品質マネジメントシステムを構築した時とその後

 品質マネジメントシステムは、イギリスが産業界の振興を図るためにサッチャー首相の時代で定められた規格がもとになっているといわれています。首相は産業の活性化のために不良品を出さない業務管理規格を、軍需品の調達規定を参考にして制定しました。企業に規格の適用を求め、規格に適合した適切な運用が行われる企業には、不良品を出さないことを証明する認証制度を始めました。
 
 不良削減と生産性向上を求められている地方の下請け企業がありました。発注企業やコンサルタントの指導を受けて、品質マネジメントシステムの認証を取得しました。マネジメントシステムを構築した当初は不良の削減もでき、生産性も向上しました。いつしか、改善効果が上がらなくなりました。発生した不良品の対応が深く発生原因を追究することもなく、短時間の検討会で決定した改善の実施にあると思われました。
 
 品質マネジメントシステム規格の適用範囲は①要求事項を満たした製品の提供能力の実証、及び②その製品の提供を通じて顧客満足の向上にあります。品質マニュアルを改訂しても能力の実証につながらず、作業手順の改訂こそが能力の実証を行なえるものであり、その手順に従った作業の実施により、品質が確保され、顧客の期待に応えることができるのです。
 
 ISO9001規格は何をすべきかがあるが、如何にしての記述は記載がなく他の改善手法が望まれました。機械設備の劣化と品質の要求水準の向上に応えるために、特性要因図を用いて原因の特定を実施することになり特性要因図を用いて不良発生の原因を特定することを現場の中堅職員を交えて行うことで、改善への取り組みが社員の中に浸透していきました。
 
 不良削減や生産性向上の結果は、ジワリと改善されてきています。作業手順書が特定された不良発生原因の対応策が盛りこまれ、使い易く内容の濃いものへと改訂されてきています。品質マネジメントシステムを構築し、認証を取得したかといって製品不良が撲滅できるものでありません。品質マネジメントシステムの規格要求事項でもある「有効性を継続的に改善...
」することが、不良削減や生産性向上に欠かせない事項です。
 
 不良発生の原因を特性要因図(図1)に限らず様々な手法で的確に特定し、再発防止策を検討する。再発を防止する作業手順書は、規格が規定する要求事項を満たして策定することが望まれています。
 
         
 図1.不良発生原因の特定の為の特性要因図   
           

 この文書は、 2015年6月24日の日刊工業新聞掲載記事を筆者により改変したものです。  

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