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QUESTION 質問No.422

時間変化する量の大小比較について

市場品質品質工学(タグチメソッド) |投稿日時:
こんにちは。
私は反応器でメタン製造する研究をしている学生です。

生成ガス中のメタン濃度で二つの反応器を性能比較したいと思っています。
このとき、次のようなデータが得られたとします。

測定時刻 1/1   1/2   1/3    1/4

反応器A 1 mol/L 2 mol/ L 4 mol/L 5 mol/L
反応器B 3 mol/L 8 mol/L 11 mol/L 20 mol/L

濃度は反応時間に依存していると考えられます。時刻と独立してません。
各測定は一回だけだったとします。
単純に比較すると、反応器Bの方が性能がよさそうです。
しかし、測定時刻が異なるデータであり、母集団の比較は難しそうです。

反応器Aと反応器Bの測定値が偶然でなく統計的に有意と言えるでしょうか。
もしそうした解析方法などがございましたら、教えて頂ければ幸いです。

若輩者ですみませんが、宜しくお願い致します。

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ANSWER
回答No1 | 投稿日時:

パラメータ設計でも、特に制御因子間の交互作用が複雑に絡み合うことの多い化学系を得意としている対馬と申します。

文面より、反応開始からのサンプリング時間が異なる反応器AとBのデータ、例えば、反応器Aは反応開始からの時間が1、2、3、4分のときのメタン濃度がそれぞれ1、2、4、5 mol/Lに対して、反応器Bは2、5、7、12分のときのメタン濃度がそれぞれ3、8、11、20 mol/L であるようなデータから、AとBの優劣を評価できないかという質問と理解しました。

その理解で話しを進めますが、反応器Aの4分以降のデータがありませんので、結論としては当然AとBの優劣の評価はできないことになります。 しかし、それでは話しが終わりますので、精度は低いことを前提での評価方法を述べます。

まず、反応器Aの実際のデータから得られる線形の近似式 y=1.4x-0.5 から、x分(5、7、12分)後のメタン濃度yを推定します。 実際のデータでは、メタン濃度は反応開始からの時間に対して対数的に変化するはずですが、説明を単純化するために線形として話を進めます。

計算すると、メタン濃度は7、9、16 mol/Lとなりますので、反応器Aの反応開始からの時間2、5、7、12分のときのメタン濃度の推定値はそれぞれ2、7、9、16 mol/Lとなります。

この数値をもって、パラメータ設計(品質工学)の動特性の感度Sにより、反応器AとBの優劣を評価します。 なお、感度は反応時間1分当たりのメタン濃度を示す尺度になります。

感度S=10log[1/r(Sβ-Ve)]
ここに、
r=2x2+5x5+7x7+12x12=222

Sβ(A)=[2x(2分後のデータ)+5x(5分後のデータ)+7x(7分後のデータ)+12x(12分後のデータ)]の2乗/r=294x294/222=389.3514
Sβ(B)=[2x(2分後のデータ)+5x(5分後のデータ)+7x(7分後のデータ)+12x(12分後のデータ)]の2乗/r=363x363/222=593.5541

Ve(A)=[(2x2+7x7+9x9+16x16)-Sβ]/(データ数-1)=(390-389.3514)/3=0.2162
Ve(B)=[(3x3+8x8+11x11+20x20)-Sβ]/ (データ数-1)=(594-593.5541)/3=0.1486

したがって、
感度S(A)=10log[1/222(389.3514-0.2162)]=2.44 db
感度S(B)=10log[1/222(593.5541 -0.1486)]=4.27 db

AとBの感度の差 4.27-2.44=1.83 から、10log(βの2乗)=1.83 の式でβを算出すると、β=1.23 となります。 これは、反応器BのほうがAに比べて、メタン濃度が1.23 倍高いことを示しており、反応器Bのほうが性能が良いことになります。
なお、計算方法の詳細については以下の書籍を参考にしてください。
ベーシック オフライン品質工学、日本規格協会 「第3章 動特性のSN比」

以上ですが、反応器Aの4分以降のメタン濃度の推定値が、実際の値に近いとは限りませんのでその点はお忘れなく。