クリーン化の進め方 クリーン化について(その43)

 

 

 前回、クリーンルームの定義について説明しました。概念図でクリーンルームのイメージがおよそ把握できたと思います。クリーンルームは、以下の5つの方式があります。このうちものづくりの分野で良く使われている2つの方式を次の図で解説します。

 

図1.クリーンルームの方式と特徴

 

1.垂直層流方式

 最左に記した方式です。半導体、表示体、水晶デバイスなどで、特に微細な製品加工に用いられるタイプです。クリーンルームの断面図で説明します。天井全面がフィルターになっています。このフィルターを通し、きれいな空気が供給されます。また、床(点線で表示)は全面穴あきです。天井全面からフィルターを通し供給されたきれいな空気は、床全面にまっすぐ落ちるので、垂直層流方式、あるいはダウンフローなどと言います。

 しかしこれは設計上の話であって、実際には天井のフィルター下に搬送ライン(天井搬送)があるとか、床を搬送ロボットが走る。あるいは設備があるとか、その設備に除材、給材をするロボットがあるなど、障害物があれば斜流や乱流が起きます。

 乱流や斜流がある場合、気流の風下に製品があれば、品質に影響が出る場合があります。

 人が通行すると、垂直の気流を遮ったり、気流が乱れることになります。高い清浄度を確保することはクリーンルームがやってくれるのではなく、そこで働く人の知識、意識も高くなくてはいけません。作業者へのクリーン化の教育は必要です。

 この方式は、汚れた空気をきれいな空気に置き換える考え方で、清浄化メカニズムは、置換と言われます。常に大量の空気を入れ替えているので、運転費用は高額になります。

2.乱流方式 

 図の中央のタイプです。垂直層流方式ほど清浄度が高くないクリーンルーム。クラス1,000(Fed.Std)からクラス100,000くらいまで幅広いです。クラス1,000では、製品によっては、半導体前工程で採用しているところもあります。また、半導体、水晶、液晶事業の後工程や、その他層流方式ほど高い清浄度を要求されない現場では、クラス10,000、クラス100,000のクリーンルームが採用されています。

 取引先からクリーンルーム化を要求され、改造や新設する場合も多いでしょう。国内の床面積では、この乱流方式が最も多いと言われています。

 この方式は図にあるように、天井のところどころにフィルターが設置され、きれいな空気が供給されます。そのフィルター間の配置の距離はかなり離れています。天井全面からの供給ではないので、滞留している空気も多く、それに衝突するなどして乱流になります。また、床は穴あきではないので、ここでも気流は乱れます。

 この方式は、きれいな空気を少しずつ供給し、中の汚れを少しずつ薄める、希釈型のクリーンルームです。

 層流方式に比べ作業員が多く配置されているので、その人の行動などによっても汚れてしまいます。クリーン化4原則を着眼点に、現場をよく見ることが必要です。“私一人ぐらいは、あるいは少しぐらいはいいだろう”という考え方があると、様々なものを持ち込み、また発塵させる行為をしてしまいます。そしてクリーンルーム内の希釈が間に合わなくなります。

 こうなると、“クリーンルームという形をしたただの箱”になってしまいます。そして、品質は向上しないが、電気代は継続的にかかってしまうわけです。経営に影響する場合も出てきます。こちらは、特に作業者教育が重要かつ必須です。

 “クリーンルームの中では、人は最大の発生源、汚染源である”。そして、クリーンルームを汚すのもきれいにするのも人であることを認識してもらうため、クリ...

ーン化4原則に着目した対応が必要です。何のためのクリーンルームかを良く考え、そのクリーンルームに相応しい管理をしましょう。

 層流方式のクリーンルームを保有しているところは、教育の実施と厳しいクリーンルーム管理がされていると思います。乱流方式のクリーンルームの場合、客先からの要望でクリーンルーム化しても、管理のためのノウハウの指導がされないことが多いと感じています。

 実際に、今までの現場診断、指導などの経験から、クリーンルームにしただけで安心してしまうとか、管理方法を知らないところにもいくつか遭遇しました。潜在的にはたくさんあるでしょう。宝の持ち腐れにならないようきちんと管理しましょう。

 

 次回に続きます。    

 

◆関連解説『環境マネジメント』

↓ 続きを読むには・・・

新規会員登録


この記事の著者