物流IEを育成する(後編) 物流人財育成(その3)

 明日の物流を支える物流人財の育成について、6回に分けて解説します前回のその2に続いて解説します。今回は、物流IEを育成するの後編です。
 

◆物流IEを育成するには

 IE的思考を鍛えつつ、さらにIEの素養を磨いていくために簡単な手法を使った分析をしていくことをお勧めします。
 

・工程分析

 「工程分析」は、モノの動きに沿って、加工・運搬・検査・停滞の四つの状態(節)に仕分けていく手法です。本来であれば加工のみが付加価値作業と言えます。従ってそれ以外にどのようなムダがどれぐらいあるのかがこの分析から見えてくるのです。
 
 一つのモノが倉庫や工場に入ってから出ていくまでに多数の節があり、そしてその節の中にいかにムダが多いのかに驚くことでしょう。例えば運搬が多いことに気付いたとします。一つの製品を複数の場所に移動しながらピッキング、値札付けや梱包を行っていた場合、その運搬をいかに減らすかといった改善の糸口を見つけることができるようになるのです。
 

・稼働分析

 「稼働分析」は、作業者や設備の稼働状況を観察し、稼働状態が良いのか悪いのか、その中にどのようなムダが隠れているのかを発見する手法です。
 
 稼働分析には連続稼働分析とワークサンプリングの二種類があります。前者は一日中作業者や設備に張り付いてどのような作業や動きをしているのかを時間値で把握する手法です。観察者は大変ではあるが、精度の高い情報を得ることが可能です。後者は一定間隔で作業者や設備を観察し、稼働状況を調査する手法です。
 
 例えば30秒おきに観察し、その時点での動きを把握します。それを資材準備14回、運搬37回といったように回数で記録していき最終的にその回数を比率に置き換えます。どのような作業に時間をかけているのかは、この比率から推定できるのです。
 
 また、観察回数であるサンプル数を増やしていくことで精度が向上していくことは言うまでもありません。物流は移動を伴う作業であるため、作業者に張り付くことが必ずしも用意でない場合があります。そのような時はワークサンプリングは有効な手段であると思われます。梱包作業やピッキング作業は連続稼働分析で、フォーク運搬などの運搬作業はワークサンプリングが適しているでしょう。
 
 では実際にトラックに同乗し、トラックドライバーがどのような作業をしているかを連続稼働分析で調査をしてみましょう。トラック輸送の本来の付加価値作業は積み込み・輸送・荷降ろしにあります。ところが実際に分析してみると積み込み時の待機やフォーク待ち、荷降ろし場での迷いや荷崩れの修正といったムダに時間を割かれていることがわかります。その時点で改善案もいくつも出てくるでしょう。
 

・物流IEの使命

 上述の分析を行い、物流の実態を定量的に把握するとともに改善案を提言することを繰り返していくことで物流IEが育...
っていくのです。
 
 物流IEの役割は改善活動を通して会社収益向上に貢献することです。従ってせっかく育てた彼らにあまり余分なことをやらせてはいけません。当面は物流現場の改善活動に専念させることが望ましいでしょう。一方で前回も書かせていただいたとおり、IEはホテルや病院といったサービス業にもすっかり定着した感があります。そこで徐々に自社のあらゆる業務に対して彼らの活動領域を広げていき、将来的には顧客に対するコンサルティングにも活用していって欲しい。それをきっかけに新たなビジネスを生み出せる可能性も十分に考えられるでしょう。
 
 この文書は、『月刊ロジスティクスIT』の記事を筆者により改変したものです。
 

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