クリーン化を成功させる条件とは クリーン化について(その25)

 

 

4. クリーン化のなぜを考える

◆ 継続のための仕掛け

図.「 継続のための仕掛け」

 

 今回も前回に続き、上図の「継続のための仕掛け」について説明します。

 クリーン化活動が定着しても毎日同じことの繰り返しとなると、手抜きや意識の低下などが起きてきます。この状態を放っておくと徐々に環境が悪くなり、品質・歩留まりが低下してきます。これは緩やかに変化していくので、気が付いた時には深刻な状態になっていたという場合があります。

 徐々に環境が悪くなると、何がいつから変化してきたのか、その原因がつかめません。そこで闇雲にあちこち突いてみても真因究明には届かず、適切な対応ができないのです。

 このような事態となる前に管理、監督者は日々よく現場を見て、活動に弱さ(ゆるみ)を感じたら、そのタイミングを計り、イベントなどを開くのも一つの手です。これによってまた活動に目を向け、その大切さに気付き継続してもらうことが狙いです。さらに、クリーン化継続のためのDNA継承という意味もあります。先輩が後輩に伝えるのには限度、限界があります。イベントなどに参加しながら理論や理屈だけではなく、体験と経験から身に付け、継承していくことも大切です。

 様々な会社から現場診断・指導・アドバイスを依頼され訪問すると、そういうところほど、活動に対し様々な工夫やアイデアがみられます。人の知恵は無限だと考えさせられます。それでもさらに新たな考え方を求め、ものづくり基盤を高めていこうという気概を感じます。

 

◆ イベントの企画、実施について

 今まで大きなイベント例を紹介してきましたが、いろいろな会社を訪問すると、よくもこんなことを考えたなあと思うほど様々なイベントが催されています。それだけ上層部や管理監督者が、活動の継続の必要性や重要性を認識しているのでしょう。盆や年末の大掃除に窓ガラス拭きがある会社では、大掃除の時、通常の清掃に加え、必ず全員で窓ガラスを拭いていました。この時の掃除用具は雑巾(ぞうきん)や洗浄剤ではなく、新聞紙だそうです。

 なぜ新聞紙なのかと聞いたところ「新聞印刷に使用されているインクは窓ガラスの汚れを落とす効果がある」というのです。このことは一般的に知られているようですが、実際に活用しているところは初めて見ました。どうせ捨ててしまうものだけど、捨てる前にもう一度活用できるわけです。

 お金をかけずに、知恵と工夫でできる例です。

 そして作業者は拭く前と後の違いを実感し、清掃の必要性を感じるというのです。拭いているガラスとまだ拭いていない隣のガラスが直接比較できる、ビフォー、アフターが同時に観察できるわけです。そして拭き残しがないか、効果的な拭き方はどうするか。拭き終わるタイミングはいつにするかなど、自分たちで拭き方を工夫するのです。気が済まなければ何度でもやり直す。知らず知らずのうちに自分の心を磨く。そんな効果も出てくるのだそうです。その会社では、社員の方も生き生きしていました。常に成長しているのでしょう。

 

【ハエ取りリボン】

 長野県のある会社に行ったところ、クリーンルームではないが精密製品の組み立て作業をしている部屋がありました。綺麗(きれい)に管理されている部屋でしたが、天井からたくさんのハエ取りリボンが吊(つ)るしてありました。「この部屋ではハエがいるんですか?」と聞いたところ、社長の発案で「一見綺麗に見える部屋でも、浮遊しているゴミがたくさんある」ということを社員に説明したくて、試しに吊るしてみたそうです。社長もよそから聞いた話であって、よく理解していなかったとのことですが、沢山(たくさん)の浮遊塵(繊維など)が付着し、すごく汚れているのを目の当たりにし、社長自身が一番驚いたとのことです。

 また作業台の上でも、落下塵調査をしてみたところ、沢山のゴミが付着しました。汚れたハエ取りリボンを定期的に交換するのですが、落下塵調査の場所の上にハエ取りリボンがない時は落下塵の量が多く、リボンがある時は落下塵の一部はリボンに捕集されて少ないそうです。その違いが肉眼で確認できるレベルだというのです。このゴミを観察すると、繊維や紙のゴミが中心であり、比較的浮遊しやすいゴミが多いことが分かったそうです。

 これらの経験から作業の仕方や紙などの扱い方、服装、製品組み立て場所などで様々な改善が行われたというのです。紙のゴミは印刷時にプリンターから出るものもありますが、各種記録などで人が紙を扱う時にも発生します。どうして紙から発塵するのか。一般の紙は元々パルプが主成分です。これは繊維の長さが短く(短繊維)絡みが少ないので抜け落ちるわけです。その、どうして?なぜ?を知ると活動に繋がります。社長も聞いた話でそのままにせず、貴重な情報と捉えていたようです。

 

【廊下の天井にクリーンマットを吊るした例】

 その社長は、廊下の天井にもクリーンマット(除塵マット)を広げて吊るしてみたそうです。下から見上げると、クリーンマットの上(転用側)に蛍光灯があれば、透けて見えるのでクリーンマット上に沢山のゴミが捕集されているのがよく見えるというのです。ゴミを可視化した例ですが、日頃当たり前に見ている風景でも見方によれば、社員一人ひとりに訴えることが...

できます。

 口頭でいうより一目瞭然(りょうぜん)、あるいは百聞は一見にしかずということです。このことを社長自身が行ったことにも意義があります。日頃、ゴミによるクレーム、返品などの報告を受けているため、現状を何とかしたいという思いもあったと思いますが、品質向上など様々な問題の改善の着眼点が見えてくるのです。社長が自ら行動することは、取引先にとっても真剣に対応していると感じるでしょう。

 

 他社では社長や役員と面会をすると「日頃から厳しく言っている」という言葉が聞かれることもありますが、具体的に説明されると安心感が得られます。聞いている方でも口先だけか、そうでないかは伝わってきます。

 この例は、イベントというよりも、クリーン化で重要とされ最初の項目にあたる、TOPや経営者の旗振りの部分です。こうなると、社員一人ひとりの意識も変わってきます。お金をかけずに知恵と工夫でできることが沢山あります。人を育て、その人たちの知恵と工夫を結集し改善する。それを評価、褒めることで、その人たちがまた知恵を出すというスパイラル。そんな活動にしたいものです。

 

 次回に続きます。

 

◆関連解説『環境マネジメント』

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