関係性の種類、対立とは 普通の組織をイノベーティブにする処方箋(その97)

 

 現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を解説しています。今回は下記(6)の対立についてお話します。

◆関連解説記事『技術マネジメントとは』

1. 関係性の種類

 それでは、要素の間にはどのような関係性の種類があるのでしょうか?

(1) 原因と結果

 関係性で誰でもすぐ気が付くものに、原因と結果があります。ある要素が他の要素を生み出すという関係です。

(2) 影響を与える

 原因と結果のようにある要素が他の要素を生み出すというまでの強い関係ではなく、前者が後者になんらかの影響を当える関係も存在します。

(3) 包含

 ある要素が他のより大きな要素の一部になっている、すなわち包含されているという関係です。

(4) 重複(一部を共有)

 ある要素とある要素が完全に独立しておらず、一部を共有しているような関係です。

(5) 並列

 なんらかの関係性の全体の構造の中で、同じ位置付けであり、かつ両者間には重複はなく独立している関係です。

(6) 対立

 二つのものが互いに譲らないで張り合い反対の立場に立っている関係です。

 

2.「対立」とは何か

 私は「対立」を以下のように定義することとしました。何かを巡って、2つのものが異なる立場をとる。さらには、異なる立場をとる相手にこちらの立場をとるように圧力をかける。

(1) 意思をもたないものも「対立」するか

 ここで一つの疑問が湧きます。この「対立」の定義での主語は、その定義の中に「立場」とあるので、人間や組織また動物(餌を巡って動物同士が対立するなどの例がありますので)といった意思を持った生物だけなのかということです。しかし、例えば部品同士がある空間を巡り互いに対立する(干渉する)などということもありますので、必ずしも対立の関係にあるのは生物だけではなく、無生物や無形の概念などにも当てはまると考えることができます。

(2)「止揚」がイノベーションを生み出す

 それではこの対立の関係が、どうイノベーションに関係してくるかですが、まさに対立に対しての解決策として、哲学者のヘーゲルが考えた「止揚(しよう)」があり、それがイノベーションをもたらすと考えることができます。止揚とは、相対立するものが、その矛盾が調整され、より高い次元で解決が図られることを意味します。

(3) 対立点の本質を探り、両者の本質を解決するお互いが合意できる策を考える

 それでは対立・矛盾がどう調整されるかですが、対立はえてして表面的なレベルで生まれていることが多く、両者にその対立が生まれる奥底に存在する本質的な理由を考え、それを解決することが重要ではないかと思います。

 例えば、日本を含め多くの国同士が、領土の帰属問題で対立しています。しかしその対立の本質的な理由は、人間(この場合国民)の「自分のものと考えるものが、他人に理不尽に奪い取られていると考えることで起こる強烈な拒否」という基本的な心理であ...

るように思えます(私の経験からも、人間にはこのような心理により過度な対立が起きやすいと感じています)。

 そうであれば、相手の主張の根拠を心理レベルで理解し、例えば金銭的に解決するなどということもあるように思えます。つまり、領土を手放す側は金、プライドそして相手が自分達の気持ちを理解したとの納得を得て、また一方の領土を獲得する側は、領土に加え同じように相手が自分達の気持ちを理解したとの納得を得て、両者が満足し、加えて平和がもたらされるということがあるように思えます。余談ですが、その意味から、金(かね)は人類が生み出した最高のイノベーションといえると思います。

 

 次回に続きます。

 

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