半導体は「装置」が支配する~第4回 なぜ半導体工場は装置メーカーを変えられないのか、1社依存が起きる本当の理由~

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半導体は「装置」が支配する~第4回 なぜなぜ半導体工場は装置メーカーを変えられないのか、1社依存が起きる本当の理由~

【目次】

    はじめに

    半導体業界のニュースを見ていると、こんな言葉をよく目にします。「○○社製の装置に依存」「代替が難しい」「供給停止リスク」普通に考えれば、不思議です。装置メーカーは複数ある。性能も高い。技術も進歩している。ならば、「もっと安いメーカーに替えればいいのでは?」と思います。ですが、半導体業界では、それが簡単にはできません。むしろ現実には、“いったん採用した装置を、何年も使い続ける”ことが非常に多いのです。なぜでしょうか。それは、単なる「機械の入れ替え」では済まない世界だからです。そこには、歩留まり・プロセス整合性・条件再現性・検証コスト・量産安定性という、極めて深い問題があります。

     

    関連解説記事:半導体は「装置」が支配する~ 第1回 なぜ世界は半導体製造装置に注目するのか~

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    ◆関連解説記事:半導体は「装置」が支配する~第3回 なぜ半導体製造装置は簡単に真似できないのか 、図面を見ても再現できない「現場知見」の正体

     

    半導体は「装置」が支配する~第4回 なぜなぜ半導体工場は装置メーカーを変えられないのか、1社依存が起きる本当の理由~

     

    1. 工場の本来求めているのは『結果が変わらないこと』

    半導体は「装置」が支配する~第4回 なぜなぜ半導体工場は装置メーカーを変えられないのか、1社依存が起きる本当の理由~

    今回は、なぜ半導体製造装置で“一社依存”が起きるのか。その理由を、現場視点で分かりやすく解説していきます。半導体工場が本当に欲しいのは「高性能な装置」ではない。一般的な産業機械では、「同じ能力なら代替可能」という考え方が成立します。たとえば工作機械なら、加工精度・ストローク・回転数・剛性などが満たされれば、ある程度の置き換えは可能です。ですが、半導体装置は違います。半導体工場が本当に求めているのは、“昨日と同じ結果を、今日も出せること”です。ここが非常に重要です。半導体では、ナノレベルの変化が歩留まりに直結します。つまり、少し条件が変わるだけで、良品率が落ちる。場合によっては、量産そのものが不安定になります。だから工場側は、「性能が高いか」よりも、「結果が変わらないか」を重視するのです。ここが、普通の機械産業との大きな違いです。装置を変えると、「全部」がズレ始めるたとえば、あるエッチング装置を別メーカー製へ変更したとします。仕様上は同等。カタログ性能も近い。ですが実際には、ここで大きな問題が起きます。それは、“プロセス条件が全部変わる”ことです。

     

    2. 装置を変えると、『全部』がズレ始める

    半導体は「装置」が支配する~第4回 なぜなぜ半導体工場は装置メーカーを変えられないのか、1社依存が起きる本当の理由~

    同じガス流量でも、チャンバー構造が違う。同じRF出力でも、プラズマ分布が違う。同じ温度設定でも、熱の伝わり方が違う。つまり、「数字が同じ」=「結果が同じ」ではないのです。ここが半導体製造の難しさです。半導体装置では、見えない差が大量に存在します。

    • 気流。
    • 熱分布。
    • 振動。
    • ...

    半導体は「装置」が支配する~第4回 なぜなぜ半導体工場は装置メーカーを変えられないのか、1社依存が起きる本当の理由~

    【目次】

      はじめに

      半導体業界のニュースを見ていると、こんな言葉をよく目にします。「○○社製の装置に依存」「代替が難しい」「供給停止リスク」普通に考えれば、不思議です。装置メーカーは複数ある。性能も高い。技術も進歩している。ならば、「もっと安いメーカーに替えればいいのでは?」と思います。ですが、半導体業界では、それが簡単にはできません。むしろ現実には、“いったん採用した装置を、何年も使い続ける”ことが非常に多いのです。なぜでしょうか。それは、単なる「機械の入れ替え」では済まない世界だからです。そこには、歩留まり・プロセス整合性・条件再現性・検証コスト・量産安定性という、極めて深い問題があります。

       

      関連解説記事:半導体は「装置」が支配する~ 第1回 なぜ世界は半導体製造装置に注目するのか~

      関連解説記事:半導体は「装置」が支配する~第2回 なぜ日本の装置・部材は外せないのか~見えない技術が世界の半導体を止める理由~

      ◆関連解説記事:半導体は「装置」が支配する~第3回 なぜ半導体製造装置は簡単に真似できないのか 、図面を見ても再現できない「現場知見」の正体

       

      半導体は「装置」が支配する~第4回 なぜなぜ半導体工場は装置メーカーを変えられないのか、1社依存が起きる本当の理由~

       

      1. 工場の本来求めているのは『結果が変わらないこと』

      半導体は「装置」が支配する~第4回 なぜなぜ半導体工場は装置メーカーを変えられないのか、1社依存が起きる本当の理由~

      今回は、なぜ半導体製造装置で“一社依存”が起きるのか。その理由を、現場視点で分かりやすく解説していきます。半導体工場が本当に欲しいのは「高性能な装置」ではない。一般的な産業機械では、「同じ能力なら代替可能」という考え方が成立します。たとえば工作機械なら、加工精度・ストローク・回転数・剛性などが満たされれば、ある程度の置き換えは可能です。ですが、半導体装置は違います。半導体工場が本当に求めているのは、“昨日と同じ結果を、今日も出せること”です。ここが非常に重要です。半導体では、ナノレベルの変化が歩留まりに直結します。つまり、少し条件が変わるだけで、良品率が落ちる。場合によっては、量産そのものが不安定になります。だから工場側は、「性能が高いか」よりも、「結果が変わらないか」を重視するのです。ここが、普通の機械産業との大きな違いです。装置を変えると、「全部」がズレ始めるたとえば、あるエッチング装置を別メーカー製へ変更したとします。仕様上は同等。カタログ性能も近い。ですが実際には、ここで大きな問題が起きます。それは、“プロセス条件が全部変わる”ことです。

       

      2. 装置を変えると、『全部』がズレ始める

      半導体は「装置」が支配する~第4回 なぜなぜ半導体工場は装置メーカーを変えられないのか、1社依存が起きる本当の理由~

      同じガス流量でも、チャンバー構造が違う。同じRF出力でも、プラズマ分布が違う。同じ温度設定でも、熱の伝わり方が違う。つまり、「数字が同じ」=「結果が同じ」ではないのです。ここが半導体製造の難しさです。半導体装置では、見えない差が大量に存在します。

      • 気流。
      • 熱分布。
      • 振動。
      • 排気特性。
      • 部材表面の状態。

       

      3. 半導体製造は『工程の連鎖』で成り立つ

      こうした微妙な違いが、最終結果に影響します。そして厄介なのは、“原因がすぐに見えない”ことです。半導体製造は「工程の連鎖」で成立している。半導体製造は、1工程だけで完結しているわけではありません。前工程の結果が、次工程へ影響します。そしてその積み重ねで、最終品質が決まります。つまり、1台の装置変更が、工場全体へ波及する可能性があるのです。


      たとえば、

      • エッチング条件が少し変わる
      •    ↓
      • 膜厚バランスが変わる
      •    ↓
      • 次工程の露光条件がズレる
      •    ↓
      • 配線寸法が微妙に変化する
      •    ↓
      • 最終的に歩留まりが悪化する

      こうした連鎖が起きます。しかも厄介なのは、異常がすぐには出ないことです。数週間後。数ロット後。量産拡大後。そこで初めて問題が表面化することもあります。だから半導体工場は、「新しい装置」そのものを警戒します。

       

      4. 装置変更は『巨大な検証プロジェクト』

      本当に怖いのは、“未知の変化”だからです。装置変更は「設備購入」ではなく「巨大な検証プロジェクト」、半導体工場で装置を変更するとき、実際には巨大な検証が行われます。単に搬入して終わりではありません。評価項目は膨大です。


      たとえば、

      • 膜厚ばらつき
      • CD(線幅)変動
      • 粒子発生量
      • 歩留まり
      • 長期安定性
      • 異常発生率
      • メンテナンス性
      • 再現性
      • 稼働率


      など。しかも、一回測れば終わりではありません。何百枚ものウェハを流し、長期間データを取得し続けます。昼夜連続で評価を行うことも珍しくありません。

       

      5.一度シェアを取ると、さらに強くなる『勝ちの循環』

      装置変更とは、「設備購入」ではなく、“巨大な実験”なのです。ここに、莫大な時間とコストが発生します。そして実際には、装置価格より、検証コストの方が高くなることすらあります。だから工場側は簡単にメーカーを変えません。実は「装置性能」より、“サポート力”が非常に重要です。


      半導体工場が見ているのは、装置性能だけではありません。本当に重要なのは、“問題発生時に支えられるか”です。半導体工場では、停止時間が巨額損失になります。1時間止まるだけで、莫大な損失が発生することもあります。だから工場側は、夜中でも来る・原因解析が速い・過去事例を持っている・復旧経験が豊富・改善提案ができる。こうしたメーカーを強く信頼します。


      つまり顧客は、「装置」ではなく、“安心”を買っているのです。ここが、普通の産業機械と大きく違う点です。一度シェアを取ると、さらに強くなるここが半導体装置業界の恐ろしい構造です。

      • 採用される
      •   ↓
      • データが増える
      •   ↓
      • 改善が進む
      •   ↓
      • 歩留まりが安定する
      •   ↓
      • さらに採用される


      という循環が起きます。つまり、量産現場で使われること自体が、最大の競争力になるのです。すると後発メーカーは、単に性能で勝つだけでは足りません。既存メーカー以上に、安定性・信頼性・検証実績・サポート体制・長期データまで証明しなければならない。これは極めて難しい。だから半導体製造装置は、“一度強くなると、非常に崩れにくい”産業構造になっています。「技術力がある」だけでは勝てない世界。ここを誤解している人は多いです。

       

      6. 『技術力がある』だけでは勝てない世界

      半導体装置産業では、「優れた技術がある」だけでは勝てません。本当に重要なのは、“工場が安心して使い続けられるか”です。


      つまり必要なのは、

      • 再現性
      • 安定性
      • 継続サポート
      • 異常対応力
      • 改善速度
      • 長期信頼性


      なのです。これは、単なる研究開発力とは違います。むしろ、“地味な改善を、何年も積み上げられる力”が重要になります。ここに、日本メーカーが強みを持ちやすい理由もあります。派手な技術革新だけではなく、現場改善・品質安定化・継続サポートを積み重ねる文化が強いからです。

       

      まとめ:工場の本当に恐れているのは『結果が変わること』

      半導体製造装置で“一社依存”が起きるのは、単なる囲い込みではありません。そこには、

      • 膨大な検証コスト
      • 歩留まりリスク
      • 工程全体への影響
      • 長年の現場知見
      • 量産安定性への依存


      があります。半導体工場が本当に恐れているのは、「新しい装置」ではなく、“結果が変わること”なのです。だから装置メーカーは、単なる機械メーカーではありません。実際には、“安定量産を支えるパートナー”として選ばれています。ここに、半導体製造装置産業の本当の強さがあります。

       

      本記事では、半導体製造装置の“一社依存”が起きる理由を、現場視点で解説しました。ですが実際の設計現場では、

      • なぜ再現性が重要なのか
      • なぜ条件変更が危険なのか
      • なぜ安定性設計が難しいのか
      • なぜ「理論通り」が通用しないのか
      • なぜ量産で初めて問題が出るのか


      といった、さらに深い視点が重要になります。半導体製造装置の世界は、「高性能を作る世界」ではなく、“安定して同じ結果を出し続ける世界”なのです。

       

      【次回予告】

      半導体は「装置」が支配する~第4回 なぜなぜ半導体工場は装置メーカーを変えられないのか、1社依存が起きる本当の理由~

      次回は、「なぜ半導体製造装置は“超高額”でも売れるのか」をテーマに解説します。数百億円規模になる装置。それでも半導体メーカーは導入を続けます。なぜなのでしょうか。そこには、

      歩留まり1%の価値
      停止損失
      量産速度
      微細化競争
      稼働率の経済性

      という、半導体業界特有の“桁違いの経済性”があります。次回も、現場視点で分かりやすく解説していきます。

       

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      この記事の著者

      森内 眞

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