ワーク・エンゲージメントの事例

 
 今回は、製造現場における離職問題を考えます。設計量や製造量を増やすために人を採用しても離職者が多く、狙いの生産量を達成するのが難しいだけでなく、技術伝承や人材育成が困難なため中長期的な経営課題ともなっています。このような課題をどのようにして解決するのかを考えます。
 

1. 離職率が高い原因

 
 離職率が高い原因は会社や組織によって様々ですが、「会社に対する魅力や将来性を感じない」「仕事に対するやる気が出ない」という思いが会社を辞めたいという強い思いに変わってしまうというのは共通しています。そのため、会社を辞めるという決心が固くなる前に、しっかりと個別にコミュニケーションをとり、少しでも彼/彼女の不満や不安を解消するアクションをとることが重要になります。
 
 一人ひとりの仕事に対するやる気や意欲を把握することが大切になるわけですが、決して簡単なことではありません。日常の振る舞いを見てもわからないことは多いですし、管理職の中には人の内面を把握することが苦手な人も少なくありません。
 

2. ワーク・エンゲージメント

 
 そこで活用したいのが、仕事に対するやる気や意欲のしくみや構成要素を明らかにしている「ワーク・エンゲージメント理論」です。ワーク・エンゲージメントとは、仕事に対するやる気や意欲のことです。ワーク・エンゲージメント理論により、一人ひとりの仕事に対するやる気や意欲を定量的に測定することが可能になります。つまり、ワーク・エンゲージメントが急激に低下している人や継続して低下している人を把握することで、会社を辞めるという決心が強くなる前に対処することができるのです。
 

3. ワーク・エンゲージメントの活用事例

 
 実際にワーク・エンゲージメントを活用することで、離職者や休職者を減らした事例を紹介しましょう。
 
  
 
 このグラフは、あるメーカーの設計技術者たちのワーク・エンゲージメントを定量化したものです。横軸は設計者の個人番号であり、縦軸は一人ひとりのワーク・エンゲージメントの値、すなわち、測定した各設計者のやる気や意欲の高さを示しています。
 
 グラフによれば、同じ部署にもかかわらず個人差が非常に大きなことが一目瞭然です。これほど人によるバラツキが大きいということは、画一的な取り組みでは一人ひとりのやる気や意欲を上げることが難しいとい...
うことを示しています。離職者や休職者を減らすことはもちろん、個人の生産性を上げることも難しいことがわかります。
 
 一人ひとりのワーク・エンゲージメントを測定して、仕事に対するやる気や意欲を把握し、一人ひとりに合わせた個別対応をすることが、離職者や休職者を減らすための第一歩なのです。
 
◆関連解説『人的資源マネジメントとは』

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