ものづくり工場の日常管理のしくみ(その4)

◆報連相を定着させるには(製造業の工場品質改善の進め方・事例の解説)

 
 強い組織作りに欠かせない「報・連・相」について解説します。
◆関連解説『生産マネジメントとは』
 

1.無駄な会議

 
 中国工場で、よく現地スタッフを交えた会議に参加することがありました。会議の目的は部署間にまたがる課題の解決、情報交換等ですが、工場の場合、「生産会議」「品質会議」などの名目で行われています。ただ、この会議が、必ずしもうまくいっているとは言えません。
 
 前回会議で決められたことをキッチリやり切っていないのです。言い訳はいろいろ言いますが、上司も「次はちゃんと頼むぞ」とか「まぁ、忙しかったんだからしょうがないな」と言って済ましてしまう。会議が終わって、何か物足りない、2時間も無駄な時間を過ごしたと感じてしまうのです。
 

2.「ホウレンソウ」は難しい

 
 会議でも、工場の日常の仕事の中でも、上司が個々の人達に仕事を割り振ったとき、割り振った人間がみな好き勝手に動き、しかも何を考えているのかわからない。このような状況では、仕事を取りまとめる方もまともに取りまとめることができません。
 
 部下から情報収集し、上司が状況判断し、次の一手を正確に打つという「PDCA」サイクルの中で「報・連・相」は重要な役割を果たします。最近は、どの会社でも「報・連・相」の徹底が叫ばれています。しかし上司が部下に対して「報・連・相」とお経のように唱えるだけでは、徹底することはできません。
 

3.明確なノルマを与えること

 
 「報・連・相」が徹底しない。それはなぜでしょうか、会議や、日常の業務の中で、上司が明確な指示を与えていないからです。問題点・課題に対して、解決のための明確なノルマ(いつまでに、何を、どのレベルまで)をはっきりさせないまま仕事をさせているのです。明確なノルマが曖昧のままであった時、個人は考えなくなり達成のための努力や、創意工夫をしなくなり、当然のことながら「報・連・相」は少なく、お互い何を考えているのかよく分からない「腹の探りあい組織」へと変貌していきます。
 
 特に海外では、ノルマが与えられたとき、達成できないのを、他の組織、他人のせいにして言い訳の世界に入り込んでしまうことが多く、例え主任や課長であっても、自分の受け持ち範囲外の仕事、グレーゾーンの仕事の問題までは立ち入らないことが多い傾向にあります。
 

4.ノルマの与え方

 
 「いつまでに」「何を」「どこまで」を明確にすることです。期限を必ず設定すること、そして何よりも大事なのは、何をどのレベルまで達成させるかです。だれがどう考えてもできない目標値を設定してはいけません。
 
 「1ヶ月以内に不良をゼロにする」というのが現状から見て難しい場合、「全ロット100%検査を実施する」というように、「結果」よりも、「手段」をノルマに設定します。そして「期限とノルマ」は「絶対」に守らせることが重要で、言い訳や、「できる範囲でやりました」的な曖昧な内容ですませてはダメです。
 

5、ホウレンソウが徹底されるには

 
 期限がきた時点で、「そこまではやってません」といった、「全然やってないわけではないものの、私なりの努力で、できる範囲では実行しております」的な曖昧な内容で済ませてしまう場合が非常に多い。課題を解決するために、ゴールから逆算した考え方がない。未達成で終わるリスクを回避しようという気持ちなど、サラサラない。ここが問題ということを上司は認識すべきです。
 
 上司は、部下にノルマを与え、絶対に100%達成させるように厳しく接する。これは上司自身も自分のノルマに対する考え方、行動に基づいていなければなりません。「期限とノルマ」を「絶対」にすることにより、部下がとる行動は2つに限定されます。1つ目は、自分で「考えて」やり切る。2つ目は、自分で考えて...
も無理な場合のとき、上司や同僚などに「相談」してやり切る。そこではじめて、ホウレンソウの必要性が生まれる。
 
 個人ではどうにも知恵が降りてこない時になって初めて、組織の力を利用しようとする行動が生まれ、部下は育ち、組織は強くなります。目標設定する場合、必ず「期限とノルマ」を設定する。そしてその「期限とノルマ」は「絶対」に守らせることが重要なのです。
 
 「PDCA」「ホウレンソウ」は頭の中では判っていても、自らの仕事の中で実践すること、つまり工場の仕組みの中にどのように落とし込むのかを模索し、そして部下を教育している人は少ないのです。
 
 次回、その5では、信賞必罰制度について解説します。
 
 

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