経営判断のための会計法「スループット会計」について

 スループット会計とは、キャッシュフローベースの会計システムで、需要の変化と製造から販売までのサプライチェーンのマネージメントとオペレーションを同期化させる会計論です。

 通常、生産現場での政策や販売の重点戦略に、会計データはあまり役に立たないということが経験的にいわれています。その一番大きな理由は、伝統的な原価計算の論理です。近代科学では、現象を細分化して理解しようとするために、製品別に細かいレベルまで原価を追究し、利益を求めていくスタンスにあります。そのため、工場で発生するすべての経費は、たとえば工場長の社用車の減価償却費や、工場の事務所での電卓代やエンピツ代などが、何らかの基準で製品毎に配分され、間接経費として製品原価に算入されています。厳密にいえば、工場の事務所にいる事務員のお茶の時間も、タイムレコーダで勤務時間として記録されれば、それが複雑なコスト配分の論理に従って製品原価となるのです。工場にある高額の機械設備であろうが、簡単な工具であろうが、その設備が稼働している時間に関係なく製品別に配分される厳密な論理があります。

  ところが、材料費などのような直接費よりも、複雑な配分計算で製品別に配分される間接固定費の方が多い産業が主流を占める現代は、部分的な厳密さ、部分的な最適化をいくら行なっても、それが企業のキャッシュフローを上げることにはなりません。サプライチェーンマネジメントの意志決定は、「何をいつ」「どれだけ作るか」「売るか」「購入するか」というプロダクトミックスと量を時間軸にして行ないます。広義には、価格も重要なサプライチェーンマネジメントの政策変数です。したがって、スループットを上げるには、価格政策による需要の変化と、製造から販売まで...

のサプライチェーン上での制約のマネジメントと、オペレーションの同期化のマネジメントを同時併行で考慮できるキャッシュフローベースのスループット会計システムを開発する必要があります。このスループット会計システムは、シンプルな羅針盤となって経営改革に威力を発揮するでしょう。

表1.スループット会計と標準原価計算の比較

◆関連解説『サプライチェーンマネジメントとは』

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