喜ばれる物流の創造 

 

1. 宅配型靴修理とハンガー物流

 私たちの生活は物流によってどれほど豊かになっているでしょうか。大抵の方は気づいていないと思います。一昔前はテレビや雑誌などの一部で行われていた通信販売が日常茶飯事となり、その利便性を私たちは享受しています。スマートフォンやPCで意図も手軽に発注でき、翌日には自宅に商品が届きます。この通信販売で購入する物は街でも手に入る一般商品であるところが特徴です。一方で各地の名産品も通信販売で手軽に手に入るようになりました。これによって私たち消費者も嬉しいのですが、生産者側もローカル営業から一気に全国営業に飛躍することができたのです。お互いWin-Winの状況が確立できたわけです。この通信販売に代表される生活を豊かにする物流商品が消費者に喜ばれるようになってきたのです。
 
 靴の宅配型修理も嬉しい物流商品です。この商品の強みは「無料」で引き取りと宅配を行ってくれることでしょう。先日この商品を知らない人に配送料をいくらまでだったら払ってこの商品を利用したいか聞いたところ、250円なら、という答が返ってきました。それを最初から無料にしたところがこの商品の強みだといえるでしょう。ハンガー物流も小売店にとってみると嬉しい物流商品です。ハンガー物流とは、衣類をハンガーに掛けたまま倉庫に保管し、オーダーに基づいてハンガーのままトラックで輸送し小売店まで届ける物流です。今までは衣類の物流といえば服を折り畳んで段ボール箱に詰めて運ぶということが当たり前でした。この方式の場合、服に付いた皺を小売店で取らなければならなかったのです。折り畳んで段ボール箱で運ぶということは「物流の論理」に過ぎません。服に皺を発生させるということは、物流品質の問題でもあります。厳しい見方をすれば、手軽に物流コストを下げるために商品にダメージを与えていたと言えそうです。小売店で皺とり工数を無くすことができたとともに、ハンガー台車で店舗内を移動することで商品がお客様の目に触れ、売上につながるといった副産物もあったと聞いています。
 

2. 病院内物流(SPD)

 病院内物流の請負も病院側にとってみると嬉しい商品であることに間違いはありません。病院の本業は患者さんの治療です。入院患者に対する投薬や、手術などを行うのが病院の役割だと言えます。ではこの本業以外のことを病院スタッフがどれくらい行っているでしょうか。薬剤や治療に使う機器を発注し、それを倉庫に保管し、必要に応じて取り出して使う現場まで運んで行く、このような本来業務以外の業務を看護師が実施しているのです。今まで何度となく問題視された医療ミス、人の命に係わる絶対に犯してはならないミスを繰り返し発生させていることは皆さんご存じのとおりです。この絶対に発生させてはならないミスがなぜ発生してしまうのか。この点について深く掘り下げて考えてみる必要がありそうです。
 
 その大きな要因に看護師の事務作業です。先ほど挙げたような作業を行っていると本業に割く時間が削られ、ミスにつながることが考えられるのです。そこで病院内物流業務を外部業者に委託しようという発想が起こります。そしてそれを請け負える業者が商品化して医療機関と取引を行っているのです。この物流商品のことをSPD( Supply Processing & Delivery)と呼びます。薬剤や医療機器を倉庫保管し、病院からのオーダーに基づき出庫して届ける仕事です。この倉庫は病院内に置く場合もあれば、外部に持つ場合もあります。手術があるときには手術に使う機器をキットにして納入します。これによって医療機関側は煩わしい業務から解放され、本業に特化することができるようになるのです。
 
 私たちは普段の生活で不便だと感じていることはたくさんあると思います。物流はその「不便さ」に目をつけることで喜ばれる物流商品を開発することが可能となるのです。
 

3. コンビニの宅配と物流管理

 一般の人たちはどのような物流サービスを望んでいるでしょうか。それは普段の生活に密接に絡む部分ではないでしょうか。私たちは宅配を使うことがあります。何を宅配して欲しいかというと、まず「重いもの」「かさばるもの」が挙げられます。これらは宅配料金次第では大いに活用したいと考えます。しかし、最近ではこういったものに関わらず、送ってもらいたいという考え方が出てきているのではないでしょうか。それは年齢構成の変化や共働きの増加が要因となってい...
ることが推測できます。また、大型スーパーの統廃合によって買い物困難地域が出てきていることも要因でしょう。
 
 スーパーによる宅配やコンビニの宅配も当たり前になりました。これは上記要因によることは明らかです。スーパーやコンビニが学校や病院にお弁当の宅配を行うことも一般的になるのではないでしょうか。一般消費者に対してはこのような生活上の不便を解消してくれる物流商品が喜ばれることは明らかです。では企業間ではどのような物流が今後喜ばれるでしょうか。その一つのキーワードが「物流管理」ではないかと思っています。
 
 企業では実際にものを動かすこともさることながら、その管理についても面倒を見てくれることを欲しています。物流のアウトソース先の管理や支払実務、物流改善、できれば物流改革提案までやってくれると大変ありがたいのではないでしょうか。社内でこのような業務ができる人材を育てることが望ましいのか、思い切って外注化してしまう方が望ましいのか考えどころです。私たちは常に市場調査を行い、喜ばれる物流の創造に努めることが必要です。
  

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