クリーン化4原則-7 クリーン化について(その32)

 

 連載その16で『クリーン化4原則+監視の重要性』について述べました。ここでは、下図のクリーン化4原則について個別に解説しております。今回は、クリーン化4原則-7 「発生させない」について解説します。

 

図1. クリーン化4原則 

 

1. 事務用品・筆記具からの発塵

 次の写真はボールペンからの発塵(はつじん)データです。

写真説明:ノック式ボールペンからの発塵データ

 

 技術や品質部門のメンバーが現場に入る時、自身の筆記具を持ち込んでいたことがありました。そして作業者に話し掛けながらボールペンをカチャカチャやっているのです。その様子を見て、ボールペンは何をするものだろうと違和感を覚えました。もしその下に製品があったらどうなるのか気になったのです。

 もちろん、品質問題や様々な情報をメモする目的で持ち込むのでしょうが、そうではない使い方をしているのです。それをきっかけに発塵調査をしてみました。きれいなウエハ(ミラーウエハ)の上でカチャカチャやってゴミを採取し、これを測定機で粒径別にカウントしたものです。

 写真の最上段は、当時作業者に貸与していたキャップ式のもので、ゴミはほとんど発生しません。その下の2つはノック式で、比較的安価なものです。主な部品の構成はプラスチックです。1μmを超える粒径のゴミがやや出ます。一方、下の2つは、ノック式ですが、全体が金属製で高級感があります。ゴミは1μmから2.5μmを超えるものが異常に多く発生します。

 これは半導体の前工程だけでなく、表示体や水晶デバイスなどの前工程でも致命的な大きさです。このことから、クリーンルームに持ち込む筆記具は、ノック式でなくキャップ式が良いことが分かります。近年、クリーンルーム用のペンが販売されていますが、これはそのまま導入するのではなく、インクの成分を調べ、製品品質に影響がないことを確認してから採用して下さい。

 微細、超微細製品の加工エリアでは、その他の持ち込み品も調査、分析して許可を得ることが重要です。シャープペンはノックのたびに芯(しん)の粉がたくさん出ます。

 【発生させない  他の事例】

写真:顕微鏡ステージ

 上の写真のように顕微鏡ステージの裏面に、ステージをXY方向に動かすベルトがありますが、長時間使用することで、ベルトが劣化し、ゴミがボロボロと落ちた結果、付近に置いてある製品に付着した例があります。懐中電灯でベルト付近を観察するとこれらのゴミが付着しているのがよく分かります。
 
 もう一つ不具合事例を紹介します。セロテープ台の劣化事例です。クリーンルームではないですが現場診断や指導の際、見つけたものです。セロテープ台を裏返してみると写真1のように底面が劣化していました。別のエリアでは、それに気づいて底面の汚れた部分を除去していました(写真2)。

 写真1:セロテープ台の底  写真2:汚れた部分を除去

 本来、底面にはゴム状、またはスポンジ状のシートが張り付けてあります。これが作業台などの上で擦(す)られるため、徐々に擦り減ってしまうのです。これを発生源と判断し除去してしまうと、写真2のように鏡面が出てきます。底面の穴の中には、セメントの塊のようなものが入っています。(白く見える)テープ台を倒れ難くするための錘(おもり)です。底面のゴム状のシートの目的は、テープ台の滑り防止ほか、セメントのような砂状のゴミの吹き出し防止です。

 そのまま使い続けると、シートの劣化ゴミや砂状のゴミが出ます。再現実験ではテープを引き出す時のゴロゴロという振動時が最も多かったようです。テープは製品の近くで使う場合も多いのですが、重いゴミであり、周囲の製品や作業台よりも下部に置かれた製品...

などに影響します。

 作業台よりも低い位置に置かれた製品入り容器が、落下したゴミを被り次工程で発見された例もあります。対策として、底部に専用のキャップ(ビニール製のカバー)があるのでそれを使いましょう。応急的には、静電シート(静電クリスタル=静電シートの透明タイプ)で覆うことを勧めます。この静電シートは、摩擦係数が高く、引き摺(ず)り難いのでゴミはあまり出ません。

 

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 いくつか紹介しましたが、事例はたくさんあるため、すべての紹介は省きます。「ゴミを発生させない…」はここで終わりにいたしますが、様々な視点で現場をよく観察すると、多くのことに気づくと思います。現場密着で、観察力、着眼力を養いましょう。

 

◆関連解説『環境マネジメント』

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