発生させない クリーンルームの4原則 (その2)

 クリーンルーム4原則の2番目として、クリーンルームに入ったらゴミ、埃などを発生させない、発生させる行為をしないと言うことについて、今回は説明します。

 

1.無駄な動きをしない

 人は歩いたり、走ったり、屈む、座るなど色々な行動をします。その際、防塵衣の中で発生したゴミが、防塵衣の隙間から吹き出します。また座ることで、床のゴミが、防塵衣に付着したり、立つ時に舞い上がってしまいます。従って、無駄な動きを無くすことで、極力ゴミの発生を抑えることが大切です。

 もちろん、クリーンルームの中で座ることは禁止です。製品を組み立てや加工する時、動作を極力小さくしたり、手足を効率的な動きにすることを動作経済の原則と言います。また、人の行動や製品の流れ(動線)を分析し、戻りのないスムーズな流し方をする“流れ矢線化”と言う考え方もあります。製品を、矢が流れるように滑らかな動きにするということです。従って、人の動きも緩やかになります。

 これは、生産効率を高めるための考え方ですが、同時に発塵を少なくすることにもなります。

  

2.防塵衣を正しく着用する

 防塵衣の着用方法が悪いと埃が隙間から吹き出し、クリーンルーム内に撒き散らすことになります。人は最大の発塵源、汚染源と言いますが、このゴミが防塵衣の外に吹き出すわけです。ただ着れば良いのではありません。

 時には腕まくりをしたり、袖のゴムが緩んでいたり、腰回りを紐やゴムできちんと締めてないとか、首元までファスナーをきちんと上げてないなども見かけます。折角高価な防塵衣を購入したのですから、その機能を生かした着用方法や管理をしましょう。

 

3.防塵紙であっても、丸めたり、切ったりしない

 防塵紙はゴミが出ない紙という先入観があり、無塵紙と呼ぶ場合もありますが、扱い方によってはゴミが出ます。一般に紙は周囲からゴミが出やすいため、メーカーごとに周囲からゴミが出ないよう色々な工夫がされています。また、内部にも長繊維を織り込むなど、繊維の脱落を防いでいます。これを切ったり、破いたりすると、それらの工夫が生きて来ません。

 隅にメモしただけの場合、もったいないと言うことで、防塵紙を小さく切ってメモ用紙にしている場合なども見かけますが、周囲からの発塵を押さえるための工夫が役に立たなくなってしまい、ゴミが出ます。また丸める行為も、表面の繊維が起きて脱落することがあります。捨てる時も、切ったり丸めたりせずに、原型のまま捨てて欲しいものです。

 

4.人の入室は最小限にする

 “クリーンルームの中での最大の発塵源は人である”と古くから言われています。この人を極力減らすことで、クリーンルーム内で発生するゴミを減らすことが可能です。

 私も多くのところに現場診断、指導に行きましたが、清浄度が高い/低いに限らずクリーンルームへ入れる人数を制限しているところは多かったです。

 入室最大人数を表示したり、入室可能な人数分のバッジを用意し、それを装着して入室するようにして、在庫が無くなるとそれ以上の人は入室出来ない仕組みにするとか、入り口の札を裏返すことで現在の入室人員を明確にするなど、色々な工夫がされていました。

 

5.発塵の少ない材料を使用する

 クリーンルームの中には出来るだけものを持ち込まないことが良いのですが、どうしても持ち込む必要がある時は、発塵の少ないものを選定することが必要です。例えば、作業記録などで必要な筆記具でも、シャープペンシルやノック式のボールペンは発塵量が多いので、持ち込まないほうが良いです。シャープペンシルは芯の粉が出ますし、ノック式のボールペンは、ノック時、12ミクロン程度の大きなゴミが沢山出ます。主には金属粒子です。従って、微細な製品を扱うところでは、製品品質に影響が出ます。

 こういうところでは、品質担当等が評価...

し、品質に影響のないものを決め、会社から現場メンバーに貸与することで、持ち込みを制限しているところもあります。クリーンルーム用のペンも市販されています。

 紙も、先にのべたとおり、普通紙よりも防塵紙の方がゴミ、パーティクルの発生は少ないです。普通紙は、原料がパルプですから、短繊維の集合体です。繊維が短く、繊維同士の絡みがないため、脱落してゴミになります。

 ここでは一例のみ紹介しましたが、気がつかないことやより細かなこと、人によって解釈が違うこと等もありますので、ルール、標準化するのが良いでしょう。具体的には、“クリーンルームへの持ち込み標準”を制定します。製品品目、要求されるクリーン度等で違いがありますが、持ち込み可能な物、持ち込んではいけないもの、それはなぜ?について細かく決めるものです。

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