第七章 事業環境 ものづくり白書を5分で読む。(その7)

 

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全274ページにわたる「ものづくり白書:2022年度版」の各章を5分の内容に要約して解説します。

 

本連載では、次のような悩みを解決できます。

本連載は、このような悩みを解決できるように、「ものづくり白書:2022年度版」をまとめたものです。

 

1.ものづくり白書とは

ものづくり白書は、政府が作成する国内産業の状況や技術の動向をまとめた資料です。2022年度版は、2022年5月に経済産業省、厚生労働省、文部科学省の3省が共同で、取りまとめた資料です。ページ数は、274ページになります。この連載では、各章ごとに重要なポイントを抜粋して、5分で読める内容で解説します。今回は、第1部第7章です。

 

2.「第7章 事業環境」の内容

第7章の「事業環境」では、カーボンニュートラルや人権問題、デジタル人材やサイバーセキュリティについて動向や調査結果が示されています。今回はそれらを1つ1つ説明していきます。

 

3.カーボンニュートラルへの取り組みについて

カーボンニュートラルへの取組の必要性や実現に向けての活動を、説明します。

【ポイント】

カーボンニュートラルに向けての取り組みは広がっており、必要性を認識している企業は約3割であることがわかりました。(図710-1、2)

 

 

4.国際的な民間主導の炭素中立化に向けた取組について

国際的な民間主導の炭素中立化にむけた取り組みについて説明します。

 

(1)COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会合)について

2021年のCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会合)では、パリ協定6条(市場メカニズム)をはじめとする重要な交渉議題で合意に至りました。
内容は「パリ・ルールブック」が完成するのみならず、議長国・英国の主導で実施された各種テーマ別の「議長国プログラム」でも様々なイニシアティブが発表され、国家レベルでの国際協調が進でいます。

 

(2)米国のFMCについて

米国ではCOP26において、ケリー米気候問題担当大統領特使と世界経済フォーラム(WEF)が、産業部門の炭素中立化及びその市場創出に向けたFirst Movers Coalition(FMC)イニシアティブが立ち上がりました。内容は2050年までにネット・ゼロという目標を達成するために必要な重要技術の早期市場創出に向け、グローバル企業がグリーンな製品の調達にコミットするためのプラットフォームです。
※ネット・ゼロ:大気中に排出される温室効果ガスと、除去される温室効果ガスが同量の状態のこと

 

(3)日本の「GXリーグ」について

日本でも企業主体の取組を後押しする仕組みである「GXリーグ」の構築に向けて準備が進んでいます。「GXリーグ」は、野心的な炭素削減目標を掲げる企業が、自らCO2排出量の削減に向けた取組を進め、目標に満たなかった場合には、自主的に企業間での排出量の取引を行う構想です。2023年度に本格運用を開始すべく、2022年度に議論と実証を行う予定です。

 

(4)気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)

2015年4月のG20で気候関連課題について金融セクターがどのように考慮していくべきか検討するよう金融安定理事会に要請されたことを受けて、同年12月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)が設立されました。

 

2017年6月の最終報告書では、企業に対して、自社ビジネスに影響をもたらす気候関連リスク・機会に関して、7つの「効果的な開示のための基本原則」を示しました。また移行計画で考慮すべき要素として、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの開示を要求しています。

 

(5)日本のTCFDコンソーシアム

日本では2019年に民間主導のTCFDコンソーシアムが設立され、TCFDサミットの主催など、TCFDの活用・発展を主導しています。また2021年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂を受けて、プライム市場上場企業に対して、TCFD又はそれと同等の国際的枠組みに基づく開示を促しています。

 

5.日本のカーボンニュートラル実現にむけた取り組みについて

日本のカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みについて説明します。

 

(1)グリーンイノベーション基金

2020年10月に宣言した2050年カーボンニュートラルを踏まえて、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(グリーン成長戦略)を策定しました。グリーン成長戦略では、今後成長が期待される14分野と各分野で目指すべき高い目標を示した上で、予算、税、規制改革・標準化、民間の資金誘導などの政策を総動員して民間企業等の取組を後押ししていくこととしています。(図 712-1)

 

 

また総額2兆円の「グリーンイノベーション基金」が、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構に創設されました。

 

(2)温室効果ガス排出削減目標(SBT:Science Based Targets)への参加

SBT(Science Based Targets)とは、各企業が設定する温室効果ガス排出削減目標ことで、国際的な環境 NGOである4団体によって運営されています。このSBTに参加する日本企業は年々増加しており、2022 年3月8日時点で195社となっています。中小企業も2022年3月8日時点で49社(うち製造業は12社)となっています。
※中小企業はSBTの分類による

 

6.ビジネスと人権に関する国際的な動向について

ビジネスと人権に関する国際的な動向について説明します。

 

(1)ドイツのサプライチェーン法

ドイツでは、2021年6月、サプライチェーン法が成立しました。一定規模以上の企業に人権DDの実施や、その結果に関する報告書の作成・公表等を義務付けており、2023年1月から施行される予定となっています。

 

(2)EUの取り組み

EUでは、2021年7月に、「EU企業による活動・サプライチェーンにおける強制労働のリスク対処に関するデュー・ディリジェンス・ガイダンス」を発表し、企業に対し、強制労働のリスクに対処するために必要な取組を指南しています。また2022年2月には、欧州委員会が「企業持続可能性 DD指令案」を公表しました。本指令案は、EU域内の大企業(域内で事業を行う第三国の企業も含む)に対し、人権や環境 のDD実施等を義務付けるものです。(採択されれば、各国は2年以内に国内法を制定することが求められる)

 

(3)米国のウイグル強制労働防止法

米国では、2021年12月、中国の新疆ウイグル自治区で一部なりとも生産等された製品や、米国政府がリストで示す事業者により生産された製品は、全て強制労働によるものと推定し米国への輸入を禁止する「ウイグル強制労働防止法」が成立しました。(2022 年6月施行予定)

 

(4)日本の「ビジネスと人権」に関する行動計画

日本では2020年10月に「ビジネスと人権」に関する行動計画を策定しました。その中では、規模や業種等にかかわらず、日本企業に対して、人権DDの導入促進を期待する旨を表明しています。また現状の調...

査では、人権DDの実施率は約5割程度にとどまっており、取組には改善が必要であることが明らかになりました。

 

7.デジタル人材育成について

国内のデジタル人材(デジタル技術を導入する際、システムなどの全体設計ができる人材や、AIを活用して多くのデータから新たな知見を引き出せる人材)の調査結果について説明します。

 

【ポイント】

  • 企業が求めるIT人材は、量・質共に不足している
  • 「大幅に不足している」「やや不足している」の割合は、米国では約4割であるが、日本では約8割となっている

日本のデジタル人材は、国際的な比較で、不足していることがわかりました。(図 722-1、2)

 

 

8.サイバーセキュリティについて

サイバーセキュリティの中で、ラムサムウェアの被害について説明します。※ランサムウェア:システムへのアクセスを制限し、被害者に身代金を要求するウイルス

 

【ポイント】

  • ランサムウェア被害件数は年々増加している
  • ランサムウェア被害件数の内訳は、中小企業が過半数を超えている

 

ラムサムウェアの被害は拡大しているため、対策が必要となります。また(独)情報処理推進機構は、2020年度に中小企業のランサムウェアなどのウイルスを検知、無害化を実施した件数が1,345 件であったことを明らかにしました。(図 727-1・2)

 

 

【参考文献】

経済産業省「令和3年度ものづくり基盤技術の振興施策」(ものづくり白書)
閲覧日:2022年6月5日

 

◆関連解説『事業戦略とは』

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