PWM(パルス幅変調制御)とは

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PWM

 

電動機(モーター)の制御方式には、代表的なものでPWM制御、PID制御、マイコン制御、ベクトル制御などがあります。どの制御方式が最適かは電動機(モーター)の種類などによって異なります。

EV自動車は電動機(モーター)のトルク特性により、変速機を介する必要がなくなります。駆動輪で必要な回転数に合わせて、リダクションギアと呼ばれる装置で一律に回転数を下げるだけでいいのです。電車には変速機がありませんが、それと同じ理屈です。

パワーエレクトロニクス技術は、EV、HEVはいうに及ばず、エンジン駆動の自動車においても、パワステをはじめとした様々な補機等にも適用されてきています。ところが車載する自動車用パワーエレクトロニクスは産業機械、家電などへの応用で発展してきたこれまでのパワーエレクトロニクスと少し異なる視点が求められています。

 

インバーター制御では交流出力の周波数、電圧、電流、位相などを制御します。そのために出力するパルス幅を制御するPWM(pulse width modulation:パルス幅変調)制御を使うことが多いのです。インバーターは直流電源を用いて交流電力に変換する回路ですが、直流電源の性質により、電圧形インバーターと電流形インバーターに区別されます。電圧形インバーターは直流電源にコンデンサーを用いて、電圧源として機能するインバーターで、多くのインバーターは電圧形インバーターです。今回は、このような背景を踏まえて、PWM(パルス幅変調制御)の概要を解説します。

 

1.  PWMとは

PWMとは、pulse width modulation:パルス幅変調のことで、トランジスタのスイッチングパルス幅を可変する方式です。出力波形の1サイクル中に多数のパルス列を作り、そのパルス幅の平均電圧が正弦波状に出力されるよう制御する方式です。

パルス波のデューティー比を変化させて変調する変調方法で、pulse width modulation:パルス幅変調と表現されます。デューティー比とは周期的なパルス波を出したときの周期とパルス幅の比のことです。

 

2.  スイッチングによる制御とは

可変抵抗でモータにかかる電圧を制御した場合,可変抵抗で熱による損失が発生します。 この発熱ですが,実際につまみを回して,抵抗値を変えた場合,どの条件でどれだけ発熱するのかは計算できます。そしてある条件で可変抵抗は発熱しません。

この発熱しない状態ですが、モータが完全にONのときと、モータが完全にOFFのときの2パターンです。この2つの状態だけを使用するならば可変抵抗は発熱しません。この2パターンのみの状態でモータを回す制御をスイッチング制御と呼びます。ONとOFFをスイッチのように切り替えることからスイッチングと呼ばれています。

しかしスイッチのONとOFFのみで、実際に回転数を制御できるのでしょうか?スイッチがONのときは最大限のトルクで加速し、OFFのときは減速してやがて停止してしまいます。このON・OFFの切替えが高速に繰り返されたらどうなるでしょうか?

微小時間でON・OFFが繰り返し切り替わると、ONのときモータは加速し、速度増加が極微小なうちにOFFになります。OFFのときモータは減速し、速度減少が極微小なうちにONになります。すなわち、ON・OFFを高速で繰り返すとある速度でモータが回転し続けることが分かります。これによりモータの回転速度を決めることが出来るのです。

スイッチング制御ですが、実際には可変抵抗を高速で動かしたりはしません。高速で抵抗値が変わる、スイッチのようにON・OFFがカチッと切り替わるトランジスタやMOS-FET、IGBTなどの半導体を用います。

 

3.  PWM制御(パルス幅変調制御)の実際

スイッチング制御では高速でON・OFFさせることが分かりましたが、ONしている時間とOFFしている時間の割合を考えましょう。単に、ON・OFFを繰り返すならONの時間もOFFの時間も半々となるのが普通です。しかし、ON・OFFそれぞれの時間を変えてスイッチングさせるとモータが加速する時間とモータが減速する時間の割合が変わり、モータの速度が変更できます。これが、PWM制御(パルス幅変調制御)の実際です。

実際には、ON・OFFさせる周期とデューティー比はモータとの相性で決定します。PWM制御で回転数やトルクをきちんとコントロールする場合は、フィードバック制御を前提とします。

 

4.  PWM制御の特徴

マイコンからDCモータを制御するとなる...

PWM

 

電動機(モーター)の制御方式には、代表的なものでPWM制御、PID制御、マイコン制御、ベクトル制御などがあります。どの制御方式が最適かは電動機(モーター)の種類などによって異なります。

EV自動車は電動機(モーター)のトルク特性により、変速機を介する必要がなくなります。駆動輪で必要な回転数に合わせて、リダクションギアと呼ばれる装置で一律に回転数を下げるだけでいいのです。電車には変速機がありませんが、それと同じ理屈です。

パワーエレクトロニクス技術は、EV、HEVはいうに及ばず、エンジン駆動の自動車においても、パワステをはじめとした様々な補機等にも適用されてきています。ところが車載する自動車用パワーエレクトロニクスは産業機械、家電などへの応用で発展してきたこれまでのパワーエレクトロニクスと少し異なる視点が求められています。

 

インバーター制御では交流出力の周波数、電圧、電流、位相などを制御します。そのために出力するパルス幅を制御するPWM(pulse width modulation:パルス幅変調)制御を使うことが多いのです。インバーターは直流電源を用いて交流電力に変換する回路ですが、直流電源の性質により、電圧形インバーターと電流形インバーターに区別されます。電圧形インバーターは直流電源にコンデンサーを用いて、電圧源として機能するインバーターで、多くのインバーターは電圧形インバーターです。今回は、このような背景を踏まえて、PWM(パルス幅変調制御)の概要を解説します。

 

1.  PWMとは

PWMとは、pulse width modulation:パルス幅変調のことで、トランジスタのスイッチングパルス幅を可変する方式です。出力波形の1サイクル中に多数のパルス列を作り、そのパルス幅の平均電圧が正弦波状に出力されるよう制御する方式です。

パルス波のデューティー比を変化させて変調する変調方法で、pulse width modulation:パルス幅変調と表現されます。デューティー比とは周期的なパルス波を出したときの周期とパルス幅の比のことです。

 

2.  スイッチングによる制御とは

可変抵抗でモータにかかる電圧を制御した場合,可変抵抗で熱による損失が発生します。 この発熱ですが,実際につまみを回して,抵抗値を変えた場合,どの条件でどれだけ発熱するのかは計算できます。そしてある条件で可変抵抗は発熱しません。

この発熱しない状態ですが、モータが完全にONのときと、モータが完全にOFFのときの2パターンです。この2つの状態だけを使用するならば可変抵抗は発熱しません。この2パターンのみの状態でモータを回す制御をスイッチング制御と呼びます。ONとOFFをスイッチのように切り替えることからスイッチングと呼ばれています。

しかしスイッチのONとOFFのみで、実際に回転数を制御できるのでしょうか?スイッチがONのときは最大限のトルクで加速し、OFFのときは減速してやがて停止してしまいます。このON・OFFの切替えが高速に繰り返されたらどうなるでしょうか?

微小時間でON・OFFが繰り返し切り替わると、ONのときモータは加速し、速度増加が極微小なうちにOFFになります。OFFのときモータは減速し、速度減少が極微小なうちにONになります。すなわち、ON・OFFを高速で繰り返すとある速度でモータが回転し続けることが分かります。これによりモータの回転速度を決めることが出来るのです。

スイッチング制御ですが、実際には可変抵抗を高速で動かしたりはしません。高速で抵抗値が変わる、スイッチのようにON・OFFがカチッと切り替わるトランジスタやMOS-FET、IGBTなどの半導体を用います。

 

3.  PWM制御(パルス幅変調制御)の実際

スイッチング制御では高速でON・OFFさせることが分かりましたが、ONしている時間とOFFしている時間の割合を考えましょう。単に、ON・OFFを繰り返すならONの時間もOFFの時間も半々となるのが普通です。しかし、ON・OFFそれぞれの時間を変えてスイッチングさせるとモータが加速する時間とモータが減速する時間の割合が変わり、モータの速度が変更できます。これが、PWM制御(パルス幅変調制御)の実際です。

実際には、ON・OFFさせる周期とデューティー比はモータとの相性で決定します。PWM制御で回転数やトルクをきちんとコントロールする場合は、フィードバック制御を前提とします。

 

4.  PWM制御の特徴

マイコンからDCモータを制御するとなると、電圧を上下させてモータの速度を変えることは少々面倒になります。主にハードウェア的な理由からですが、マイコンからの出力は基本的にHighを出力するか、Lowを出力するかのどちらかなので、電圧の強さを変えるとなると専用の回路を用意する必要があるうえに、電圧の上昇/下降による無駄な熱が出たりして効率が非常に悪いのです。

そこでPWM制御が役に立ちます。PWMは一定の時間内でどの程度Highを出力するかをコントロールする制御方式です。デューティー比が小さいときはHighの時間が短いので、モータは少しだけ回転して止まろうとします。逆にデューティー比が大きいときは、モータは長時間回転します。

PWM制御の特徴そのものがこの回転の仕組みです。パルス波の周期をあらかじめ決めておけば、後はデューティー比を決めることでパルス幅を計算することができ、サーボモータはそのパルス幅で決められた位置まで回転します。

 

 

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この記事の著者

大岡 明

改善技術(トヨタ生産方式(TPS)/IE)とIT,先端技術(IoT,IoH,xR,AI)の現場活用を現場実践指導、社内研修で支援しています。

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