コア技術の利用を切り口としたオープン・イノベーションの類型 研究テーマの多様な情報源(その19)

 

1.オープン・イノベーションの類型(インバウンドを対象に)

◆関連解説『情報マネジメントとは』
 
 オープン・イノベーションの類型は、自社のコア技術、すなわち自社の強い技術を核とし、そこから数多くの製品テーマを創出するオープン・イノベーションと、かならずしもコア技術を拠り所としないオープン・イノベーションの2つの類型があります。なぜこの切り口が重要かというと、その類型により取組のレベルや実際の活動が異なるからです。
 

2.コア技術を核としたオープン・イノベーション

 
 コア技術を核としたオープン・イノベーションは、更に、既存のコア技術強化を目的とする場合と、新たなコア技術確立を目的とする場合の2つに分けて考えることができます。
 

(1)既存コア技術強化のためのオープン・イノベーション

 
 この類型は、既に設定・保有済みのコア技術を更に強化をし、「『価値づくり』の研究開発マネジメント」という視点から言うと、自社の顧客価値創出力を高めるためものです。コア技術は、そこから数多くの製品テーマを創出するため、通常かなり広い領域で定義するのが普通です。そのため、コア技術は複数の要素技術から構成されます。この類型では、コア技術強化のために、新たな要素技術を自社に追加する過程で、外部の企業や機関と共同研究・共同開発を行ったり、技術を社内に取り込むというものです。したがって、コア技術を構成する要素技術単位でオープン・イノベーションを推進することになります。
 

(2)新たなコア技術確立のためのオープン・イノベーション

 
 この類型は、既存のコア技術を対象とするものではなく、長期的・戦略的な視点から、将来の大きな顧客価値を継続的に創出するための基盤になる、将来的に追加すべき新たなコア技術を確立するために行われるものです。したがって、このオープン・イノベーションは、コア技術という広い技術領域を対象とします。そのため、社内の戦略的な判断に基づき事前に対象とすべき新たなコア技術領域が設定されているのが前提です。ただし、重要なオープン・イノベーションのパートナーが見つかれば、東レとユニクロの間での強い戦略的提携の例のように、その関係の中で新たなコア技術設定機会の発見があるということもあります。このような活動は、事業部のレベルではなく、むしろコーポレートのレベルで実施されることが多いものです。
 

3.コア技術を必ずしも核としないオープン・イノベーション

 
 このオープン・イノベーションでは、その活動は主に事業部門で行われます。では、設定済製品テーマ実現のためのオープン・イノベーションについて、この類型は、何等かの方法(自社の主体的なテーマ創出、重要顧客からの要請等)で既に設定済の製品テーマについて、自社にない補完技術を外部から調達することを目的とします。したがって、「『価値づくり』の研究開発マネジメント」という...
視点から言うと、顧客提供価値は明確になっています。
 
 この類型は、なんらかの自社の強みを使って提供できる製品アイデアを探索するためのオープン・イノベーションです。つまりこの場合は、顧客への価値提供の機会自体を探すことが目的です。活用する自社の強みは、自社のコア技術の場合もありますが、必ずしもそれに限定せず、他の技術や他の強み(例えば販売チャネルの活用)なども含まれます。したがって、この場合は探索の対象は、技術ではなく、製品アイデア(現実には技術を伴うことは多いが)となります。
 
 

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