「KPI」と「KGI」 データ分析講座(その30)

◆ 営業やマーケティング担当者が、OODAループでモニタリングする指標(KPIなど)は絞る

 指標(KPIなど)が1つ2つであれな問題ないのですが、指標(KPIなど)の数は少なくとも10から20程度、多くて100から200程度にはなります。「そんなにたくさんの指標(KPIなど)を設計できない」と思う方もいるかもしれませんが、指標(KPIなど)設計をしていると、意外と増えていきます。しかし、すべての指標(KPIなど)をすべての人がモニタリングする必要はないし、そもそもすべての指標(KPIなど)は見きれません。

 問題は、指標(KPIなど)の数ではありません。問題は、どの指標を最重要視しモニタリングしていくのか、ということです。部署や役割に応じて、どの指標を主にモニタリングすべきかを考え、そして指標(KPIなど)を絞るのです。今回は本題に入る前に、ビジネスの世界でメジャー指標の概念である「KPI」と「KGI」のお話しから始めます。

1.ビジネス指標と言えば、「KPI」と「KGI」

(1) 有名な指標であるKPI

 ビジネスで使う指標と聞くと、KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)を思い浮かべる人も多いことでしょう。

 KPIとは、PI(Performance Indicator、業績評価指標)の中で重要(Key)なPIを意味します。要するに、たくさんのPIの中で重視するPIをKPIと呼んでいます。PIとは、パフォーマンス(Performance)のインディケーター(Indicator)です。何のパフォーマンスかというと、施策などのアクションのパフォーマンスのインディケーターです。このインディケーターを日本語で「指標」と訳します。インディケーター(Indicator)と似たような言葉に、インデックス(Index)というのがあります。インデックス(Index)も「指標」と訳されます。
 
 違いは何でしょうか。違いは、蓄積したデータから直接計算して求めた「指標」をインディケーター(Indicator)と言い、複数のインディケーター(Indicator)から計算して求めた「指標」をインデックス(Index)と言います。有名な景気動向指数という「指標」はインデックス(Index)です。少なくとも、施策などのアクションのパフォーマンスを計測するものでないとKPIとは言えません。例えば、降水量や景気動向指数をKPIとして設定できる企業はないでしょう。

(2) KPIと似ているKGIという指標

 KPIと似ている指標に、KGI(Key Goal Indicator、重要目標達成指標)という指標があります。名称から想像がつくとは思いますが、目標の達成状況を計測する指標の中で、重要な指標を指します。KPIとKGIは違うように思うかもしれませんが、KGIは「目標KPI」とも呼ばれ、ほぼKPIと同じものです。KPIとKGIは、相対的なものでしかありません。

 例えば、法人マーケティング部署であれば「見込み客のリスト件数」がKGIとなり、営業の部署であれば「売上高」がKGIとなり、購買の部署であれば「原価率」がKGIとなり、人事の部署であれば「離職率」がKGIとなり、部署やその目的に応じてKGIは変わります。そして、法人マーケティング部署と一緒に「見込み客のリスト件数」を増やそうと動いた営業の部署から見れば、「見込み客のリスト件数」はKGIというよりもKPIです。

 要するに、どの部署の立場で議論をするのかで、同じ指標であっても、KGIがKPIになったり、KPIがKGIになったりとややこしいことになります。なので、ここではKPIもKGIもひっくるめて「指標」という用語で統一します。では、ここから本題に入ります。

2. モニタリングする指標(KPIなど)は絞る

(1) 問題は、どの指標(KPIなど)を最重視しモニタリングするのか

 実務的には「どの指標をモニタリングするのか」は、大きな問題です。すべての指標(KPIなど)を見切れないので、部署や担当者に応じて変えていく必要があります。例えば、「引合件数」(見込み顧客のリスト件数)を増やすミッションを帯びた法人マーケティングの部署の担当者。

 ぱっと思い浮かぶ指標(KPIなど)だけでも次のように色々あります。

 営業利益、固定費、限界利益、限界利益率、売上高、受注単価、受注件数、提案後受注率、提案件数、訪問後提案率、訪問件数、引合後訪問率、引合件数

 ちなみに、今あげた指標(KPIなど)は、単に「引合→訪問→提案→受注」という営業プロセスをベースに考えただけです。

 法人マーケティングの部署の担当者は、どの指標(KPIなど)をモニタリングすればよいのでしょうか。おそらく、「引合件数」と「引合後訪問率」、「限界利益」ぐらいでよいでしょう。
さらに、コストとして「単位販促費(マーケ部門)」を追加してもよいでしょう。「単位販促費(マーケ部門)」とは、引き合いのある見込み顧客を増やすために使った展示会などへの出展コストなどです。

 簡単に説明します。

 どのような指標(KPIなど)をモニタリングするのかは、企業や部署によって大きく変わります。この例であげた、法人マーケティングの部署の担当者がモニタリングしたほうがよい指標は、そのまま他の企業で使えるわけではありません。あくまでも一例です。できれば、部署の担当者ならではの指標(KPIなど)に再設計。

 先ほどの例で説明します。

 先ほどの例では、法人マーケティングの部署の担当者は、例えば「引合件数」と「訪問率」、「限界利益」、「単位販促費(マーケ部門)」の指標(KPIなど)をモニタリングするとよいと言いました。できれば、「引合件数」と「単位...

販促費(マーケ部門)」、「訪問率」、「限界利益」をもとに、法人マーケティングの部署の担当者ならではの指標に設計し直すとよいでしょう。例えば、「限界利益」を「引合1件あたりの獲得単価」へ、「単位販促費(マーケ部門)」を「引合1件あたりの限界利益」へと再設計します。「引合1件あたりの限界利益」から、法人マーケティング担当者の収益の貢献具合(どれだけ効率的に収益を発生させたのか)が分かります。さらに、「引合1件あたりの獲得費用」と比較することで費用対効果の良し悪しも見えてきます

(2) 指標を絞らずに、モニタリングさせたらどうなるのか

 この「引合件数」を増やすミッションを帯びたマーケティング部署の担当者に、指標を絞らずにモニタリングさせたらどうなるでしょうか。恐らく、見るべき指標が多すぎて消化不良になり、そして指標を見ること自体が面倒になり、そのうち指標をあまり見なくなるでしょう。指標を見たとしても、毎日ではなく毎月や四半期に1回など、上司などに報告する必要があるときに、振り返るために見るぐらいになるでしょう。

 要するに、日々の業務の中では、限られた指標のみをモニタリングしたほうがよいのです。そうしないと、どんなに素晴らしい指標を設計したとしても、そのうち活用されなくなります。ビジネス成果を大きく生むことなく、残念な結果になってしまうことでしょう。

 次回は、目的変数、説明変数について解説します。

 

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