地球に配慮し、次世代につなげる環境規格

 

1. マネジメントシステム規格とスペック

 かけがえのない地球環境を大切にして、次世代につなげていくのが我々の義務です。また我々の健康を守るためにも、いくつかのルール(規格)を作り、みんなで守ることが必要になってきます。規格は大きくわけて「マネジメントシステム規格」と「スペック(製品規格)」の2種類あります。表1にマネジメントシステム規格とスペック(製品規格)の対比を示します。

表1. マネジメントシステム規格とスペック(製品規格)について

 

2. 環境関連のマネジメント規格

 組織や事業者が、その運営や経営の中で自主的に環境保全に関する取り組みを進めるにあたり、環境に関する方針や目標を自ら設定し、これらの達成に向けて取り組んでいくことを「環境管理」または「環境マネジメント」といいます。

 このための工場や事業所内の体制・手続き等の仕組みを「環境マネジメントシステム」(EMS:Environmental Management System)といいます(コラム1参照)。また、こうした自主的な環境管理の取組状況について、客観的な立場からチェックを行うことを「環境監査」といいます。

 環境マネジメントや環境監査は、事業活動を環境にやさしいものに変えていくために効果的な手法であり、幅広い組織や事業者が積極的に取り組んでいくことが期待されています。

 環境マネジメントシステムには、国際標準化機構(ISO)が制定している、国際規格のISO 14001や環境省が策定したエコアクション21があります。他にも地方自治体、NPO法人等の策定したものがあり、全国規模のものにはエコステージ、KES・環境マネジメントシステム・スタンダードがあります。

 一般的に認知されている、ISO 14000シリーズとエコアクション21について解説・比較します。

 ISO 14000シリーズは国際標準化機構(ISO)が制定している、環境保全対策の国際統一規格群の総称です。ISO 14000および環境ISOと呼称する時は、主として「要求事項」を定めたISO 14001を指します。エコアクション21は環境省が定めた軽メニューの国内規格です。表2に両規格の対比表を示します。

表2. ISO 14001とエコアクション21の比較

*1)(公財)日本適合性認定協会HP(2020年9月23日確認)
*2)(一財)持続性推進機構HP(2020年9月23日確認)

コラム1
 技術士 経営工学部門の二次試験に「EMSを説明」の問題が主題されました。
 EMSは

  1. 「環境マネジメントシステム」(Environmental Management System)
  2. 「電子機器の受託生産を行うサービス」(electronics manufacturing service)
       の2つがあります。

 

3. 環境関連のスペック

 スペック(製品規格)として今回は化学物質に着目します。例えば水銀(水俣病)、カドミウム(イタイイタイ病)など人体・環境に影響がでない製品・排出物のイメージです。

 3.1 公害からのアプローチ

 環境問題は、しばしば「公害」という概念と重なり合っています。1967年(70年改定)の「公害対策基本法」では、大気汚染、水質汚濁、騒音、悪臭、振動、地盤低下、土壌汚染を典型7公害と呼んでいます。
 環境管理は、国や都道府県が定めた排出基準値(スペック)を如何(いか)に守っていくか、そのための組織や公害防止設備の管理や測定といった公害防止のための管理体制の構築・維持や運営管理活動が主なものでした。

 3.2 新規化学物質からのアプローチ

 日本では1973年に、新しい合成化学物質の安全性確認が極めて重要であることから「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」が制定されました。これはカネミ油症事件(コラム2参照)に端を発しています。
 カネミ油症事件が起きるまでは、人への健康被害の防止は、直接、化学物質と接触して被害を及ぼすような毒劇物の製造・使用等の規制や排ガス・排水に対する規制が行われていました。この事件は、安定で分解しにくい物質が、長期間にわたって人体に残留する時に、じわじわと人の健康に被害を及ぼすことが分かったことで、これまでの化学物質の安全性に対する考え方を覆すものでした。
 化審法は新規化学物質の事前審査制度を、日本が世界に先駆けて導入しました。新規化学物質のうち、難分解性、高濃縮性、長期毒性のあるものを指定し、製造・輸入の規制を行なっています。

コラム2
カネミ油症事件
 1968年、食用油(米ぬか油からとった食用ライスオイル(以下米油)の製造過程で過失があり、含まれているはずのない物質(PCB)が混入し、西日本一帯で、吹き出物、内臓疾患を訴えるいわゆる油症患者が続出した。届け出患者は1万4千人、認定患者は1983年1,824人に上りました。


 3.3 化学物質の管理システム

 化学物質の排出量の把握、化学品の安全性データの表示のルールがあります。「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化学物質排出管理促進法、または単に化管法)」が制定され情報公開をしています。

 化管法は①PRTR(Pollutant Release and Transfer Registerの略で、化学物質排出移動届出制度、環境汚染物質排出移動登録制度などと訳されている)制度と、②SDS(Safety Data Sheet)制度を柱として、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的した法律です。

  3.3.1 PRTR制度

 事業者が、対象化学物質の排出・移動した際には、その量を把握し、国に届ける義務があります。国等は集計データを公表し、また国民は事業者が届け出た内容について開示を請求することが出来ます。

 ここでの事業者はある規模以上の事業者を指します。

  3.3.2 SDS制度

 事業者が、対象化学物質等を他の事業者に譲渡・提供する際には、その情報を提供する義務があります。以前はMSDS(Material Safety Data Sheet)と呼んでいました。

 ILO(国際労働機関)170号条約やISO(ISO11014-1)など国際的な枠組みで整備されています。日本ではJIS Z 7250(ISOと同内容)で標準化されていましたが、JIS Z 7253:2012に移行されました。JIS Z 7253:2012は化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS:Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)に整合しています。

 GHSでは、文字の読めない人にも分かるように「シンボルマーク」でその化学品の何に注意すべきかを示すことになっています(世界共通マーク)。

4. 海外の化学物質規制

 日本と同様に、海外でも化学物質関連の規制があります。

 4.1 RoHS/WEEE

 どちらもEU(欧州連合)の法による環境に関する指令です。
 RoHS: Restriction of the use Of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment(電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する指令(特定6物質の規制から始まり、現在10物質が規制対象)です。

 WEEE: Waste Electrical and Electronic Equipment(廃電気機器指令=廃棄される電子機器による環境破壊に関する指令)

 4.2 REACH*

 欧州連合(EU)が制定した人の健康や環境保護のための、科学物質を管理する欧州議会及び欧州理事会規則です。EU市場内の物質の自由な流通による競争力と技術改革を強化することも目的としています。2007年6月1日に施行されました。登録や法令の告知などは欧州連合が設置した欧州化学物質庁(ECHA)が行っています。

 *REACH(リーチ):  Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemi...

 

1. マネジメントシステム規格とスペック

 かけがえのない地球環境を大切にして、次世代につなげていくのが我々の義務です。また我々の健康を守るためにも、いくつかのルール(規格)を作り、みんなで守ることが必要になってきます。規格は大きくわけて「マネジメントシステム規格」と「スペック(製品規格)」の2種類あります。表1にマネジメントシステム規格とスペック(製品規格)の対比を示します。

表1. マネジメントシステム規格とスペック(製品規格)について

 

2. 環境関連のマネジメント規格

 組織や事業者が、その運営や経営の中で自主的に環境保全に関する取り組みを進めるにあたり、環境に関する方針や目標を自ら設定し、これらの達成に向けて取り組んでいくことを「環境管理」または「環境マネジメント」といいます。

 このための工場や事業所内の体制・手続き等の仕組みを「環境マネジメントシステム」(EMS:Environmental Management System)といいます(コラム1参照)。また、こうした自主的な環境管理の取組状況について、客観的な立場からチェックを行うことを「環境監査」といいます。

 環境マネジメントや環境監査は、事業活動を環境にやさしいものに変えていくために効果的な手法であり、幅広い組織や事業者が積極的に取り組んでいくことが期待されています。

 環境マネジメントシステムには、国際標準化機構(ISO)が制定している、国際規格のISO 14001や環境省が策定したエコアクション21があります。他にも地方自治体、NPO法人等の策定したものがあり、全国規模のものにはエコステージ、KES・環境マネジメントシステム・スタンダードがあります。

 一般的に認知されている、ISO 14000シリーズとエコアクション21について解説・比較します。

 ISO 14000シリーズは国際標準化機構(ISO)が制定している、環境保全対策の国際統一規格群の総称です。ISO 14000および環境ISOと呼称する時は、主として「要求事項」を定めたISO 14001を指します。エコアクション21は環境省が定めた軽メニューの国内規格です。表2に両規格の対比表を示します。

表2. ISO 14001とエコアクション21の比較

*1)(公財)日本適合性認定協会HP(2020年9月23日確認)
*2)(一財)持続性推進機構HP(2020年9月23日確認)

コラム1
 技術士 経営工学部門の二次試験に「EMSを説明」の問題が主題されました。
 EMSは

  1. 「環境マネジメントシステム」(Environmental Management System)
  2. 「電子機器の受託生産を行うサービス」(electronics manufacturing service)
       の2つがあります。

 

3. 環境関連のスペック

 スペック(製品規格)として今回は化学物質に着目します。例えば水銀(水俣病)、カドミウム(イタイイタイ病)など人体・環境に影響がでない製品・排出物のイメージです。

 3.1 公害からのアプローチ

 環境問題は、しばしば「公害」という概念と重なり合っています。1967年(70年改定)の「公害対策基本法」では、大気汚染、水質汚濁、騒音、悪臭、振動、地盤低下、土壌汚染を典型7公害と呼んでいます。
 環境管理は、国や都道府県が定めた排出基準値(スペック)を如何(いか)に守っていくか、そのための組織や公害防止設備の管理や測定といった公害防止のための管理体制の構築・維持や運営管理活動が主なものでした。

 3.2 新規化学物質からのアプローチ

 日本では1973年に、新しい合成化学物質の安全性確認が極めて重要であることから「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」が制定されました。これはカネミ油症事件(コラム2参照)に端を発しています。
 カネミ油症事件が起きるまでは、人への健康被害の防止は、直接、化学物質と接触して被害を及ぼすような毒劇物の製造・使用等の規制や排ガス・排水に対する規制が行われていました。この事件は、安定で分解しにくい物質が、長期間にわたって人体に残留する時に、じわじわと人の健康に被害を及ぼすことが分かったことで、これまでの化学物質の安全性に対する考え方を覆すものでした。
 化審法は新規化学物質の事前審査制度を、日本が世界に先駆けて導入しました。新規化学物質のうち、難分解性、高濃縮性、長期毒性のあるものを指定し、製造・輸入の規制を行なっています。

コラム2
カネミ油症事件
 1968年、食用油(米ぬか油からとった食用ライスオイル(以下米油)の製造過程で過失があり、含まれているはずのない物質(PCB)が混入し、西日本一帯で、吹き出物、内臓疾患を訴えるいわゆる油症患者が続出した。届け出患者は1万4千人、認定患者は1983年1,824人に上りました。


 3.3 化学物質の管理システム

 化学物質の排出量の把握、化学品の安全性データの表示のルールがあります。「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化学物質排出管理促進法、または単に化管法)」が制定され情報公開をしています。

 化管法は①PRTR(Pollutant Release and Transfer Registerの略で、化学物質排出移動届出制度、環境汚染物質排出移動登録制度などと訳されている)制度と、②SDS(Safety Data Sheet)制度を柱として、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的した法律です。

  3.3.1 PRTR制度

 事業者が、対象化学物質の排出・移動した際には、その量を把握し、国に届ける義務があります。国等は集計データを公表し、また国民は事業者が届け出た内容について開示を請求することが出来ます。

 ここでの事業者はある規模以上の事業者を指します。

  3.3.2 SDS制度

 事業者が、対象化学物質等を他の事業者に譲渡・提供する際には、その情報を提供する義務があります。以前はMSDS(Material Safety Data Sheet)と呼んでいました。

 ILO(国際労働機関)170号条約やISO(ISO11014-1)など国際的な枠組みで整備されています。日本ではJIS Z 7250(ISOと同内容)で標準化されていましたが、JIS Z 7253:2012に移行されました。JIS Z 7253:2012は化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS:Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)に整合しています。

 GHSでは、文字の読めない人にも分かるように「シンボルマーク」でその化学品の何に注意すべきかを示すことになっています(世界共通マーク)。

4. 海外の化学物質規制

 日本と同様に、海外でも化学物質関連の規制があります。

 4.1 RoHS/WEEE

 どちらもEU(欧州連合)の法による環境に関する指令です。
 RoHS: Restriction of the use Of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment(電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する指令(特定6物質の規制から始まり、現在10物質が規制対象)です。

 WEEE: Waste Electrical and Electronic Equipment(廃電気機器指令=廃棄される電子機器による環境破壊に関する指令)

 4.2 REACH*

 欧州連合(EU)が制定した人の健康や環境保護のための、科学物質を管理する欧州議会及び欧州理事会規則です。EU市場内の物質の自由な流通による競争力と技術改革を強化することも目的としています。2007年6月1日に施行されました。登録や法令の告知などは欧州連合が設置した欧州化学物質庁(ECHA)が行っています。

 *REACH(リーチ):  Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals(化学物質の登録、評価、認可、及び、制限)

 4.3 その他のルール

 各国・地域においても化学物質の規制に関する法律や化学物質リストが整備されています。
 例えば、中国では中国版RoHS指令(China RoHS)、アメリカではTSCA(アメリカ合衆国環境保護庁・EPA)などです。
 いずれにしても、いろいろな製品を輸出する場合、各国の環境規制にあったものを輸出する必要があります。

5. 法規制上回る基準設置と活動も必要

 環境の「マネジメントシステム規格」は、「任意の取り組み」であることが特色です。しかしながら環境マネジメントシステム規格はその要求事項に、環境を汚さない・悪くしないリスク対応から「環境関連のスペック」である法律順守を強く求められています。また、環境問題への取り組み・対応を納入条件にしている企業もあります。
 今回は環境規格の大まかな説明ですが、労働安全から来ているスペックも労働環境の改善から着目すべき環境規格といえます。
 かけがえのない地球環境と我々の健康を守るため、環境スペック(法律規制)を守ることはもとより、法律規制を上回る環境基準を自ら設定し活動することも必要かと考えます。

【参考資料】
[1]環境省ホームページ
[2] 平成30年度環境カウンセラー研修 共通配布資料-1 環境政策トピック集
   平成30年11月 環境省 特定非営利活動法人 環境カウンセラー全国連合会
[3] 平成30年度環境カウンセラー研修 共通配布資料-2 
   ESDの場で使うファシリテーション技術ミニガイド
   平成30年11月 環境省 特定非営利活動法人 環境カウンセラー全国連合会
[4] エコアクション21ガイドライン 2017年版 2017年4月 環境省
[5] 第5版 大学講義 技術者の倫理 入門 平成29年10月5日 第2刷 丸善出版
[6] 環境と倫理[新版] 加藤尚武 2013年6月25日 新版第7刷 有斐閣
[7](公財)日本適合性認定協会 ホームページ
[8](一財)継続性推進機構ホームページ

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この記事の著者

志澤 達司

「モノの質」「サービスの質」「仕事の質」3つの質の向上を目指して、元気のある組織・会社作りのお手伝いをしたいと考えます。

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