「HACCP」とは

1.HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)とは

HACCPとは、H(Hazard)が危害を表し、A(Analysis)が分析を表し、C(Critical)を表し、C(Control)が管理を表し、P(Point)が点を表しており、アメリカのアポロ計画で、宇宙食の安全性の確保のために確立された衛生管理の方法となります。

これらの頭文字を取って、HACCPと呼びます。

HAは危害要因分析とのことを意味しており、有害な微生物や化学物質、金属片などの異物が、食品中に混入または増殖してしまい、食品汚染が発生することを予測し、混入しないための対策や管理方法を明確にして、ルール化を行い、防止していくことをいいます。

CCPは重要管理点のことを意味しており、食品中の危害要因が健康へ影響が出ないレベルにまで除去していく必要があるので、危害要因分析に基づいて、製造の管理方法や加工手順や工程を管理していくことをいいます。

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2.HACCPのメリットとは

HACCPの導入のメリットですが、以下の通りになります。

①従業員の食品等の衛生管理への意識の向上
②製品の不具合への対応がすぐに行える体制作りができる。
③食品の安全性が高くなり、クレームが減少していく。
④HACCPの認証を受けることで、会社としての信用度が高くなる。

 

3.HACCPの義務化を無視した際の罰則について

HACCPに沿った衛生管理の考え方を導入して、制度化されました。

そのために食品衛生法が一部改正になりました。

義務化になりましたが、食品等事業者がHACCPの制度を守っていない場合には、どんな罰則があるのでしょうか。

結論として、HACCPの義務化を無視していると、営業許可書を更新して頂けなくなったり、場合によっては2年以下の懲役、または100万円以下の罰金が課せられる可能性があります。

 

4.HACCPの「7原則12手順」とは

HACCPを構成していくために、使用される手順がありますが、この手順を「7原則12手順」といいます。
以下で内容を説明していきます。

手順①⇒HACCPのチーム編成
手順②⇒製品説明書の作成
手順③⇒意図する用途及び対象となる消費者の確認
手順④⇒製造工程一覧図の作成
手順⑤⇒製造工程一覧図の現場確認
手順⑥ ・原則①⇒危害要因分析の実施
手順⑦ ・原則②⇒重要管理点の決定
手順⑧ ・原則③⇒管理基準の設定
手順⑨ ・原則④⇒モニタリング方法の設定
手順⑩・原則⑤⇒改善措置の設定
手順⑪ ・原則⑥⇒検証方法の設定
手順⑫ ・原則⑦⇒記録と保存方法の設定

 

5. HACCP導入における「PDCAサイクル」の重要性

HACCPは一度ルールを決めて終わりではありません。手順⑪(検証)と手順⑫(記録)が機能して初めて、実効性のある衛生管理となります。現場では、計画(Plan)、実施(Do)、確認(Check)、改善(Act)のPDCAサイクルを回すことが求められます。 例えば、加熱工程において「中心温度が75℃で1分間以上」という管理基準(CL)を設けた場合、それを確実に測定し、記録に残すことが「実施」にあたります。もし基準に達していなかった場合に、再加熱するのか、あるいは廃棄するのかという「改善措置」をあらかじめ決めておくことで、現場の混乱を防ぎ、不良品の流出を未然に防止できるのです。

 

6. 一般的衛生管理(PP)との関係性

HACCPを効果的に機能させるためには、その土台となる「一般的衛生管理(Prerequisite Programs: PP)」の徹底が不可欠です。HACCPが特定の工程(CCP)に焦点を当てるのに対し、一般的衛生管理は施設全体の清潔さや従業員の身だしなみ、ネズミや昆虫の防除、水の管理などを指します。 土台となる清掃や手洗いが疎かであれば、いくら高度なHACCPプランを策定しても、食品の安全を担保することはできません。「HACCPは、清潔な工場と、衛生意識の高い従業員という土台の上に成り立つ精密なシステムである」という認識を持つことが、導入成功の鍵となります。

 

7. 記録の重要性と「見える化」

HACCPの最大の特徴は「記録」にあります。万が一、製品にトラブルが発生した際、過去の記録を遡ることで、どの工程で問題が生じたのか、あるいはその日の製造工程に不備がなかったかを客観的に証明することができます。これは、消費者や取引先に対して「安全なものを作っている」という根拠を示す強力な武器となります。 近年では、手書きの記録からデジタル管理への移行も進んでいます。センサーを用いた自動温度記録などを活用することで、ヒューマンエラーを減らし、業務の効率化を図ることも可能になっています。

 

8. 食の信頼を守るために

HACCPの導入は、単なる法令遵守(コンプライアンス)のためだけではなく、企業の体質を強化するための投資でもあります。全従業員が「なぜこの工程が重要なのか」を科学的根拠に基づいて理解することで、現場の責任感が醸成されます。 食の安全に対する消費者の眼差しは年々厳しくなっています。HACCPという国際標準の物差しを採用し、日々の管理を愚直に積み重ねていくことこそが、ブランド価値を高め、持続可能な食品製造を実現するための唯一の道と言えるでしょう。各事業者が自社の規模や特性に合わせ、一歩ずつこの衛生管理手法を定着させていくことが期待されています。

 


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