設定値と許容幅の設定、食品加工工場の事例

 
  
 
 今回は、食品加工工場を例として、設定値と許容幅決定のベストな規格を決める考え方について解説します。
 
 食品工場にとって最大のリスクは衛生事故であり、これだけは何としてでも避けたい事象です。しかし一般論としてリスクを避けるほどコストが上がります。
 
 例えば加熱消毒工程で、設定許容温度の幅が小さいほど、賞味を悪化させずに菌を死滅することが可能になりますが、温度規格外すなわち原料廃棄が増えて製造原価が上がります。幅を拡げればその逆で、決して両立することがありません。
 
 食品の原料、半製品においては加熱(微生物が死滅する温度設定)の工程がない限り、微生物は食品中に存在します。但し、次の3点など、一概に、加熱工程の設定値、許容幅だけ考えれればよいわけではありません。
 
 
 食品工場の製造工程を考える場合、一般的には、洗浄、加工、包装、ラベル表示などの工程があります。その中で、さまざまなリスク低減策を講じなければならず、最終的に消費者に安全な食品を届けるため、工場としての品質リスクマネジメントのしくみが必要と考えられます。その主な項目は、次の6点です。
 
・工程の信頼性設計・安全性設計とリスク分析
・工程の不具合を想定したリスクアセスメントの実施
・潜在する故障モードを起点とした工程FMEAの実施
・上記の結果顕在化した問題に対する本対策、保護対策の実施
・人の教育訓練
・賞味期限、保存温度などの設定と消費者への情報提供
 
 食品加工工場の加熱消毒工程で、設定値と許容幅を決めている事例です考えますと、菌の死滅温度、賞味の悪化温度は実験的に明らかにし、賞味が悪化せずに菌が死滅する温度条件をいかに精度よく保つかは設備のバラツキと、周囲環境の変化などを誤差因子とした、パラメータ設計の実施が有効と思われます。また加熱消毒工程も含めた全工程でリスク低減策を講ずることが重要と考えられます。
 
 市場のリスクの程度に応じて判断するため...
、リスクが大きければ、原価は上がっても仕方がない場合もありうるわけで、原料を廃棄しないためにはどのような代替え策を講ずるのかを考えなければなりません。そこで、精度の高い加熱消毒設備に更新するのか、包装方法を工夫するのか、賞味期限を短くするのかは、企業として市場の動向を見ながらの設定値と許容幅の設定判断となります。

◆関連解説『品質工学(タグチメソッド)とは』

 

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