基本的な考え方 ジャスト・イン・タイム生産 (その17)

【目次】

第2章 基本的な考え方を押さえておく

(1) 「改革」である
  「改善」と「改革」の違いとは
  「自己啓発」ではなく「自己革新」を行なう
  「改革」と「改善」を使い分ける
(2) 「ムダ取り」である
   生産性の向上は改革の結果
  「ムダ」とは何か
(3) 「流れ」である
   製造業には7つの流れがある
   流れ化の5つのポイント
   流れ生産の基本は「1個流し」
   1個にこだわる。
(4) 「少人化」で生産性を上げる
   見せかけの「効率的」にごまかされるな
   効率化とはできるだけ少ない人員で対応すること
(5) 大切なのはタクトタイムを守ること
   個々の効率・全体の効率
   「タクトタイムを守る」とは
   企業全体の同期を図る
(6) もうひとつの「5S」でスモールメリットに対応する
   スケールメリットからスモールメリットヘ

(7) 7つの経営課題をゼロベースで考える
   「ゼロベース発想法」で課題を根本から解決する← 今回の記事

 

第2章 基本的な考え方を押さえておく

 ジャスト・イン・タイム(JIT)生産を実現するためには、JITの考え方を理解しておく必要があります。JIT改革で重要なキーワードを取り上げて説明します。

(7) 7つの経営課題をゼロベースで考える

 7つの経営課題について7つの「ゼロ」を目指し、問題を根本から捉え直すゼロベース発想法を解説します。

⑦ 安全第一 ----- 災害ゼロ

 従来から、ゼロベース発想をしてきたものに「災害ゼロ」があります。「災害ゼロ」とは「安全(Safety)」のキャッチフレーズです。工場での安全には、大きく3つのポイントがあげられます。

◆ 事故は通常作業では起こらない

 事故や災害は、一定の手順化された作業や行動を行なっている分には、あまり起こりません。何か異常処理や例外処理が発生した時に起こりやすいのです。例えば、カシメ機(圧着機)で作業する際、作業者は班長に「機械に手を入れないように」と注意を受けています。作業者も「手を入れたら危ない」という認識は十分に持っているでしょう。

 通常の作業を行なっているうちは問題なかったのですが、ある時、事故が起きてしまいました。ワークをセットしてスイッチをONにしたところ、ワークが治具から外れてしまったのです。このままでは不良になると、ワークを直そうと、とっさにカシメ機のなかに手を入れて、手をカシメてしまったのです。

 事故防止のためには、第一に「機械に手を入れてはいけない」という「意識化」が作業の根底になければなりません。これは、安全の「躾(しつけ)づくり」として徹底して行なわれるべきです。しかし認識はしていても、なんらかの異常処理や例外処理が発生すると、とっさに反射神経が認識を超えてしまうのです。これを踏まえて、事故防止には次の3段階の対策が必要となります。

  1. 意識化・・・・・・・危険を認識する。
  2. 標準化・・・・・・・作業標準・標準作業・行動手順などのルールを設定する。
  3. ハードのしくみ化・・とっさのときには手が入らないしくみをつくる。

 

◆ 災害ゼロへのアプローチ

 3K(汚い、きつい、危険)職場を一掃し、安心して働ける職場環境をつくるにはどうすればいいのでしょうか。この課題を実現するには、まず、躾づくりを含めた、安全の基礎づくりとしての「5S・3定」運動が必要です。その基礎のうえに、人と環境の災害ゼロを推進していきます。

① 「安全はすべてに優先する」ことを徹底する。
② 安全の基礎づくりとして「5S・3定」「全社的躾けづくり」を行なう。
③ 人と環...

境の災害ゼロ活動として、安全のしくみ化を行なう。

 以上の手順で「災害ゼロ」に向けてアプローチをかけましょう。

 

 次回から第2部「ジャスト・イン・タイム生産、実践編」の解説に移ります。

 【出典】古谷誠 著 『会社を強くする ジャスト・イン・タイム生産の実行手順』中経出版発行(筆者のご承諾により連載)

 【用語解説】

 [1]製造物責任(PL)製造物責任法(せいぞうぶつせきにんほう、平成6年7月1日法律第85号)は、製造物の欠陥により損害が生じた場合の製造業者等の損害賠償責任について定めた法規のことをいうが、形式的意義においては、上述の損害賠償責任について規定した日本の法律のことをいう。1995年7月1日施行。製造物責任という用語に相当する英語の(product liability)から、PL法と呼ばれることがある(引用:Wikipediaから)。

 

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