中小製造業の組織設計の考え方(その1)

 企業の活動に欠かせない「固有技術」「人」「管理のしくみ」「組織」など、ソフトな経営資源は中小企業に於いても重要な役割を担っています。しかしながら、業務改革が進まない、品質トラブルが絶えないという企業では、「組織」としての問題解決能力が不足している場合も多いと考えられます。
◆関連解説『組織戦略とは』

1.個人商店経営から、組織経営へ

 
 個人商店から、一人前の企業へ脱皮するには、組織の力を生かした仕事のやり方に変えて行かなければなりませんが、以下のような企業は、組織力による仕事ができていないといっていいでしょう。
 
 ・社長が直接社員へ指示を出したり、報告を受けたりして、中間の課長部長にはその内容は知らされない。
 ・ミスが起きると、個人が責められ、組織の責任は問わない。
 ・役割が分からない肩書の社員がたくさんいる(次長、工場長代理)。
 ・ライン組織に、課長1人、係長1人、担当1人などの組織が存在する。
 ・業務が特定の人に集中している。
 ・担当者が退職すると、引き継いだ人はまったくその業務内容が分からない。
 
 では、組織で仕事をするとはどういうことなのか? 組織力を高めるとはどういうことなのか?また、組織として日常業務においてどのような活動をしなければならないのか?
などを考えてみましょう。
 

2.権限移譲の考え方

 
 オーナーとして、会社を大きくしてきた社長ですが、規模が大きくなり自分一人で頑張る限界を感じる時がいずれやって来ます。社長が取り組むべき行動の一つは「会議に出ない」ということ。それまでは、全ての業務領域、すべての階層の会議に出て、しっかりと指示を出し、管理をしていました。しかし、それではいつまで経っても社員の「社長頼み」の受け身の態度は変らないでしょう。
 
 社長+社員という二階層の組織体制を、社長+(部長)+課長+社員という三階層、あるいは四階層とし、部長、課長たちに自分で考えて判断するように求めます。つまり、営業、品質管理、生産管理など機能ごとの業務内容と責任者を決めることと、部長・課長に業務の権限移譲を行い、社長は全体の指揮官として、中長期的な方針を打ち立て会社の方向性をどうするか?考えることに注力します。
 
 しかしこの「権限移譲」の作業は困難を伴います。社長はいつまでも「エースで4番」を辞めたくないからです。「組織力で勝つ」考えより「一人のカリスマで勝つ」方向に行ってしまいがちですが、一人で頑張ることの限界はやがてやって来ます。社長依存から脱皮するためには、社長、社員双方の意識改革が必要であり、この難しさに正面から向き合って乗り越えなければなりません。
 
 分かってはいるが、そんな事ができる能力を持った人がいないので・・・と悩まれる社長さんも多いと思います。しかし、社員も失敗や成功体験を積むことによって、どんどん成長し、そのことによって明らかに組織力はアップします。
 
 ①人を育てること、②組織をどう構成するか、そして③業務の仕組みを構築すること、この三つのことを考え、組織経営に切り替えて行くのが社長の仕事なのです。
 

3.マネジメント階層の役割

 
 組織は、ただ人に肩書を与える目的で作ってはいけません。経営層、部長・課長、係長・主任とそれぞれ役割が決まっています。各マネジメント層に応じて、それぞれの役割、権限を明確にしておく必要があります。図1のように、組織も、部、課、係と明確にその役割を「組織権限規定」「業務分掌」で決めておきます。
 
       
                   図1.マネジメントの3階層の役割
 
 営業、生産など業務の分担を明確にすると同時に、マネジメント階層の役割を明確にし、...
権限移譲型の組織を作っていくことが大事な事なのです。アメリカの経営学者チャンドラーは「組織は戦略に従う」と提唱しました。一方、同じく経営学者のアンゾフは、チャンドラーとは全く反対の「戦略は組織に従う」という説を示しました。つまりトップの戦略と、組織とは密接に関係していることを示しています。
 
 しかし、中小企業においては、人材には限りがあるため、「戦略は組織に従う(制約を受ける)」ことになります。そのために、先を見越して、マネジメント人材の育成を日ごろから意識して考えておく必要があるのです。
 
 次回、中小製造業の組織設計の考え方(その2)では、組織形態の種類と特徴から解説します。
 
 

↓ 続きを読むには・・・

新規会員登録


この記事の著者