プレス事故、労働災害の根本要因 中国企業の壁(その39)

 
  
 
 前回の中国企業の壁(その38)は、中国企業の工場で起きた作業中の事故の状況について書きました。
 
 この工場は、作業者には出来高制給料を採っていたため、作業者がプレス作業の生産効率を高めようと自分の判断で作業の方法を変え、安全装置まで外した結果起きた事故でした。
 
 事故が起きた要因の1つは、本来は通常の両手スイッチ作業だったものをフットスイッチに変えてしまったことがあります。これによって作業者の両手がフリーになり手が挟まれる結果につながりました。
 
 この要因の問題点は、作業者がフットスイッチを自由に使える状況にあったことです。フットスイッチがなければ、作業者もこのような方法にすることは出来なかったはずです。
 
 もう1つの要因は、安全装置のセンサーを切ってしまったことです。このことによって手が金型近くにあってもプレスが作動できるようにしてしまったのです。
 
 この工場が採った対策は、先ずはフットスイッチの管理をすることでした。フットスイッチを作業者が勝手に持ち出せないように、長尺製品のプレスで使用するときに班長に使用申請をして班長が支給することにしました。もちろん、作業終了後の回収についても管理項目に加えました。
 
 以前は、長尺製品をプレスする場合は、作業者が自分でフットスイッチを持ってきてセットしていました。また、作業が終わった後も、フットスイッチはプレスに取り付けたまま放置されていることも多々ありましたが、特に注意することもありませんでした。工場側では作業者が勝手に使って作業方法を変えることは、想像もしていなかったのです。
 
 両手スイッチをフットスイッチに変えることがなければ、安全センサーを切る必要もなかったのです。フットスイッチに変えることが出来ないようにすることが重要と工場...
では考えました。ただし、センサーが正常に作動することを外部機関に確認してもらいました。
 
 問題の根本は、生産効率がよくなるなら作業者が作業方法を変えるなど何をしてもよいという風潮がこの工場にあったことです。
 
 出来高制の給料を採っていても、決められたルール・方法は、品質や安全を考慮したものになっているので、ルール・方法の中で工夫をする。このことは絶対に譲ってはいけない部分です。
 

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