社内の知識・情報を多様化する手段 研究テーマの多様な情報源(その3)

 今回は、社内全体を対象として「情報・知識の『源』を多様化する」ための具体的な有効な手段を2回に分けて議論してみます。

◆関連解説『ステージゲート法とは』

 

1.社内他事業部門・グループ企業訪問

 日頃研究所の研究者は、当然直接関係する事業部門とはかなり密接なコミュニケーションをとっています。しかし、関係のない担当外の事業部門とはほとんどコミュニケーションがないというケースが多く、企業規模が大きくなればなるほど、この傾向は強くなります。

 しかし、これまで議論してきたように、これまで関係がないと思っていたところに、新しい組み合わせが発生する可能性があるわけですから、研究者には関連がないと思っていた事業部門とコミュニケーションを行うことは重要な活動です。

 そのための方策の1つが、研究者が他の事業部門を訪問し、工場見学やその事業や技術の説明を受け、加えて共同でのテーマ創出の可能性などを議論することです。すぐに良いアイデアがでる訳ではありませんので、ここでのテーマ創出議論の目的はあくまでその部門の事業、市場、技術などを理解することと、その事業部門とのコミュニケーションのきっかけを作ることとするのが現実的です。これは極めて簡単ですので、私もよくクライエントにこの提案をしています。

 このような活動は、すぐに成果を生み出すわけではありません。従来の価値観から言えば、「忙しいのに何をやっているんだ」、と言われてしまうかもしれません。しかしこれに限らず、イノベーションを起こすには、辛坊強く一見無駄に思えるようなことに地道に取組むことが重要視されています。冗長性はイノベーションのキーワードですね。

 受け入れをする事業側にとっても、常日頃の顧客やパートナーへの対応と同じような受け入れをすれば良いだけで、特に大きな負担は発生しないでしょうから、早速、研究組織から事業部門に提案をしてはどうでしょうか?

 

2.技術内覧会

 近年、研究所の技術を定期的に社内やグループ企業に紹介する場として、技術内覧会を開催する企業が増えてきています。直接関係のある事業部門だけではなく、他の部門の人達に研究所の活動内容や手掛けているテーマを紹介することは、今後のテーマ創出にとって意義あることです。また研究者の立場からも、担当する技術や周辺分野に関し、より市場に近い様々な領域の担当者から情報を収集する機会としても有効です。

 

3.テーマ・アイデアの社内公募

 社内でのテーマ公募は、後に議論をするメンバーの多様化と重複する活動ですが、社内に散らばる情報や知識を活用する有効な方法です。テーマの公募経験がある企業は、数多くあるように思えますが、継続的に筋のよいテーマを創出している例は意外に聞きません。

 その理由は、企業側がしっかり長期に取り組む姿勢と、戦略を持っていないからではないかと思っています。例えば、対象分野を問わないということになれば、企業の活動とは相当かけ離れ、自社が手掛けるには相当なギャップのあるテーマが出てきてしまいます。その結果公募側は、提案内容に対して本気になって検討することも、きちんとフィードバックすることもありません。そうなると、起案側の熱が冷めてしまうということが起こります。

 従って、テーマ・アイデアの社内公募を行うには、以下の長期的・戦略的な視点が欠かせません。

(1)単なる組織の活性化ではなく、新しい事業を創出するためのアイデアを対象とする。

(2)テーマ創出の前提や対象分野を自社の戦略と直結させる。例えば、対象市場分野や活用すべき自社の強みなどを明示する。

(...

3)提案されたテーマには、それがどんなにつまらないアイデアであっても、公募側から起案者に誠実・丁寧にフィードバックをする。提案は今回一度だけではないことを、肝に銘じるべきです。

(4)表彰により選定されたテーマやその提案者を社内に広く伝え、表彰する。また表彰の社内でのプレゼンスを高める工夫(表彰セレモニーに社長が必ず出席するなど)をする。

(5)選定されたテーマは、成功に導くべく積極的な支援を行う。これは会社として社内のアイデアを大変期待・重視をしているというメッセージになる。また成功すれば、社内公募の成功事例としてPRすることができる。

(6)長期的な取組とする。1回しか開催しないのであれば、社内公募はうまくいかなかった、会社としては社内のアイデアを重視しないというメッセージとして伝わってしまう。

 

次回は、この項の後編です。

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