R-Map:見えない危険の不安

 『安全な物は見えない』という名言があります。人は製品が安全であるが故に、意識することなく使うことができるということを表現した言葉です。言い替えてみれば、安全なものでも、ある時いきなり豹変して危険なものになります。危険な現象(ハザード)はその製品ごとに様々ですが、割れて尖る、ショートして発煙発火する、剥離して落下する、などの危険な現象が起きて、初めてそこにその物の存在が見えることになっては遅いのです。

 飲み過ぎ食べ過ぎで胃が痛い時に、「ああ、ここに胃があるんだ」と腹に手を当てた経験を誰しもお持ちでしょう。胃痛を味あわないようにするには、適量の飲食と日々の適度な運動が必須であるのと同じように、日常生活で安全を楽しむには、製品の機能を理解した使い方とお手入れ点検が必須です。製品は工場出荷時が最良の状態で製造され、出荷以降は使う程度に応じて、少しずつ不具合が起きる可能性が高くなります。例え倉庫に在っても経年劣化は進行します。

 製品の故障率は、故障曲線(バスタブカーブ)で表され、使用初期の初期故障期、使用に馴染んだ時の偶発故障期、使用末期の磨耗故障期の三期に分けられます。その発生頻度が丁度、バスタブの底のようにU字の形状を示すのです。これらの三期を通じて不具合の未然防止をし、事故になるのを防ぐ方法がお手入れ点検です。日本工業規格(JIS)のほとんどには、点検を使用者に要請する一文が入っています。1995年PL法の施行以来、メーカーのPL責任と同時に使用者にも自己責任があることが言われてきましたが、まだまだではないでしょうか。自己責任を果たし安全を楽しむために、ちょっとした配慮をしただけで大事を防ぐことが可能です。100円ライターの事故を防ぐには子どもの手の届かない場所に保管すれば良いし、それ以前に子どもの目の前で着火しない配慮が最善です。

 見えないけれど危険というハザードは残念ながらかなり沢山あります。携帯電話や高圧送電線の電磁波、風力発電の風車が出す低周波、航空機や工事現場の強音圧、強い臭い、彩度が高い色を塗られた大きな構築物などなど、公害と言われてきたハザードを身の回りで探すのに苦労しません。そのひとつである放射能が最近の話題です。見えないからこそ人は恐怖を感じます。何故ならば、世の中の事物の安全は、人が生まれて以来、この目で見て判断してきた経験を否定されるという不安です。地震の恐怖も同じ原因からくることでしょう。大地は人がその上で生まれてから磐石の安定したものとインプットされてきましたが、その大地が揺れ動くという異様な現象に恐怖を感じるのです。心理学でいうアンビバランスの心理になるのです。このように人は経験則に拘束されて生きているものです。乗り物の揺れをガルの数値だけで捉えれば、揺れが体に与える衝撃は地震の比ではありませんが、特段に恐怖を感じることはありません。乗り物に乗っているという現実を、心と体が理解しているからですが、この理解が統制されていない人が心と体のアンビバランスとなり、乗り物酔いを起すのです。以上はひとつの事象も見方を変えると別の結論を導きだせるという例ですが、製品を使用する場面においても同様の状況が現われます。

 メーカーが意図した使い方以外は誤使用と呼ばれますが、果たして、安全対策上、有益な呼び方でしょうか。誤使用情報を有益に転化するには、いわゆる誤使用を3段階に分けてみるべきです。

メーカーは意図しなかったがこの方が優れて使い易いという「異使用」、使用者にも製品にも良くない「誤使用」、何でこんなことをするの、という「不思議使用」とする分類案です。特に異使用は、設計者がデスクの上で考えた以外の製品情報として、収集、分析してこれからの製品改良に生かしてゆく度量が企業に欲しいと思っています。見方を変えてみれば交通信号でさえ逆の結論を得られます。赤信号が安全、青信号が危険という考え方があります。赤信号であれば車はすべて止まっている。止まっている車は事故を起さない。事故を起す車は走っている車であるから青信号は危険という考え方です。

右図の安全性と利便性の相関図、参照下さい。 


この記事の著者

村田 一郎

R-MapⓇで、企業の存亡を左右するリスクマネジメントを診断し、安全を安価に安定してコンサルします。

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