネジメントシステムTS16949の先行製品実現計画部分に対応し、運営管理の要領を規定しています。

 

2. APQP の 5 つのステップ

製品実現のステップは下記の5段階に分けられ、それぞれの段階での実施項目と入力、出力事項が定められており、プロジェクトのリスク低減が図られます。 
実行する際には、コントロールプランの作成が必須であり、このプランを中心に管理が進められます。

①計画

②製品設計

③工程設計

④製品、工程の妥当性確認

⑤量産

 

3. APQP と PPAP の違い

PPAP(生産部品承認プロセス)とは、顧客に製品を承認してもらうための手続きを指し、APQPの「④製品、工程の妥当性確認」にあたります。

▶APQPやPPAPに関する解説記事:APQP(先行製品品質計画)の背景と本質とは?~本質や背景~

 

4. 各ステップにおける具体的な活動内容

APQPの5つのステップは、単なるプロセスの羅列ではなく、後工程で問題が発生しないよう「事前に課題を潰し込む」ための仕組みです。それぞれのステップで重要となる具体的な活動を深掘りします。

① 計画:顧客の声(VOC)の特定 最初のステップでは、顧客が何を求めているのかを正確に把握します。市場のニーズや過去の不具合事例を分析し、品質目標や設計目標を定めます。ここでは「何を達成すべきか」というプロジェクトのゴールを明確にすることが最大の目的です。

② 製品設計:設計の妥当性評価 設計段階では、図面作成だけでなく「設計FMEA(故障モード影響解析)」が重要視されます。設計上の潜在的なリスクをあらかじめ洗い出し、試作を通じてその妥当性を検証します。この段階での不備は後工程で数倍のコストとなって跳ね返るため、極めて緻密な検討が求められます。

③ 工程設計:製造プロセスの構築 製品をどのように作るかを計画します。工場内のレイアウト、包装規格、そして「工程FMEA」を用いた製造過程でのリスク評価を行います。ここでは、誰が作業しても同じ品質が保てるような「標準化」の土台を作ります。

④ 製品・工程の妥当性確認:実機での検証 実際の生産ラインに近い環境で試作(ラインオフ)を行い、工程能力を評価します。ここで前述の「PPAP」に必要なデータを収集し、顧客の要求を満足していることを証明します。また、コントロールプランに基づいた検査体制が機能しているかも確認します。

⑤ 量産:継続的な改善 量産開始後は、製品のばらつきを抑え、顧客満足度を維持・向上させるフェーズです。得られた知見をナレッジとして蓄積し、次回の製品開発へフィードバックすることで、組織全体の品質レベルを底上げします。

 

5. APQP を導入する最大のメリット

APQPを適切に運用することで、企業は以下のような大きな恩恵を受けることができます。

  1. 手戻りの防止によるコスト削減 開発の初期段階で問題を特定するため、量産間際や量産開始後の設計変更(エンジニアリング・チェンジ)を劇的に減らすことができます。
  2. 納期の遵守 計画的にリソースを投入し、各フェーズの「出口」を明確にすることで、プロジェクトの遅延リスクを最小限に抑え、確実な製品立ち上げが可能になります。
  3. 組織横断的なコミュニケーションの活性化 APQPは、設計、製造、品質保証、購買、そしてサプライヤーが連携する「多機能チーム(CFT)」による活動を推奨しています。部門間の壁を取り払うことで、多角的な視点から品質を創り込むことができます。

 

6. まとめ

APQPは、単なる「書類作成のルール」ではありません。それは、顧客満足を第一に考え、不具合を未然に防ぐための「開発の道標」です。複雑化する現代のモノづくりにおいて、APQPの思考を取り入れることは、自動車業界のみならず、あらゆる製造業における競争力の源泉となるでしょう。

 


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