「サンプリング手法」とは、キーワードからわかりやすく解説
1. 「サンプリング手法」とは
サンプリング手法は、全数検査ができないときに判定するために使われます。調査には対象全部(母集団)を調べる全数検査と標本を採取して調査するサンプリング検査の2種類があります。母集団全部を調査するのはコストや時間の問題で現実的とは言えません。そこで母集団から採取した標本から母集団の姿を推測する推定統計学が発展しました。 一部の標本を統計的に解析する事で母集団の特徴を推測します。選挙の出口調査やアンケート調査など一部のサンプルデータから全体を推測するケースは多く、全数調査よりもサンプリング調査がメインとなっています。
2. 「サンプリング手法」ではなく、全数検査が行われる事例
製造工程で全数検査が行われるのはどのような場合でしょうか、これは、重要な製品性能を保証する場合などが該当します。つまり品質保証の観点で全数検査が求められる場合です。当然、サンプリング検査の方がコストがかからないので良いのですが、サンプリング間隔や標本数をどの様にするのか熟慮しなければなりません。
この場合はスペックに対し工程能力が十二分にあり、検査しても不合格品がまず発生しないと言える程の安定したプロセスでなければ適用は難しいでしょう。製造工程でも原料の違い、機械の調子、副資材の違い等で変動しますから工程能力はその一瞬のデータだけで判断せず、ある程度長期スパンで観察し見積もる必要があります。
3. サンプリング手法の基本的な種類と選択の重要性
サンプリング手法は、大別して確率サンプリング(無作為抽出)と非確率サンプリング(非無作為抽出)の二つに分けられます。統計学的な推定を行う上で、最も重要で一般的に用いられるのは、母集団の各要素が抽出される確率が既知である確率サンプリングです。
【確率サンプリング(無作為抽出)】
確率サンプリングには、以下のような主要な手法があります。
単純無作為抽出母集団の各要素が等しい確率で抽出されるように設計されます。最も基本的な手法で、乱数表や抽選によって標本を選びます。母集団リストが完全に入手可能で、その数が少ない場合に最も有効です。
系統抽出母集団のリストから、一定の間隔($k$番目ごと)で標本を抽出する手法です。例えば、1000人の名簿から100人を抽出する場合、$k=10$とし、最初の1人を無作為に選んだ後、それ以降は10人おきに選びます。リストに周期的な偏りがない限り、単純無作為抽出よりも効率的に実施できる場合があります。
層化抽出母集団を、性別や年齢、地域などの特性(層)によっていくつかに分け、各層から必要な数の標本を無作為に抽出します。層内では同質性が高く、層間では異質性が高い場合に、母集団の縮図を正確に捉えやすく、推定の精度が向上します。
集落抽出母集団をいくつかの集落(例:学校、市町村)に分け、その集落を無作為に選びます。選ばれた集落内の要素は全数調査するか、あるいはそこからさらに無作為抽出を行います。地理的に広範囲にわたる調査で、移動コストや時間的な制約が大きい場合に適していますが、集落内の同質性が高いと推定の精度は低下しがちです。
これらの手法の選択は、調査の目的、母集団の性質、利用可能な資源(コスト、時間)によって慎重に行う必要があります。誤った手法の選択は、母集団の推定値に大きな偏り(バイアス)を生じさせ、調査結果の信頼性を著しく損ないます。
【非確率サンプリング(非無作為抽出)】
一方、非確率サンプリングは、統計的な理論に基づかない、研究者の判断や利便性に依存して標本が選ばれる手法です。
コンビニエンス・サンプリング手に入りやすい標本を抽出する方法です。例えば、街頭で通行人に声をかける、大学内で学生にアンケートを取るなど、最も簡単に実施できますが、バイアスが最も大きく、特定の母集団への統計的推定には不向きです。
判断サンプリング研究者の専門的な知識や判断に基づき、母集団を代表すると考えられる要素を意図的に選ぶ方法です。特定の専門家や業界関係者の意見を収集する際には有効です。
割当サンプリング層化抽出に似ていますが、各層の標本数を決めた後、抽出は研究者の裁量で行われます。無作為性が確保されないため、確率サンプリングのような統計的な推定の保証はありませんが、迅速な傾向把握には役立ちます。
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