赴任者のために 中国工場管理の基本事例(その4)

1、赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その2)

◆ 赴任直後にすべきこと

 企業がグローバル化して海外展開を加速させている中で海外拠点、ここでは中国工場ですが、その経営がうまくいくか、いかないかが本社の経営に与える影響は、以前に比べ格段に大きくなっています。ですから、中国工場の成否、そしてそれを委ねた駐在員、特に総経理・工場長がしっかりやってくれるかどうかは、本社としての重要経営課題になっています。

 そのような意味で中国工場の駐在員、特に総経理・工場長として赴任した方は非常に重要な役割を担っています。「大過なく自分の任期が終えられれば良い」。この記事を読んでいらっしゃる皆様の中にこのような考えの方はいないと思いますが、これではいけません。責任者としてミッションをしっかり果すことが期待されているのです。

 中国工場運営においては、現地社員(中国人)をマネジメントすることが最も重要なことです。このシリーズでは、赴任者が知っておくべき、また、注意すべき現地社員のマネジメントについて書くことにします。中国工場管理の基本事例(その3)に続いて解説を続けます。

 第2回目の今回は、工場に関係する契約や規定を確認し、理解することの重要性です。

 日系中国工場に中国での工場長の経験があるとして採用された年配の方がいました。結果を出すことを期待されていたので、結果を出すことにこだわるあまり、急ぎすぎてしまいました。中途採用ですから、その工場の全体の流れや各工程の詳細は入社時点では分かっていません。しかし入社後、それらを十分に把握しないうちに、目についたものから手当たり次第に「ああしろ」、「こうしろ」と指示を出して、やり方を変えてしまいました。

 スタッフから「どうしてこういうやり方をしているのか」など、話を聞くことは一切行わずに違うやり方を指示したのです。

 また、これまでの指示命令系統とは違う指示の出し方をしました。その工場には製造の責任者がいて、今までの工場長は製造に関してはその責任者を通して指示を出していたのですが、新しい工場長は直接現場の科長にあれこれ指示を出しました。製造の責任者の面子(めんつ)は丸潰れになった格好です。

 その結果、スタッフは全員そっぽを向いてしまいました。表面上は命令に従うふりをしていましたが、実際は何一つ従っていなかったのです。新工場長が出した指示の中には的を射たものもありましたが、一つも進みませんでした。この方は結局、半年で工場を去ることになってしまいました。

(3) 工場に関係する契約や規定を確認し理解する

 赴任直後に絶対にやらなくてはいけないのが、対外的な法的契約書類「登記書類、賃貸契約、政府からの許認可書類」等を確認することです。

 これらの内容については、前任者との引継ぎの時に担当の中国人スタッフも交えて確認するのが良いでしょう。前任者もこの辺についてはきちんと理解していない可能性がありますが、皆さんはそうならないように注意してください。期限のあるものなどの場合「更新するのか」、「その時の条件は?」など準備しておくことはたくさんあります。工場トップの重要な仕事の一つとして認識してください。

 また、こうした重要書類の保管は必ず施錠管理をすること。これは中国の人を信用するとかしないとかではなく、きちんと管理している...

ことを周りに見せることが大事だからです。「今度来たトップはきちんとした人」だと認知させることで、この後の仕事を進める上でのやりやすさが違ってきます。

 社内規定の内容も面倒くさがらずに確認してください。日本の規定と違うことはたくさんありますので、最初に理解しておきます。

 この時に、知ったかぶりをするのは致命傷になる可能性大です。事前に多少勉強してきたとしても、来たばかりの時は分からないのが当り前です。分からないものは分からないとして「どうしてそうなっているのか」、「どうしてそのような決まりになっているのか」など理解するまで聞いてください。それで全然問題ありません。ただし、メモをしっかり取るなどして、同じことを2度も3度も聞くのは中国人スタッフに本気度を疑われますのでやめましょう。

 次回に続きます。

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