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QUESTION 質問No.56

ファクトリーオートメション(FA)システムの国内と海外の違い

全体/その他製造業全般・分類不能 |投稿日時:
ファクトリーオートメション(FA)システムについて

ある仕事(大手電機メーカーの工場パンフレット制作)で国内と諸外国とのFAの違いに関する知見を求められています。国内大手製造業のFA最前線の現状に対する理解と、諸外国(特にドイツ)のFAシステムとの違いなどを理解するにあたって、何かしらアドバイスを頂戴したい。ないしは、理解を深めるに最適なWebサイトないしは資料等ありましたら、教えて頂きたい。

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ANSWER
回答No1 | 投稿日時:

 ロボット技術開発、家電製品や半導体等の生産システム開発および設備開発に携わってきた経験から、知人のリポートやweb上の資料も参考に、ご要望のドイツの動きにフォーカスして述べてみたいと思います。今回は、以下の3つの切り口で要点のみ記述します。

(1) FAの世界市場動向について
 工場内の生産工程を自動化するファクトリー・オートメーション(FA)市場は、今後、新興国向け需要の増加や新分野への導入拡大などによる大幅な成長が期待されています。日本のFA 機器メーカーの技術優位性は強固で、産業用ロボットでは日系のシェアが世界で5 割を超えるなど高い競争力をもっています。FA 市場は、今後も世界の自動車生産台数の増加などと合わせて拡大が続くとみられます。賃金上昇が続く中国などの新興国における工場省人化ニーズの高まりや多品種少量生産という事業特性から従来不向きとされてきた医療・食品などの新分野での機器導入ニーズの拡大が期待されます。
 日本のFA 機器メーカーは、新興国需要の対応として次のような取り組みを始めていることが見受けられます。
①消費地でのニーズに的確・迅速に対応すべく現地法人や生産拠点を設立する。
②現地での部品・資材の調達を促進する。
③溶接、組立、搬送等複数の作業工程に対応出来る機種でなく、単一機能に絞り込んだ半額程度の低価格機種を開発する。
④ロボットの外装部分に新素材を採用し、防水性や抗菌性を高め、医療や食品などの製造現場で支障なく使える製品を開する。
⑤優良企業とアライアンスを行い、相手先の既存販路の活用やノウハウの共有化を図る。
⑥特に、新興国ユーザーには、産業用ロボットや制御機器などを組合せ、一括納入する。
 日本メーカーは、従来と異なる領域での製品開発、営業手法などが求められ、これが新たな競合環境を生むことは不可避とみられます。例えば、低価格機器の開発では、中国、台湾、韓国などのメーカーが徐々に技術レベルを高めており、今後、熾烈な価格競争が展開される可能性があるほか、一括納入の実績では欧州のメーカーが先行しているとの見方もあります。また、市場の大幅拡大を理由に、周辺業界から新規参入が増加することも想定されます。したがって、FA機器メーカーにとって、今後、国内メーカー同士の協業や、国境を越えた大型再編などが展開される可能性も想定されます。

 ※ 参考文献の例:成長が期待されるFA市場と日系メーカーの方向性(2014年8月 三井住友銀行 古市裕也)SMBC Monthly Review

(2) ドイツのFAシステムについての最新動向
 次に、知人のリポートから一部を参考にして記述します。まず、シーメンス、ダイムラー、ボッシュなどドイツを代表する企業が連合し、劇的な生産性向上と省エネルギーを実現しようとしている件です。ものづくり大国ドイツが威信をかける「第4の産業革命(Industrie 4.0)」と呼ばれる政策があります。その象徴的システムの事例を2014年4月のハノーバー・メッセ(産業見本市)でいくつか紹介されていたそうです。
 例えば、それは、シーメンスが開発した次世代自動車生産ラインです。これは、「ダイナミックセル生産」方式と呼ばれているものです。車体とロボットが会話しながら組み立てていくコンセプトのシステムとなっています。従来は、人がロボットに作業手順を覚え込ませていましたが、ここでは、ICタグが埋め込まれた車体に、型式や必要部品、組立手順などの情報が記録されています。車体がロボットに近づくと、「5つのタイ ヤが必要です」などと作業を指示するようになっています。仮に何らかのミスで、違う車体が流れてきた場合、作業ミスが発生するかもしれません。しかし、ロボットと車体が会話できればその問題は解決できるという考え方だと思います。これが上手くいけば、多品種少量製品を量産品並みのコストで作れる可能性が増します。将来的な目標レベルは極めて高いようです。ドイツ中にある生産設備、製品、部品、素材の一つ一つにIDを割り当ててインターネットでつなぎ、ドイツ国内を一つの仮想工場に見立てることで、資源の全体最適を実現しようとしているようです。こうしたスマート工場構想が実現すれば、フル生産の工場が稼働率の低い他の工場を活用できると考えられます。自動化が進むことで、単純労働や制御する仕事は減るが、ITを駆使した複雑な生産システムの構築など、付加価値を生む創造的な仕事のできる人が一層求められます。
 また、ボッシュは、ネットで工場の外部とつながる次世代FAを提案しています。さらに、統合基幹業務システム(ERP)世界最大手のSAPは、「第4の産業革命(Industrie 4.0)」で生まれる膨大なデータ処理とセキュリティー対策に意欲的です。ただ、それらの課題として、通信規格やものづくりの仕様などの標準化が必要になるとされています。工場がネット外部とつながることでサイバー攻撃にさらされるリスクもあります。

 ※ 参考文献の例:ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?(2014年4月 川野俊充)MONOIST

(3) コメント
 こうしたスマート工場の試行は、筆者も30年ぐらい前から実践してきました。ドイツの動きとどこが違うのでしょうか。ドイツの強みは、「標準化」に長けていることだと思います。なぜなら、PLCプログラミング言語の国際標準IEC 61131-3(PLCopen)は、ドイツのソリューションが主流です。CAN、Profibus、EtherCATなどは、全てドイツ生まれです。いっぽう、日本は、「一品物」に秀でています。日本メーカーのシステムは「閉じられたネットワーク」の中では、極めて高性能だと思います。これをグローバル展開の原動力として浸透させるのはあまり得意ではなかったと思っています。また、ドイツと日本は、中小企業が全企業のうち90%以上を占めるという点は共通しています。そこに展開できるFAシステムこそ、差別化要因のヒントになるのではないかと考えます。
 また、ドイツのように、国家プロジェクトとして補助金が出ている事業は、まだ投資効果の面では例外と捉えればよいのではないかと考えます。通常の企業の場合には、現地の労働者の賃金レベルに合わせた生産システムの最適化が求められます。日本のように少子高齢化で、労働者不足と賃金上昇で、自動化のメリットが大きくなっていますが、いろいろなリスクを考慮したとき、セル生産方式のような多品種少量生産にも対応可能な生産システムも代替案として検討すべきであります。そして、各国、地域等の雇用の創出にもつながる課題でもあります。何が何でもFAでは、製品需要ニーズの環境変化への大きなリスクにもなってくるのではないでしょうか。

 回答者:ぷろえんじにあ代表 粕谷茂