TOC(制約理論)とSCM(サプライチェーンマネジメント)

 米国のSCMソフトベンダーの多くは、そのソフトウェアの理論としてE・ゴールドラット氏が唱えたTOC(制約理論)を上げています。ところが彼の著作を読んでも、私の知っている限りサプライチェーンという用語は出てきません。

 私の著作「サプライチェーンマネジメント」で引用した小説「ザ・ゴール」は、工場内での工程改善の話であり、生産・流通・販売全体のサプライチェーンの話ではありません。私自身も当初の印象はそうでしたが、工場内の改革とSCMを同一化できたのは、複雑系の視点に立ってからでした。拙著で述べたように、複雑系メタファーのシンプルなモデルにすると、工場内の生産オペレーションをつなぐ工場内の物流も、工場から最終顧客までの流通オペレーションである輸送、梱包、コンテナ化、小口梱包化、販売といった各オペレーションをつなぐロジスティクスも、オペレーション間を同期連携して在庫を最小にし、流れのスピードを上げる考えは全く同じです。

 以前にも「ジャストインタイムはロジスティクスである」と述べたように、SCMは工場の中も外も、又企業の中も外も通してマネジメントする必要性から生まれた概念であるといえるのです。

 少し傲慢に聞こえるかもしれませんが、小生が著作のなかで「ザ・ゴール」を引用しながらも、複雑系を導入してSCMの本質を自分の言葉で語ったつもりです。多くの読者からの反応はその意図を組んで頂いたと思っていますが、「TOCの解説書」との意見も幾つか見られました。それはそれで一つの視点ですが、TOCが海外からやって来て、日本人が始めてみる蒸気船である黒船と見るには異論があります。

 TOCが日本の製造企業評価のピークに生まれ、カイゼンの英訳である...

On-going improvementがサブタイトルに使われていること、更に言えばTOCが1980年代の米国での流行の経営用語であったTQCをもじったマーケテイング用語といううがった見方も出来ます。いずれにせよTOCは、日本人が現場で実行していても理論化できないダイナミックスを、SCMの理解に貢献できるのではないかと思うものです。
◆関連解説『生産マネジメントとは』

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