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QUESTION 質問No.575

リチウム一次電池の電圧復活について

全体/その他 |投稿日時:
実は弊社製品のリモコンに使用しているリチウムイオン一次電池(CR2025)が、約1年間保管したところ(夏は40℃~冬は5℃程度の倉庫温度)1.2V程度まで電圧が低下しました、ところが100Ω抵抗を繋いで30SEC程度放電させると2.9V程度まで電圧が戻り、その後も0℃の環境下で約300時間経過後も電圧が安定しています。
電池メーカー(中国メーカー)からはSEI膜形成が原因との見解を貰いました。
リチウム一次電池で1年程度の保管でSEI膜が厚くなる事が有るので
しょうか?また放電させることによってSEI膜が薄くなるのでしょうか?
この状態はどの程度の期間、維持できるのでしょうか?これらの現象が理論的に有り得る事なのでしょうか?
素人の為、見当違いの質問であれば申し訳無いのですが、宜しければどなたかご教授願いたいです。


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ANSWER
回答No1 | 投稿日時:

リチウム一次電池の電圧復活のしくみ

 リチウム一次電池の電圧復活の原因に対する中国メーカーの見解には誤りがあるように思われます。
本件で示された1.2Vは放電する前の起電力であるとして議論をすすめます。また、2.9Vあった起電力が1.2Vまで下がり、100Ωで放電処理したら、起電力が2.9Vまで回復したという前提での議論になります。
通常SEI膜が電極表面に形成されると電池の内部抵抗が大きくなり放電した時に電池の端子電圧は低下します。電池のSEI膜は一般には除去できないので端子電圧は低いままで回復することはありません。リチウムイオン電池の場合、LiF、Li2CO3などがSEI被膜の主成分だと考えられますが、リチウム電池の場合何がSEI被膜を形成するのか不明です。
 ご承知のとおり、電池の起電力は正極と負極に使う電極材料のイオン化傾向の差で決ります。教科書にある最も基本的なダニエル電池の場合、正極材料であるCuの標準酸化還元電位はE0=0.337V、負極材料であるZnの標準酸化還元電位はE0=-0.763Vであるためダニエル電池の標準起電力は次式のように1.1Vになります。
E0=E0(正極還元反応)-E0(負極酸化反応)
=0.337-(-0.763)=1.100V 
ネルンストの式より、ダニエル電池の起電力は次式で与えられます。
起電力
E= 標準起電力-濃度項
=E 0 Cu/Cu2+- E 0 Zn/Zn2+ - (RT/nF)ln([Zn2+]/[Cu2+]]
      標準起電力           濃度項
起電力は標準起電力から濃度項分(一般に数十mV)だけ縮小します。
リチウム電池の正極と負極における酸化還元反応は次式で示されます。

(1)Li―→(Li+)+e-(2)Mn(Ⅳ)O2+(Li+)+e―→(Li+)Mn(Ⅲ)O2 
 
 負極には一般にシート状リチウム金属が使用され、その電極反応は Li―→(Li+)+e- です。一方、正極には二酸化マンガンMnO2が使用され、その反応式はMn(Ⅳ)O2+(Li+)+e―→(Li+)Mn(Ⅲ)O2 となります。正極反応はMn(Ⅳ)O2へLi+イオンが挿入される反応で、Mnは4価から3価に還元されます。
 質問者によると、リモコンに装着されたリチウム電池(CR2025)は一定期間使用され、約1年間保管した後、起電力が1.2Vまで低下。しかし、100Ωの抵抗を接続して、30秒間放電したところ2.9Vまで回復したという。原因として何が考えられるのか推察しました。
 リモコンのスイッチを入れて電子機器が動作する定常時には、、Li電極からリチウムイオンが電解質に溶けだし、残された電子は回路を通って二酸化Mn電極に移動します。同時にリチウムイオンは酸化Mn電極に到達して二酸化Mnに挿入されます。ここでリチウムイオンの平均移動速度は電子の平均移動速度よりはるかに遅く、電池の動作はリチウムイオンの平均移動速度に律速されます。
 今回は、リチウム電極から電解質に溶けだした大量のリチウムイオンが、Mn電極に到達して挿入される前に、たまたまリモコンのスイッチが切られ、リチウムイオンがLi電極と電解質の界面に残り、蓄積したものと推測されます。一方、リチウムイオンが電解質に溶け出す瞬間に発生する電子も相当数その場に残り、Li電極近傍に電気二重層が形成されたものと予想されます。Li電極に残った電子は1年間に一部が放電し、リチウムイオンの一部も濃度勾配で拡散した可能性があります。
 要するに電極での酸化還元反応が、電源OFFとその後の約1年間のリモコンの動作停止によって不平衡状態になり、過渡的にネルンストの法則⊿=-nFEが成立しなくなったことが、2.9Vから1.2Vまで電圧が低下したものの通電によって電圧が復活した原因だと考えられます。
 本見解はPtなどの分極性生体電極の動作からヒントを得た仮説の一つであり、検証が必要です。図解した電極反応は、回答欄に表記できませんでした。検証の前に現象の詳細についてヒアリングを希望します。
 鉛蓄電池の場合、充放電の繰り返しや長期間の放置により電極表面上の硫酸鉛(PbSO4)が結晶化(非電導性結晶被膜)して電解液に戻らなくなります。これにより鉛蓄電池の内部抵抗が大きくなり、やがて寿命がきます。しかし、この結晶化した硬質の硫酸鉛に高電圧パルスを加えると結晶が壊れで寿命がきた鉛電池が約80%まで再生しました。鉛蓄電池の場合、結晶性硫酸鉛(PbSO4)をSEI被膜と呼びます。鉛蓄電池の電極反応は次のとおりです。

表1 電極表面に付着して結晶化したPbSO4が鉛蓄電池におけるSEI被膜

 正極反応
 PbO2 + 4H+ + SO4- - + 2e-  放電→  PbSO4 + 2H2O
                 ←充電 
 負極反応
 Pb + SO4-            放電→  PbSO4 + 2e-
                 ←充電 




ANSWER
回答No2 | 投稿日時:

回答2(質問)
spitfire 様にお尋ねします。

spitfire 様にお尋ねします。

1)1.2Vは放電する前の起電力でしょうか。
2)一次電池の端子電圧はどのようなテスタ(メーカー、規格など)使って計測したのですか。
3)リモコンにリチウムイオン一次電池を何個使用していますか。2個以上の場合、全ての電池が1.2Vでしたか。
4)新品のCR2025の起電力は3.0Vですが、2.9Vまで下がっていたのですね。手元に新品があれば起電力を測っていただけないでしょうか。
5)100Ωの抵抗をつないで放電しようと思った動機は何ですか。
6)紹介された事例は、今回がはじめてですか。それともこれまで何回か経験されましたか。
7)電池メーカー(中国)のいうSEI膜はどのような物質でしょうか。
8)質問に、その後も0℃の環境下で約300時間経過後も電圧が安定しています。と記載されています。
300時間は、リモコン操作機器の運転時間でしょうか。それともご質問時までに経過した時間でしょうか。