「ゴードン法」とは、キーワードからわかりやすく解説

 

1. 「ゴードン法」とは

ゴードン法とはアメリカの製品開発専門家ウィリアム・ゴードンが開発したアイデア発想の技法です。 グループのリーダーは対象となるモノではなく機能を提示し、5~10人のメンバーが多角的に発想したのちに真のテーマを提示して最終的にアイデアを集約します。 本当の課題をメンバーには明かさずに、参加メンバーが自由に発想するために、抜本的なアイデアが出やすくなります。

 

2. 「ゴードン法」の進め方

ゴードン法は、グループでのブレインストーミングにおいて効果的です。この方法は、参加者が自由にアイデアを出し合うのではなく、まずはアイデアを匿名で収集し、その後にグループで議論を行うというプロセスを取ります。これにより、参加者は他の人の意見に影響されずに自分の考えを表現でき、より多様なアイデアが生まれることが期待されます。ゴードン法のリーダーは、討議の進行役と同時に、メンバーから出た論点を真の課題に結びつける必要があるため、多大の想像力・洞察力を要求され、他の技法以上の力量と手腕を要求されます。ここでは新しい商品のアイデアを考える、という例で説明します。

・第1次会議(真のテーマに関連した討論テーマでアイデア出し)

  • ①リーダーがテーマを提示
  • ②メンバーが発想、リーダーは多角的な発想を援助する。
  • ③会議の最後に、真のテーマを提示する。

・第2次会議

真のテーマに、第1次会議で出たアイデアを結合して、第2次会議で解決策を考える。

 

3. 「ゴードン法」を上手く活用するためのポイント

  • 環境の整備・・・参加者がリラックスして自由に意見を出せる環境を整える。心理的安全性が重要。
  • 匿名性の確保・・・アイデアを匿名で提出、これが多様なアイデアを引き出す鍵。
  • 時間の管理・・・各ステップに適切な時間を設定。特にアイデア収集の時間は十分に確保。
  • フィードバックの促進・・・建設的なフィードバックを促し、アイデアをより良いものにする。

 

4. ゴードン法の主な利点と欠点

ゴードン法の最大の特徴であり、他の発想法にはない利点は、「抜本的で独創的なアイデア」が生まれやすい点にあります。真の課題が隠されているため、参加者は既存の概念や問題の枠組みに囚われることなく、自由で連想的な発想を広げることができます。これにより、従来のブレインストーミングでは行き詰まりがちな場面でも、全く新しい視点からの解決策や製品コンセプトが導き出される可能性が高まります。また、真のテーマが提示された後の第2次会議で、第1次会議で出た一見無関係な発想が結びつくことで、「セレンディピティ(偶然の幸運な発見)」のような効果が期待できます。

 

一方で、ゴードン法にはいくつかの欠点も存在します。最も重要なのは、リーダーの力量が極めて大きく成果を左右するという点です。リーダーは、第1次会議のテーマ設定において、真のテーマから離れすぎず、しかし既存のアイデアから連想されない「絶妙な抽象度」を保つ必要があります。また、第1次会議で出た多角的で抽象的な発想群を、第2次会議で論理的かつ創造的に真のテーマへと結びつける高い洞察力と統合力が要求されます。このため、リーダー育成に時間とコストがかかるのが難点です。さらに、真のテーマが伏せられているという性質上、参加者が「何のために話し合っているのか」という目的意識を見失いやすいというリスクもあります。

 

5. ゴードン法の効果を高める具体的な工夫

ゴードン法の効果を最大限に引き出すためには、いくつかの具体的な工夫が有効です。

 

「類推テーマ」の選定: 第1次会議で用いる「類推テーマ」は、真のテーマの機能や本質を抽象化しつつも、参加者の「日常生活や感情」に訴えかけるような具体的イメージを伴うものが望ましいです。例えば、「新しいカバン」という真のテーマに対し、「ものを運ぶ」という機能から「物を守る、包む」というテーマを導き出し、そこから「繭」「卵の殻」「母親の腕」といった類推テーマを設定することで、より深く、情緒的な発想が引き出されます。

 

リーダーの「発想の結びつけ」を視覚化: 第2次会議で、リーダーが第1次会議で出たアイデアを真のテーマと結合させるプロセスを、図やキーワードマップなどで視覚的に共有すると効果的です。これにより、参加者はリーダーの洞察プロセスを理解し、より建設的な議論に参加できます。

 

参加者の選定と訓練: 異なる視点を持つ異分野のメンバーを含めることで、発想の多様性が増します。また、ゴードン法は一般的なブレインストーミングとは進行が異なるため、事前に技法の特性や目的を説明し、第1次会議ではテーマに集中するよう促すなど、参加者の心理的準備を整えることも重要です。

 

これらの工夫を通じて、ゴードン法の持つ独特な「引き出しを開ける」力を最大限に活用し、事業や組織にブレイクスルーをもたらすことが可能になります。この技法は、単なるアイデア収集法ではなく、参加者の創造的思考力そのものを訓練し、組織全体に新しい視点をもたらす教育的な側面も持っています。

 


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