文の書き方を考える

1. 肯定文を書く

【事例1】

 以下の文を読んでください。
 
①:田中さんが作ったカレーと高橋さんが作ったカレーの味は同じではない。
②:田中さんが作ったカレーと高橋さんが作ったカレーの味は違う。
 
③:この問題を解けたのは山田君以外にいなかった。
④:この問題を解けたのは山田君だけだった。
 
 肯定文で書いた②および④の文のほうが、否定文で書いた①および③の文に比べて内容が明確に伝わります。否定文はひねった内容のように読み取れます。
 

【事例2】

 以下の文を読んでください。
 
⑤:日々のオンザジョブトレーニング注)を実践しなければ内容が明確に伝わる文が書けるようにはなれない。
 
 *否定文で書くと気持ちが重くなるような気がします。「内容が明確に伝わる文が書けるようになるためには、日々のオンザジョブトレーニングをやらないとダメなのか・・・」という気分です。
 
⑥:日々のオンザジョブトレーニング注)を実践すれば内容が明確に伝わる文が書けるようになる。
 
 *肯定文で書くと気持ちが軽くなるような気がします。「日々のオンザジョブトレーニングをやれば、内容が明確に伝わる文が書けるようになるのか。日々のオンザジョブトレーニングをやってみよう・・・」という気分です。
 
注):日々のオンザジョブトレーニングとは、“わかりやすい文書の書き方”を使って仕事で書く様々な文書を日々書くことです。
 
 ⑤の文のように、否定文で書くと内容が後ろ向きに伝わります。しかし、⑥の文のように、肯定文で書くと内容が前向きに伝わります。その結果、⑥の文のほうが内容が明確に伝わります。
 
 
 

【事例3】

 以下の文を読んでください。
 
⑦:試験の終了まで3分しか残っていない。
⑧:試験の終了まで3分ある。
 
 ⑦の文のように「試験の終了まで3分しか残っていない」と否定文で書くとこの文から“精神的な焦り(後ろ向き)”を感じます。しかし、⑧の文のように「試験終了まで3分ある」と肯定文で書くとこの文から“精神的な余裕(前向き)”を感じます。その結果、⑧の文のほうが内容が明確に伝わります。
 
 事例1~事例3からわかるように、肯定文で書くと内容が明確に伝わります。このことから、文を書くときには肯定文で書くように心掛けてください。
 

2. 同じ内容でも表現を変えて書くと読んだときの受け取り方が異なる 

【事例4】

 以下の文を読んでください。
 
⑨:今後のため、月々の給料の20%を貯金しなさい。
⑩:今後のため、月々の給料の80%で生活しなさい。
 
 これらの文は同じ内容です。⑨の文のように「20%を貯金しなさい」と書いてあると「できるかなあ?」と思います。しかし、⑩の文のように「80%で生活しなさい」と書いてあるとできそうな気がします。
 
  
 

【事例5】

 以前、ある食料品の袋に以下のような宣伝文が書いてありました。
 
⑪:カロリーは従来品の10%です。
 
 それがあるときから以下のように変わりました。
 
⑫:カロリーを従来品の90%までカットしました。
 
 これらの文は同じ内容です。しかし、⑫の文のように「90%までカットしました」と書いてあるほうが健康に良いイメージがあり...
ます。⑪の宣伝文で書かれた商品と⑫の宣伝文で書かれた商品が同じ場所に並べてあったら⑫の宣伝文で書かれた商品を買うと思います。人間の心理を上手に利用した宣伝文です。
 
 事例4と事例5からわかるように、同じ内容でも表現を変えて書くと文を読んだときの受け取り方が異なります。
 
 「⑩や⑫のような文を常に書きなさい」ということではありません。しかし、⑩や⑫のような文で書いてあったほうが内容が明確に伝わります。⑩や⑫の文では、これらの文を読んだときにプラスの印象を持つからです。
 
 「同じ内容でも表現を変えて書くと文を読んだときの受け取り方が異なる」ということを認識したうえで文を書いてください。
 
【参考文献】
森谷仁著、「技術者のためのわかりやすい文書の書き方」、オーム社、平成27年3月20日
 

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