‐5Sの推進でコストダウンを図る 製品・技術開発力強化策の事例(その28)

5Sの意義

 前回のその27に続いて解説します。「整理、整頓、清掃、清潔、習慣(躾)」を総称して5Sと言い、これらを確実に励行すると、ムダな動作の発生が少なくなり、品質問題の発生率も少なくなります。人の行動の基礎をなす非常に重要な事項です。作業工程を分解すると、全ての作業が次の4つの基本現象に分けられることを動作研究の創始者であるギルブレスが提唱しています。
 
 (1)加工  (2)移動  (3)停滞  (4)検査
 
 この内で付加価値を生み出している作業は「加工」であって、その他の要素は付加価値を生み出していません。「検査」は品質保証の上から必要な要素ですが、付加価値を生み出す事はありません。つまり、付加価値を生み出さない要素作業を少なくするために役立つのが5Sです。
 
 ムダは作業を進める中でどのような現象となって現れるのか、「加工」以外の「移動、停滞」に相当する要素作業を取り上げて見ると、「探す、移動する、手待ち、小運搬、滞留、段取替え、同じ事の繰り返し、手直し、必要以上に手を加える作業、余分な動作、造りすぎ」等の形で現れます。この中で「探す~滞留」の5項目は、5Sが不足している事から必要以上に多くなります。段取替えについても5Sに起因する場合が少なくありません。
 
 探す:物の置き場が一定していないために、置き場が判りにくく探すために生じるムダです。移動:物の置き方に秩序が無く、仕事の順序や作業性を考えた置き方になっていないために移動距離が増えるために生じるムダです。手待ち:顧客との打ち合わせ方、作業指示などの連絡法及び調達品の手配の仕方等が良くない事が原因になって、「報・連・相」が不足し、手待ちがしばしば発生します。
 
 小運搬:必要以上の量の物を作業域に置く、置き場の配置が良くない。等が原因になり発生するムダです。滞留:必要以上に材料や仕掛品を作業現場の周辺に置いて滞留させると、作業域で邪魔になる滞留品のため、小運搬や移動が余分に発生します。また、滞留品は過大在庫の原因になり、資金負担を増加させます。段取り替え:段取り替えに必要な器具類の5Sが良くないと、探す・移動・小運搬・等のムダが複合して発生し、段取り替え時間が必要以上に長くなります。同じ事の繰り返し:配置や保管方法が明確になっていない、連絡方法が良くない。等が原因になりムダが発生します。
 
 手直し:作業手順が決められていないために発生する場合と、5Sが徹底していないために、傷・ゴミ付着などの不具合が出て手直しが必要になる場合があります。必要以上に手を加える作業:工具、資材、部品、作業手順、品質基準等の整備が良くないと、作業者毎に個人差が出て、過剰な作業が増えます。余分な動作:作業者の周囲に配置する工具、部品などの配置が良くないと、体を動かす頻度が増えて、ムダが多くなります。造りすぎ:求められてい...
る必要量以上に生産すると運搬費、保管費、管理費、不良在庫品などを発生させます。段取り替え時間が長いと造りすぎを発生させる主因になります。
 
 5Sに起因するムダは、このように仕事の流れているあらゆる場面に生じています。多品種少量生産の場合このムダを合計すると実作業時間の50%に達することは珍しいことではありません。日常の作業でムダの存在を観察する習慣をつけ、発生頻度の高い項目から順次取り上げ、ムダの多い順に再発防止対策を立てて、ムダを少なくするために5Sのあり方を見直し、徹底させていくことが大切です。5Sを徹底的に実行していけば生産性は向上し、品質問題が減少することは多くの企業で実証されています。
 
 

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