MEMSとは デバイス産業第3の波か?

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【目次】

    半導体微細加工技術と様々な技術を組み合わせて、小形部品を形成するMEMS (Micro Electro Mechanical Systems)と呼ばれる技術は、半導体と同様にウェ-ハ上で多数を一括製造できるため小形・安価で、高度な機能を持たせることができます。自動車やスマホなど身の周りで沢山使われているMEMS、今回は、MEMSの概要を解説します。

     

    1.MEMSとは

    MEMSは、マイクロ・エレクトロニクス、マイクロ・メカトロニクス、マイクロ・オプティクスとそれを支える材料技術の融合体で、利用分野も多岐にわたります。通信、バイオテクノロジー、センサネットワークなどです。これらの市場は応用範囲も広がり毎年増大を続けており、半導体、ディスプレイ産業に次ぐデバイス産業第3の波になるのではないでしょうか。

     

    さまざまな製品の小型化にMEMSは貢献しています。たとえば、インクジェットプリンタのヘッド部にある微小ノズル、ジャイロスコープ、圧力センサ、加速度センサ、流量センサなどの各種のセンサなどがあります。また、医療用としても応用されています。

     

    2.MEMSの特長

    LSIがウェ-ハに電子回路を集積していたのに対して、MEMSの特長は、立体的な積層技術によって電気的機能とメカニカル機構をウェ-ハ上に大量生産出来ます。この特長により、MEMSデバイスは、更なる小型化、低消費電力化が期待出来ます。

     

    半導体プロセス技術を応用してMEMSは作られるため、精度が数ミクロンの小さな機械が作れて、部品そのものを劇的に小型化することができます。また、半導体と同様で、大量生産により価格を安くすることができます。

     

    3.MEMSの使われ方

    Digital Micro mirror Device :DMDはMEMS技術を利用したディスプレイの代表例です。これは、TI(テキサスインスツルメンツ)社が製品化しており、プロジェクターなどに採用されています。DMDは、Si基板上に画素に相当するミラーが作り込まれていて、電極はミラーの対角部の真下にあり、電極に信号を与えることでミラーが傾き、光の反射角を制御できるのです。これらのミラーを制御してスクリーンに画像を表示します。

     

    このほか、MEMS技術で製造した赤外線温度センサICをTI社は、製品化しています。赤外線を吸収することで出力電圧が変化する熱電堆をMEMS技術で製造したものです。チップ上には、16ビットA-D変換器、ローカル温度センサなども集積しています。温度測定範囲は-40~+125℃。センサ出力電圧は7μV/℃です。パッケージは、8ピンWCSP(実装面積1.6mm×1.6mm)です。

     

    4.MEMSの製造と今後

    MEMSの製造は、サーフェイス・マイクロマシンとバルク・マイクロマシンの二つに分けられます。サーフェイス・マイクロマシンは、基板表面に作り込んだ数㎛厚の薄膜を利用して製造したものです。バルク・マイクロマシンは、数十㎛の厚膜を利用します。両者に共通していることは、機械構造物を薄膜成長・エッチング・フォリソグラフィの技術で作り込みます。

     

    MEMSに作り込み可能な構造物は、ダイヤフラム、ビーム、プリング、ウエイト、ミラーなどがあります。センサでは、圧力センサ、流量センサ、温度センサ、加速度センサ、角速度センサなどが実現可能です。

     

    MEMSデバイスのメリットは、小型・低消費電力・低コスト化などです。外形については、従来型加速度センサが、たばこの箱の大きさで、このためアプリケーションは大きな制限を受けていました。それがMEMS技術では、数mm角で実現でき、スマホ、家庭用ゲーム機のコントローラなどへの搭載が進みました。

     

    MEMSの今後ですが、医療分野に対するMEMS 技術の利用があります。これは単なる生体内での極限計測の実現にとどまらず、従来技術では不可能であった新たな生体情報をMEMSで得ることが可能になります。その結果、それらの情報から適切な診断・治療サービスが提供できるようになるなど、MEMSが新たな医療分野を生み出...

    【目次】

      半導体微細加工技術と様々な技術を組み合わせて、小形部品を形成するMEMS (Micro Electro Mechanical Systems)と呼ばれる技術は、半導体と同様にウェ-ハ上で多数を一括製造できるため小形・安価で、高度な機能を持たせることができます。自動車やスマホなど身の周りで沢山使われているMEMS、今回は、MEMSの概要を解説します。

       

      1.MEMSとは

      MEMSは、マイクロ・エレクトロニクス、マイクロ・メカトロニクス、マイクロ・オプティクスとそれを支える材料技術の融合体で、利用分野も多岐にわたります。通信、バイオテクノロジー、センサネットワークなどです。これらの市場は応用範囲も広がり毎年増大を続けており、半導体、ディスプレイ産業に次ぐデバイス産業第3の波になるのではないでしょうか。

       

      さまざまな製品の小型化にMEMSは貢献しています。たとえば、インクジェットプリンタのヘッド部にある微小ノズル、ジャイロスコープ、圧力センサ、加速度センサ、流量センサなどの各種のセンサなどがあります。また、医療用としても応用されています。

       

      2.MEMSの特長

      LSIがウェ-ハに電子回路を集積していたのに対して、MEMSの特長は、立体的な積層技術によって電気的機能とメカニカル機構をウェ-ハ上に大量生産出来ます。この特長により、MEMSデバイスは、更なる小型化、低消費電力化が期待出来ます。

       

      半導体プロセス技術を応用してMEMSは作られるため、精度が数ミクロンの小さな機械が作れて、部品そのものを劇的に小型化することができます。また、半導体と同様で、大量生産により価格を安くすることができます。

       

      3.MEMSの使われ方

      Digital Micro mirror Device :DMDはMEMS技術を利用したディスプレイの代表例です。これは、TI(テキサスインスツルメンツ)社が製品化しており、プロジェクターなどに採用されています。DMDは、Si基板上に画素に相当するミラーが作り込まれていて、電極はミラーの対角部の真下にあり、電極に信号を与えることでミラーが傾き、光の反射角を制御できるのです。これらのミラーを制御してスクリーンに画像を表示します。

       

      このほか、MEMS技術で製造した赤外線温度センサICをTI社は、製品化しています。赤外線を吸収することで出力電圧が変化する熱電堆をMEMS技術で製造したものです。チップ上には、16ビットA-D変換器、ローカル温度センサなども集積しています。温度測定範囲は-40~+125℃。センサ出力電圧は7μV/℃です。パッケージは、8ピンWCSP(実装面積1.6mm×1.6mm)です。

       

      4.MEMSの製造と今後

      MEMSの製造は、サーフェイス・マイクロマシンとバルク・マイクロマシンの二つに分けられます。サーフェイス・マイクロマシンは、基板表面に作り込んだ数㎛厚の薄膜を利用して製造したものです。バルク・マイクロマシンは、数十㎛の厚膜を利用します。両者に共通していることは、機械構造物を薄膜成長・エッチング・フォリソグラフィの技術で作り込みます。

       

      MEMSに作り込み可能な構造物は、ダイヤフラム、ビーム、プリング、ウエイト、ミラーなどがあります。センサでは、圧力センサ、流量センサ、温度センサ、加速度センサ、角速度センサなどが実現可能です。

       

      MEMSデバイスのメリットは、小型・低消費電力・低コスト化などです。外形については、従来型加速度センサが、たばこの箱の大きさで、このためアプリケーションは大きな制限を受けていました。それがMEMS技術では、数mm角で実現でき、スマホ、家庭用ゲーム機のコントローラなどへの搭載が進みました。

       

      MEMSの今後ですが、医療分野に対するMEMS 技術の利用があります。これは単なる生体内での極限計測の実現にとどまらず、従来技術では不可能であった新たな生体情報をMEMSで得ることが可能になります。その結果、それらの情報から適切な診断・治療サービスが提供できるようになるなど、MEMSが新たな医療分野を生み出す原動力となるということが期待されています。

       

      生命科学へのMEMSの貢献としては、生命現象の根幹をなす生体高分子と同程度の大きさの計測ツール、マニピュレータの実現です。生命科学に MEMS 技術を組込めば、細胞内における生体高分子の機能を解明するための微小な各種ツールを実現できるようになります。このような技術的背景をもとに,MEMS 技術の医療応用は研究開発のすそ野を広げてきています。

       

      他に交通インフラ維持管理のためにMEMS技術の活用が期待されます。車輛通行時に橋脚部で日常的に発生する低周波振動をMEMSで電気に変換することで、橋脚部に設置するセンサ電源とする。このセンサMEMSから得られる橋脚部での劣化情報を通信伝送することにより交通インフラの維持管理技術の飛躍的向上が期待されています。

       

       

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      この記事の著者

      桶谷 裕

      中小企業における技術と経営が一体となった経営戦略立案のお手伝いを致します。また、災害時における事業継続へ向けた防災計画の立案や、日常業務でのエネルギマネージメントも得意としています。

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