導電性接着剤の仕組みと活用事例、IoT・ウェアラブルデバイスの小型化を支える基幹技術

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なぜ接着剤で電気が通るのか? IoT・ウェアラブル時代に欠かせない『導電性接着剤』を解説

【目次】

    私たちの身の回りにあるスマートフォンやパソコン、そして自動車。これらの便利な電化製品を分解すると、内部には緑色の基板に無数の細かい部品が敷き詰められています。従来、これらの部品を繋ぐ役割は金属を溶かす「はんだ」が担ってきました。しかし今、はんだに代わる新しい技術として「導電性接着剤」に熱い視線が注がれています。今回は、接着機能と導電性を併せ持つ「導電性接着剤」のメカニズムや、従来のはんだ付けとの違い、最新の活用事例を解説します。

     

    1. 接着剤なのに電気が通る?導電性接着剤の基礎とメカニズム

    導電性接着剤とは、文字通り「部品をくっつける接着力」と「電気を通す性質」の2つを併せ持つ画期的な材料です。一般的に接着剤といえば、電気を通さない絶縁体であると考えるのが普通でしょう。では、なぜ電気を通すことができるのでしょうか。その秘密は、接着剤の中に混ぜ込まれた微小な金属の粒にあります。

     

    土台となるのは、電気を通さない一般的な樹脂(プラスチックの仲間)です。このドロドロとした樹脂の中に、電気をよく通す銀や炭素などの細かい粒をたっぷりと混ぜ合わせます。部品同士をこの接着剤で貼り合わせて固めると、内部で金属の粒同士がパズルのように繋がり合い、電気の通り道が形成されます。樹脂の接着強度を維持しながら、内部の導電フィラーが接触し合うことで導電経路を形成し、電気信号を確実に伝達する仕組みです。

     

    2. 「脱はんだ」が加速する理由とは?環境と熱に優しい3つのメリット

    長年、電子部品の接合の主役であった「はんだ」から、なぜ導電性接着剤への切り替えが進んでいるのでしょうか。そこには、現代のモノづくりが直面する課題を解決する3つの大きなメリットが存在します。

     

    第1のメリットは「低温で接合できる点」です。はんだ付けは高温で金属を溶かす必要があるため、熱に弱い最新の繊細な部品や薄いプラスチックのフィルムを熱で傷めてしまう危険がありました。しかし、導電性接着剤の多くははんだよりもはるかに低い温度で固まるため、熱に弱いデリケートな部品でも安全かつ確実に扱うことができます。

     

    第2に「柔らかさと柔軟性」です。固まると金属の塊になるはんだと違い、樹脂をベースとする接着剤は、固まった後も適度な弾力を保ちます。そのため、曲げ伸ばしを繰り返す部分や、スマートフォンを落とした時の衝撃を吸収する必要がある場...

    なぜ接着剤で電気が通るのか? IoT・ウェアラブル時代に欠かせない『導電性接着剤』を解説

    【目次】

      私たちの身の回りにあるスマートフォンやパソコン、そして自動車。これらの便利な電化製品を分解すると、内部には緑色の基板に無数の細かい部品が敷き詰められています。従来、これらの部品を繋ぐ役割は金属を溶かす「はんだ」が担ってきました。しかし今、はんだに代わる新しい技術として「導電性接着剤」に熱い視線が注がれています。今回は、接着機能と導電性を併せ持つ「導電性接着剤」のメカニズムや、従来のはんだ付けとの違い、最新の活用事例を解説します。

       

      1. 接着剤なのに電気が通る?導電性接着剤の基礎とメカニズム

      導電性接着剤とは、文字通り「部品をくっつける接着力」と「電気を通す性質」の2つを併せ持つ画期的な材料です。一般的に接着剤といえば、電気を通さない絶縁体であると考えるのが普通でしょう。では、なぜ電気を通すことができるのでしょうか。その秘密は、接着剤の中に混ぜ込まれた微小な金属の粒にあります。

       

      土台となるのは、電気を通さない一般的な樹脂(プラスチックの仲間)です。このドロドロとした樹脂の中に、電気をよく通す銀や炭素などの細かい粒をたっぷりと混ぜ合わせます。部品同士をこの接着剤で貼り合わせて固めると、内部で金属の粒同士がパズルのように繋がり合い、電気の通り道が形成されます。樹脂の接着強度を維持しながら、内部の導電フィラーが接触し合うことで導電経路を形成し、電気信号を確実に伝達する仕組みです。

       

      2. 「脱はんだ」が加速する理由とは?環境と熱に優しい3つのメリット

      長年、電子部品の接合の主役であった「はんだ」から、なぜ導電性接着剤への切り替えが進んでいるのでしょうか。そこには、現代のモノづくりが直面する課題を解決する3つの大きなメリットが存在します。

       

      第1のメリットは「低温で接合できる点」です。はんだ付けは高温で金属を溶かす必要があるため、熱に弱い最新の繊細な部品や薄いプラスチックのフィルムを熱で傷めてしまう危険がありました。しかし、導電性接着剤の多くははんだよりもはるかに低い温度で固まるため、熱に弱いデリケートな部品でも安全かつ確実に扱うことができます。

       

      第2に「柔らかさと柔軟性」です。固まると金属の塊になるはんだと違い、樹脂をベースとする接着剤は、固まった後も適度な弾力を保ちます。そのため、曲げ伸ばしを繰り返す部分や、スマートフォンを落とした時の衝撃を吸収する必要がある場所において、部品が根本から剥がれたり割れたりするのを防ぐ強力なクッションの役割を果たします。

       

      そして第3が「環境への優しさ」です。かつてのはんだには、環境に悪影響を及ぼす鉛が含まれていました。現在は世界的な環境規制により鉛の使用が厳しく制限されています。導電性接着剤は鉛を含まないため、地球環境にも作業者の健康にも配慮した「クリーン」という曖昧な表現を、具体的な規制(RoHS等)への対応という実務的メリットに具体化しました。

       

      3. 用途で使い分ける!導電性接着剤の2大種類「等方性」と「異方性」

      導電性接着剤は、電気の通し方によって大きく2つの種類に分けられ、用途に応じて賢く使い分けられています。

       

      1つ目は、縦・横・斜めのすべての方向に電気を通す「等方性(とうほうせい)導電性接着剤」です。これはペースト状になっているものが多く、注射器のような機械から必要な場所に少しだけ塗り出し、部品を乗せて固めます。はんだと同じように、塗った場所全体に電気が流れるため、一般的な部品の接合や、立体的な基板の組み立てなどに幅広く使われています。

       

      2つ目は、特定の方向にだけ電気を通す「異方性(いほうせい)導電性接着剤」です。こちらはテープやフィルムのような形をしているのが特徴です。フィルムの中に極小の金属の粒がまばらに散りばめられており、上下の部品で挟み込んで熱と圧力をかけると、粒が潰れて上下の部品同士(縦方向)だけを電気的に繋ぎます。一方、隣り合う横方向には粒が接触しないため、電気は流れません。

       

      この「縦にだけ電気が通る」という性質は非常に画期的です。肉眼では見えないほど細かく密集した配線を繋ぐ際、少しでもずれると隣の配線とくっついて故障の原因になりますが、異方性タイプなら隣同士がショートする心配なく、上下だけを確実に繋ぐことができるのです。

       

      4. スマホから車載まで!現代の最先端テクノロジーを支える活用事例

      導電性接着剤は、私たちが日常的に使う最先端の製品に欠かせない裏方として大活躍しています。

       

      最も代表的な例が、スマートフォンや薄型の液晶ディスプレイ、有機パネルなどの画面です。画面のガラス板の端には、映像の信号を送るための極めて細かな配線が並んでいます。ガラスは熱に弱く、高温のはんだ付けを行うと割れてしまいます。そこで、先ほど紹介したフィルム状の「異方性導電性接着剤」が使われます。低温で、しかも隣の配線と混線せずにガラスと電子部品を綺麗に繋ぐことができるため、現代の高画質なディスプレイの製造には絶対に欠かせない技術となっています。

       

      また、折り畳み式のスマートフォンや、自由に曲げられる薄いフィルム状の電子回路にも採用されています。接着剤自体がしなやかな柔軟性を持っているため、ユーザーが繰り返し画面を折り曲げたり丸めたりしても、内部の配線がちぎれたり剥がれたりすることなく、安定して電気を送り続けることができます。

       

      さらに近年、目覚ましく需要が拡大しているのが自動車産業です。現代の自動車は「走るコンピュータ」と呼ばれるほど無数の電子部品を搭載しています。自動車の内部は、真夏の猛暑による高温から真冬の氷点下、さらには走行中の激しい振動という非常に過酷な環境に晒されます。固いはんだ付けでは振動で割れてしまう恐れがある場所でも、弾力性のある導電性接着剤ならその衝撃を上手く吸収し、長期間にわたって安全に部品を繋ぎ止めることができます。

       

      スマートウォッチなどのウェアラブル端末も含め、製品がより小さく、より薄く進化するほど、導電性接着剤の活躍の場は無限に広がっているのです。

       

      5. 普及に向けた課題とは?次世代ナノテクノロジーが切り拓く未来

      多くのメリットを持つ導電性接着剤ですが、すべての「はんだ」を完全に置き換えられているわけではありません。さらなる普及に向けては、いくつかの課題も残されています。

       

      最大の課題はコストです。電気をよく通すために高価な銀の粒を大量に使用しているため、どうしても材料費が高くなってしまいます。また、高湿度・高電圧下で銀成分が移動して短絡を引き起こす「イオンマイグレーション」現象への対策が重要となります。本来繋がってはいけない隣の配線と繋がってショートを引き起こしてしまう問題への対策も欠かせません。加えて、金属同士を一体化させるはんだに比べると、接着剤による接合は引っ張る力に対して弱い場合があり、接着強度のさらなる向上も求められています。

       

      しかし、技術の進化は立ち止まりません。現在これらの課題を克服するため、高価な銀の代わりに、より安価な銅の粒を活用する研究が急速に進んでいます。銅は錆びやすいという弱点がありましたが、最新の特殊なコーティング技術によってその問題を克服しつつあります。

       

      さらに、金属の粒を極限まで小さくするナノテクノロジーを活用し、より少ない金属量で強力に電気を通し、強い接着力を実現する次世代の導電性接着剤も開発されています。電子機器の進化を陰で支える導電性接着剤は、これからも導電性接着剤は、材料工学の進化とともに、電子機器の高機能化や環境負荷低減を実現する重要な役割を担っていくことが期待されます。

       

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