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QUESTION 質問No.214

知財戦略の強化について

企画  | 投稿日時:
材料メーカーの業務委託を行っており、事業企画部の方と一緒に事業部、知財部、研究所の三位一体体制での知財戦略強化プロジェクトに取り組んでおります。現在、三位一体体制の強化を図るべく、三部門のメンバーに必ず参加いただき知財戦略を踏まえた事業戦略策定の活動を進めておりますが、なかなか事業部のメンバーが知財に対して積極的な姿勢を示してくれません。研究所メンバーはもともと自分達が開発した材料の特許権を取得する必要がありますので知財部と密接な関係が築けていますが、事業部のメンバーは特許に関しては知財部と研究所任せのところがあります。どのようにすれば事業部が積極的に知的財産に関する議論に参画してくれるようになるでしょうか?何かよい方法がありましたらご教示いただけると幸いです。よろしくお願いいたします。


ANSWER
回答No1 | 投稿日時:

事業・研究開発・知財の三位一体という掛け声は、2003年の「知的財産の取得・管理指針」(経産省)で詠われてすでに10余年経過しましたが、残念ながら日本企業に定着したとは言えない状況が現在でも続いております。
それほど難しい課題ですので、簡単な処方箋があるわけではありませんが、うまく進んでいる事例もありますので、ポイントをご説明いたします。
 まず大事なことは、経営陣が知財をどれだけ重視しており、このプロジェクトについて経営陣からの働き掛けがどれだけ期待できるかと言う問題です。御社における「知財戦略強化プロジェクト」が経営陣の要請でスタートしたトップダウン的な性格のものであれば、経営陣に活動の報告を行う中で、問題のありかを理解して頂き、経営陣からしかるべく働きかけをして頂く、という方法を取ることが可能でしょう。「事業部のメンバー」の参画度が低い原因が、もしかすると他の業務とのバランスの問題であるとすれば、経営陣との議論を通してしか解決できないことなのかも知れません。経営陣によるサポートあるいは後押し程、強い駆動力はないと思います。
 もし、本プロジェクトがボトムアップ的な試みであったとすれば、上記の方法を取ることは難しいかも知れません。その場合には、「事業部のメンバー」に三位一体の活動の重要性や意義を理解して貰うよう、様々な試みを行うことが必要です。
その一つは、リスクマネジメントとしての知財活動の重要性を理解して貰うことです。事業を成功させるには下記の二つの保証が必要です。
 ① 事業活動の全ての場面について、他社の知的財産権に抵触しないようにすること。
事業の全ての場面とは、原材料購入の場面、自社での製造・加工の場面、顧客に販売する場面、顧客が使用
する場面の全てを言います。特に材料の場合には、その用途の領域に障害他社特許権が存在する可能性が高
く、そうした出口を抑えられていると事業展開に支障を来します。これらのバリューチェーン、サプライ
チェーンの情報は、知財部と研究所で全てを把握することはできません。ビジネスの全容を理解できる立場に
いる事業部のメンバーの参画が不可欠です。
② 自社の事業活動が他社に模倣されないようにするために、あらゆる知的財産権を総動員すること
自社事業がうまくいけば、必ず他社が参入しようとします。その際、製品を特許で守るだけでは不十分であ
り、用途領域に関する多数の知的財産権の構築が必要です。また、ビジネスの進め方によっては、流通・販売に
関わる特許、意匠、商標、著作権、不競法等を総動員して事業を守ることが必要となります。その作業において
も、ビジネスの全体像を知る事業部のメンバーの参画が不可欠です。
 もうひとつは、事業戦略の立案における知財情報の重要性を理解して貰うことです。事業戦略の立案において
は、内外環境情報の収集・分析が必須ですが、その基本となるのが3C(Competitor:競争業者、Company:
自社、Customer:市場・顧客)分析です。例えば、   
① ターゲット市場およびターゲット商品・技術がライフサイクルのどの段階(揺籃期、成長期、衰退期等)にあ
るのか。
② 競争業者はどのような技術、知的財産を有しており、自社の技術・知的財産は競争業者に比べて優位なのか劣
位なのか、もし劣位であればどのようにして優位性を確保することができるのか。
③ 特に致命的な障害技術・知的財産はないのか、あるとして、それは克服可能なのか。
④ 連携できる仲間がいるのか、いるとしてどのように連携するのか(ライセンスイン、共同研究、事業連携
等)。
等を明らかにしなければ事業戦略を立案することはできませんが、これらの諸点について、知的財産情報は豊富で
必須の情報源となります。
 これらのポイントを事業部メンバーが正しく理解できれば、積極的にプロジェクト活動に参画して貰える筈ですが、その理解を得るためには次のようなステップが必要でしょう。
① 以上のことをテキストに基づき、説明して理解して貰う。
ただし、これだけで不十分で、
② 具体的な事例(特に自社の事例があれば望ましい)に基づいて理解して貰う。
さらには、
③ 実際のプロジェクトで取り上げたテーマについて、知財担当者が知財情報の有用性を立証して見せ、理解して
貰う。
そして最後に、
 ④ 実際にプロジェクト活動に参加して貰い、その中で自ら情報解析を行い、有用性を体感して貰う。
ところまでいけば、理解が確信に変わり、主体的にプロジェクトに参加して貰えるようになると思います。
 いくつかのプロジェクトを並行して推進している場合には、うまく行きそうなプロジェクトに特に力を入れて速やかに成果を上げるよう心掛け、その先進事例を他のプロジェクトに普及する、という進め方も効果的です。また、成果が得られた場合、それを経営陣に報告して経営陣の理解を得、経営陣からプロジェクト参加者を激励して頂く、というプロセスも大事なことです。