位置商標の登録に向けた部分意匠登録

 以前に日本商標協会のブランドマネジメント委員会で、「新しいタイプの商標と意匠登録とのコラボ」というテーマで発表する機会を与えられ、「位置商標」の出願と、それに対応する意匠登録を調べてみました。出願された位置商標に対応すると思われる意匠登録が存在するものは、位置商標の出願100件以上に対してわずかに数件でした。そして、位置商標に対応する「位置」を対象とした登録部分意匠は1件のみでした。他の事例においては、部分意匠の範囲が位置商標の範囲よりも広かったり、対象となる位置が異なっていたり、という状況で、部分意匠と位置商標とにずれがありました。
 
  *「位置商標」とは、色彩等を商品等に付す位置が特定される商標のことです。
 
 商品の形状の一部について位置商標の登録を受けるためには、「形状の一部」が識別力を持たなければならない。商標法3条2項の適用を受けて登録されることになります。この点に関し、立体商標についての判決では、長年に亘る使用、独占的な使用などが識別力獲得の資料として重視されています。
 
 この点から考えると、位置商標についても同様の観点で判断されるものと思われます。なお、立体商標においては不正競争防止法2条1項1号での商品形態の商品表示性の考え方をそのままトレースできましたが、「部分」についての裁判例はおそらくないので、「全体の形態」と「部分の形態」との違いをどう考えるのかは不明です。
 
 「意匠と商標のボタンのかけ違い」ということでしょうか、裁判所が重視する「独占的に使用」という状況を作り出す手段が意匠登録です。意匠登録がなければ「独占的に使用」という状況を長期間維持することは困難です。
  

【検討課題】

 
 意匠保護制度と商標保護制度とは、保護の観点は異なるものの、部分意匠はブランド形成の力になるということは、部分意匠制度の制定時から意識されていたのではないでしょうか。それなのに、対応する意匠登録がほとんどない、という事情をどう理解したらよいのか。少し困惑しています。考えられる理由は、大まかに言うと次のようなところではないでしょうか。
 
(1) 位置商標で対象としている形態は、意匠としては新規性がないなど、登録困難と判断された。
(2) 意匠の開発時は重視していなかった形態が、市場において評価されていることに気...
がついた。
(3) 意匠登録には関心がなかった。
 
上記(1)(2)の場合は、位置商標で対象としている形態そのものでないとしても、その形態を含む部分意匠が出願されているはずです。しかし、位置商標に対応する部分意匠の登録がほとんどないことから見ると、ほとんどが(3)だったのではないでしょうか。多くの企業に、「意匠」への関心を深めていただきたいと考える次第です。
 
◆関連解説『技術マネジメントとは』

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