OJTでは、教える側に対する教育が大切 効果的な教育研修の進め方(その2)

 OJT(On the Job Training)とは、仕事を通じて社員の能力開発を図るものですから、人材育成の中で、最も大切であり効果をあげやすいものです。OJTは、もっぱら新入社員や異なる職種から異動してきた知識や経験が少ない社員に対し、職場の上司や先輩が具体的な仕事を与えながら、必要な知識・技能を、計画的・継続的に指導し習得させることを目的としています。つまりどの会社であっても、OJTだけは実施していると言っても過言ではありません。

 ただし、OJTの効果が出ているかどうかは、企業の取り組み方によって大きな差があります。つまり、本質的な意味での効果的な教育となっており、部下の遂行能力が高まっている場合と、単純に部下に仕事を与えているだけで、全く教育になっていない場合があるのです。

 そのOJTの効果的な進め方はどこにあるのかを知るには、その本質について理解することが一番です。OJTの始まりは、第一次世界大戦によって、当時の作業員の10倍の補充が必要となった時に、新人を効果的に育成するための訓練プログラム作成責任者に任命されたチャールズ・R・アレン氏が開発した4段階職業指導法(やってみせる→説明する→やらせてみる→補修指導)であると言われています。アレン氏の4段階職業指導法とは、おおむね下記のようなステップで実施します。

 

1.新人を配置

 安全に配慮すること。彼らが仕事に関し、事前に何かを知っているかどうかを調べること。彼らに学習に対する興味を持たせること。適切な持ち場を与えること。

 

2.作業をして見せる

 注意深く、根気よく、説明し、見せ、図示し、そして質問する。キーポイントを強調すること。一度に1点ずつ、はっきりと、完全に教えること、しかし、彼らがマスターできる限度を超えてはいけない。

 

3.効果を確認する

 彼ら自身に仕事をやらせてみる。実際に説明させながらやらせること、キーポイントを説明させて示させてみること。質問し、正解をたずねること。彼らが理解したと判断できるまで、続けること。

 

4.フォローする

 彼らに、彼ら自身が必要なときにだれに質問したらよいかの相手を判断させる。頻繁にチェックすること。積極的に質問するよう促すこと。彼ら自身に、その進歩に応じたキーポイントを見つけさせること。特別指導や直接のフォローアップを段々減らしていくこと。

 

 いかがでしょうか?この4つのステップを理解するだけで十分でしょう。そして、この4つのステップを効果的に実施するために、最も大切なことは、教えるべきスキル・技能・知識を明確にドキュメントで示すことです。つまり、OJTの最大ポイントは、現在自部門で行われている業務にどのようなものがあり、それを遂行するために、どのような知識や技能、あるいは心構えが必要なのか、しっかりとした業務遂行マニュアルやスキルマップを作成することです。

 工場などの生産現場だけでなく、営業部門、開発部門であっても同じです。これらのドキュメントは、いわゆる職能要件書やコンピテンシー評価と言われるものではありません。あくまでもその業務を遂行するために、必要な要素を課業から作業レベルで落とし込んだものです。OJT...

といっても、具体的に何を教えるのかがはっきりしなければ、何も始まりません。

 また、OJTを効果的に推進するならば、教える側の社員をOJTリーダーとして任命し、責任権限と報酬を与え、部下や後輩と円滑なコミュニケーションができるようコーチングスキルなどを身につけさせることでしょう。そのためにOJTリーダーとして部下との関わり方を学ぶような教育研修を実施することも重要になってきます。

 そういう意味では、OJTリーダーに任命するか否かに関わらず、入社2~3年目の社員全員を対象とする階層別研修で、このようなスキルを身につけるようなセッションを設定することも有効です。つまり、前回ご説明した教育体系との連動させることになります。このようにOJTでは、教える側に対する教育が大切になります。

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