サプライチェーンとキャッシュフローの関係

1.時間こそキャッシュの源泉

 モノがサプライチェーン上を駆け抜ける時間を短くすれば、キャッシュの回転スピードは上がります。われわれがよく知っている「時は金なり」の経験則です。時間にはコストにとどまらないそれ以上の意味があります。サプライチェーンの最終業務である「製品をキャッシュに変換する機会」すなわち事業機会と時間を、常に結びつけておくべきです。サプライチェーン上にモノが滞留しないこと、サプライチェーン上でモノが無駄な時間を消費しないことはキャッシュが生まれるスピードを上げることを意味します。

 それではサプライチェーン上でモノは、どのような時間を消費するでしょうか。サプライチェーンを通過する時間(リードタイム)は、ほとんどが付加価値の付かない在庫時間となっているのです。

 

2.必ずしも効率はキャッシュを生まない 

 無駄をなくそうと各部門の全従業員が一生懸命働いても、サプライチェーン全体の流れが制御されていなければ在庫が増えるだけで、資金繰りを悪化させるのみです。時間を単なるコスト換算の道具としてしか捉えず、時間という指標に関心がないようでは部分最適に過ぎず、企業収益は向上しません。なぜなら、時間の持つ威力とは、時間そのものがキャッシュを生むことだからです。ポイントは、限られた時間で最大のキャッシュを生むために、連鎖する業務全体をモノ(カネ)が速やかに流れるべく流速(スループット)を制御することにあります。プロセス中心に資材調達・生産・販売などの部分的効率化によって収益は阻害されてきました。

 必ずしも効率化がキャッシュを生むわけではありません。このような視点に基づくSCMが、企業内・企業間において新しいビジネスのパラダイムを生んでいるのです。

  

3.原価計算にまどわされるな 

 棚卸在庫の価値が普遍で変わらないという非現実的な理想状態でしか、原価計算(コストアカウンティング)は成立しません。最近のハイテク製品のほとんどは、アイスクリームや生鮮食品のごとく製造コストと無関係に、時間の経過と共に価値が低下してしまいます。ところが原価計算では製造原価が損益計算の原価とはならず、在庫という資産に...

なって売れ残ったモノは原価から控除されます。これを売上原価といい、すでに在庫評価の計算が組み込まれているために、真実を伝えるキャッシュフロー計算との対比から合法的な粉飾決算にも使えるほどです。

 製品化価値は時間と共に下がっていくものだと認識する、管理会計の仕組みやビジネスモデルを設計する必要があります。キャッシュを生む原理は、時間をベースに考える必要があるのです。

◆関連解説『サプライチェーンマネジメントとは』

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