結晶格子とは何か?構造や数値についてわかりやすく解説



結晶という言葉は日ごろ雪や塩、宝石など目に見える、多くの場合美しい物体の形について用いられ、転じて「努力の結晶」などの比喩的表現もあります。しかし、結晶は目に見える形に現れるものだけではなくさまざまな物質の内部に存在し、その粒子配列の構造、すなわち結晶格子によって物質の性質が異なってきます。結晶格子とは何か?構造とそれに関わる数値について解説します。

【目次】


    結晶格子とは何か?

    結晶格子とは結晶内の粒子配列の構造を表したもので、その最小の繰り返し単位を単位格子といいます。
    結晶とは、原子、分子、イオンなどの粒子が三次元的に規則正しく配列した固体物質のことです。雪、塩、ダイヤモンドなど日常生活で結晶と呼ぶ物体は、この粒子の規則正しい配列の繰返しにより、肉眼や光学顕微鏡で見える大きさの形状が生成されたものです。
    ここでは金属結晶に多く見られる結晶格子について解説していきます。金属材料の性質は、その結晶格子によって大きく左右されます。

    単位格子の構造

    主な単位格子の構造である体心立方格子構造、面心立方格子構造、六方最密充填構造について見ていきます。
    体心立方格子構造は、立方体の形をした単位格子の中心と各頂点に原子が位置する構造です。面心立方格子構造は、立方体の形をした単位格子の各面の中心と各頂点に原子が位置する構造で、立方最密充填構造とも呼ばれます。また六方最密充填構造は、正六角柱の上面・底面の各頂点および中心と、六角柱内部の高さ1/2のところに3個の原子が位置する構造で、稠密六方格子構造とも呼ばれます。六方最密充填構造の単位格子は、この正六角柱を縦に 3 等分した菱形柱です。


    【図1】単位格子の構造

    (ものづくりドットコム解説記事「構造 金属材料基礎講座(その1)」より引用)

    単位格子の粒子数

    単位格子に含まれる原子数は、それぞれ以下のようになります。
     体心立方格子:合計2個(1/8×8+1)
     面心立方格子:合計4個(1/8×8+1/2×6)
     六方最密充填構造:合計2個(1/12×4+1/6×4+1)

    単位格子の配位数

    配位数とは1個の粒子を取り囲む他の原子の数のことで、それぞれ以下のようになります。
     体心立方格子:8個
     面心立方格子:12個
     六方最密充填構造:12個

    単位格子の格子定数・原子半径

    格子定数とは、結晶軸の長さおよび軸間角度のことです。体心立方格子や面心立方格子は立方体の形をしているため、格子定数は単位格子の1辺の長さになり、原子半径との関係はそれぞれ以下のようになります。
     体心立方格子:r=√3a/4
     面心立方格子:r=√2a/4
      a:格子定数、r:原子半径
    また六方最密充填構造の単位格子の高さおよび一辺の長さと原子半径との関係は、以下のようになります。
     h=4√6r/3
     a=2r
      h:単位格子の高さ、a:一辺の長さ、r:原子半径

    単位格子の充填率

    充填率とは、単位格子の体積に占める原子の体積の割合のことです。上で述べた格子定数と原子半径から求めることができます。
     充填率=原子の体積/単位格子の体積×100
    充填率の値は以下のようになります。
     体心立方格子:68%
     面心立方格子:...

    74%
     六方最密充填構造:74%
    面心立方格子と六方最密充填構造の充填率は74%と等しく、これらを最密重点と呼びます。

    単位格子の密度

    単位格子の密度はg/cm3の単位で示され、既に述べた単位格子に含まれる原子数、格子定数と、それぞれの原子の原子量、およびアボガドロ定数から求めることができます。
     d=M×原子数/a3NA
      d:密度(g/cm3)、M:原子量(g/mol)、a:格子定数(cm)、NA:アボガドロ定数

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    はじめに述べたように、金属材料の延展性などの性質は結晶格子によって大きく左右されます。ものづくりドットコムでは、金属材料の基本からしっかりと学べる連載記事『金属材料基礎講座』をはじめ、金属材料に関する記事やセミナーを多数紹介しています。

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    まとめ

    結晶格子とは結晶内の粒子配列の構造を表したもので、その最小の繰り返し単位を単位格子といいます。主な単位格子の構造として体心立方格子構造、面心立方格子構造、六方最密充填構造があります。それぞれの単位格子の構造、粒子数、配位数、格子定数、充填率、密度について解説しました。

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