抽象的基準は具体的基準へ変換

 何かを評価する時、項目が抽象的で具体性に欠けると感じる事は無いでしょうか。判定基準が曖昧ならば、評価者の主観を交えざるを得なくなります。この場合、評価結果には間違いなく「ばらつき」が生じています。
 
 例えば採用基準にコミュニケーション能力が高い人という項目があるとします。コミュニケーション力とは何でしょうか、社交性でしょうか、論理的会話力でしょうか、交渉力でしょうか、仮に社交性の高い事だとします。では社交性の高さとは具体的にどの様な状態を指すのでしょうか、どの様な事が出来ればそう判断して良いのでしょうか、突き詰めていくとこの様な疑問が生じます。
 
 これらの具体的判断基準を持たずして選考を行い採用すれば、期待されていた能力と実際の能力が異なったとしても仕方無いと言えるのではないでしょうか。改善活動においても同様です。
 
 問題や課題が抽象的であれば達成すべきゴール設定が曖昧となり、具体的アクションも何をどの様に行えば良いか曖昧となり活動が滞ります。最悪は間違った方向で改善を進め、ムダな時間とコストを費やしてしまいます。
 
 問題や課題は規模が大きいほど曖昧に成りがちで、聞く人で捉え方が変わりますから、第三者が見ても同じ認識となるよう具体性の高い基準を設定する必要があります。
 
 具体的判定基準の理想は数値化です。数値で規定されていれば一目瞭然です。非常にポピュラーな事例として、筆記試験がありますね。単純に良し悪しが点数で現されるので明確です。
 
 冒頭の社交性の例に戻って具体的な判定基準を考えてみたいと思います。
 
   定義:初対面の人と直ぐに仲良くなれる
 
 基準1:初対面の人と30分会話を途切れずに続けることが出来る
 基準2:初対面の人と次に合う約束を取り付けることが出来る
 基準3:初対面の人の基本的プロフィールを会話の中で入手できる
 
 これだけでも第一段階としては良いと思いますが、判定基準を20問設け、1つを5点とすれば評価結果を100点満点の数値で出すことが出来ますから、数値化が可能です。定義や判定基準が妥当かどうかは別として、この様な具体的な課題や判定基準に置き換える事で、やるべき事が明らかとなり判定が容易となるはずです。
 
 ここでもう一つ注意点があります。課題定義や判定基準の妥当性です。 具体化する時に問題や課題の本質からズレた変換をしてしまう事です。コミュニケーションの高さという要求が「論理的会話力」を指しているのに、「社交性の高さ」と言う定義やそれを判定する基準を設定しても意味が無いという事です。
 
 本質を適切に理解した上で具体化(embody)する事が重要です。それには具現化した基準のチェックで元々の目的を判断出来るかどうかをレビューすれば良いと思います。元々の問題や課題の規模が大きいほど、具体的判定基準が一...
つでは足りず複数の判定基準を設け、それが満たされる必要があるでしょう。
 
 先の試験の例で言えば、「学力を測る」という抽象的・曖昧な課題があったとき、国語、英語、数学、理科、社会等の5教科の偏差値という具体的に置き換えられ、評価基準は数値を用いる事が出来ます。 国語の偏差値だけでは学力の判定は出来ませんが、目的からは外れていません。つまり十分条件では無いが必要条件としては当てはまっています。
 
 つまり具体的問題定義や評価基準の設定項目が妥当かどうかは、当初の目的を満たす為の必要十分条件でありうるかをレビューすれば良いでしょう。主観による偏りを防止するため関係者によるレビューも勿論有効です。
 

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