トポロジー最適化は機械設計をどう変えるのか、第3回 実際の設計現場ではどこまで使われているのか

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トポロジー最適化は機械設計をどう変えるのか、第3回 実際の設計現場ではどこまで使われているのか

【目次】

    1.研究の技術から実用技術へ

    トポロジー最適化という言葉を聞くと「まだ研究段階の技術ではないのか」と感じる設計者も少なくない。確かに、トポロジー最適化が学術分野で研究され始めたのは1990年代であり、長い間、大学や研究機関での研究が中心であった。しかし現在では状況が大きく変わりつつある。CAEソフトウェアの発展と計算能力の向上によって、トポロジー最適化は実際の設計業務の中でも使える技術になってきた。特に軽量化が重要な分野では、すでに実用的な設計手法として活用が進んでいる。その代表例が、航空宇宙分野である。

     

    2.航空機設計で進む軽量化

    航空機の設計では、重量の削減が直接性能に影響する。機体が軽くなれば、燃費が向上する。搭載量が増える。航続距離が伸びるといったメリットが生まれる。そのため航空機メーカーでは、部品1つの重量削減でさえ重要な意味を持つ。近年では、航空機のブラケットや支持構造などにトポロジー最適化が積極的に利用されている。

     

    例えば、従来の設計では、板材にリブを追加した構造。厚みを増やして強度を確保した構造が一般的だった。しかしトポロジー最適化を用いると、荷重の流れに沿った骨格構造が導かれる。その結果、重量を30〜50%削減といった設計例も珍しくない。


    航空宇宙分野でトポロジー最適化が早く普及した理由は、こうした重量削減の効果が非常に大きいからである。

     

    3.自動車分野でも広がる応用

    自動車分野でも、トポロジー最適化の活用が進んでいる。自動...

    トポロジー最適化は機械設計をどう変えるのか、第3回 実際の設計現場ではどこまで使われているのか

    【目次】

      1.研究の技術から実用技術へ

      トポロジー最適化という言葉を聞くと「まだ研究段階の技術ではないのか」と感じる設計者も少なくない。確かに、トポロジー最適化が学術分野で研究され始めたのは1990年代であり、長い間、大学や研究機関での研究が中心であった。しかし現在では状況が大きく変わりつつある。CAEソフトウェアの発展と計算能力の向上によって、トポロジー最適化は実際の設計業務の中でも使える技術になってきた。特に軽量化が重要な分野では、すでに実用的な設計手法として活用が進んでいる。その代表例が、航空宇宙分野である。

       

      2.航空機設計で進む軽量化

      航空機の設計では、重量の削減が直接性能に影響する。機体が軽くなれば、燃費が向上する。搭載量が増える。航続距離が伸びるといったメリットが生まれる。そのため航空機メーカーでは、部品1つの重量削減でさえ重要な意味を持つ。近年では、航空機のブラケットや支持構造などにトポロジー最適化が積極的に利用されている。

       

      例えば、従来の設計では、板材にリブを追加した構造。厚みを増やして強度を確保した構造が一般的だった。しかしトポロジー最適化を用いると、荷重の流れに沿った骨格構造が導かれる。その結果、重量を30〜50%削減といった設計例も珍しくない。


      航空宇宙分野でトポロジー最適化が早く普及した理由は、こうした重量削減の効果が非常に大きいからである。

       

      3.自動車分野でも広がる応用

      自動車分野でも、トポロジー最適化の活用が進んでいる。自動車では、燃費向上。電動化による重量増加の抑制。剛性向上といった目的で軽量化が求められている。例えば、サスペンション部品・ブラケット・モーターハウジング・車体補強部材などの設計にトポロジー最適化が使われ始めている。


      特に電気自動車では、バッテリーの重量が大きいため、車体構造の軽量化が重要な課題となる。そのため、自動車メーカーでも「最初から最適な構造を探索する」という設計手法が少しずつ取り入れられている。

       

      4.ロボットや医療機器でも活用

      トポロジー最適化の応用は、航空機や自動車だけに限らない。ロボット分野でも活用が広がっている。産業ロボットでは、アームの軽量化が重要なテーマである。アームが軽くなれば、高速動作が可能になる。消費電力が減る。制御性が向上するといったメリットがある。そのため、ロボットのリンク構造や支持部材の設計にトポロジー最適化が用いられることがある。


      また医療機器の分野では、人工関節やインプラントの設計にも応用されている。骨の内部構造に似た多孔質構造を設計することで、骨との結合性を高める。重量を軽くするといった効果が期待されている。

       

      5.3Dプリンタとの相性

       

      トポロジー最適化は機械設計をどう変えるのか、第3回 実際の設計現場ではどこまで使われているのか

      図.トポロジー最適化と積層造形による設計プロセス


      トポロジー最適化によって得られた構造は、有機的で複雑な形状になることが多い。こうした形状は従来の切削加工では製造が難しい場合があるが、3Dプリンタ(積層造形)を用いることで実際の部品として製造することが可能になる。近年では、最適化設計と積層造形を組み合わせた新しい設計プロセスが広がりつつある。


      ポロジー最適化が注目されている理由の一つに、3Dプリンタ(積層造形)との相性の良さがある。これまで説明してきたように、トポロジー最適化の結果として得られる形状は、有機的な曲面構造。枝状の骨格構造になることが多い。


      こうした形状は、従来の切削加工では製造が難しい場合が多い。しかし3Dプリンタを用いれば、複雑な内部構造を持つ部品でも製造することが可能になる。このため近年では、トポロジー最適化で構造を設計し、積層造形で製造するという設計プロセスが現実のものになりつつある。


      設計と製造の関係そのものが、少しずつ変わり始めているのである。

       

      6.それでも課題は残る

      ただし、トポロジー最適化が万能というわけではない。


      実際の設計現場では、

      • 計算時間が長い
      • 解析条件の設定が難しい
      • 加工方法との整合が必要


      といった課題もある。


      また、得られた形状をそのまま採用できるケースは多くない。最終的には、

      • 加工性
      • コスト
      • 安全率
      • 保守性


      などを考慮して、設計者が形状を再設計する必要がある。つまりトポロジー最適化は、設計を自動化する技術ではなく、設計の可能性を広げる道具と考える方が現実的である。


      次回予告(最終回)

      ここまで、

      第1回 トポロジー最適化とは何か

      第2回 性能から形が生まれる設計思想

      第3回(今回) 実際の設計現場での活用


      について見てきた。では、この技術が普及したとき、設計者の役割はどう変わるのだろうか。AIや最適化技術が進めば、設計者は不要になるのだろうか。


      最終回では「設計者の役割はなくなるのか」というテーマから、これからの機械設計者に求められる力について考えてみたい。

       

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      この記事の著者

      森内 眞

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